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Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
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AI翻訳
 VoiceTraやGoogle翻訳のようなAIベースの翻訳でも、まだ不十分であることを指摘した。では、AIの進化とともに、近い将来十分な翻訳が出来るようになるのかというと、私は懐疑的だ。その理由は、フィードバックがないから。

 AIベースの翻訳では、意味を込めるような表現を翻訳するのが苦手だ。たとえば、以下のような文である。
「この装置は、赤外線センサーが内蔵されていて、障害物を認識できます。」
VoiceTraの英語
"This device is equipped with an infrared sensor and can recognize the obstacles."
Google翻訳の英語
"This unit has an infrared sensor built in, and it can recognize obstacles."

 この翻訳の問題は、「て、」を"and"と訳していることだ。この2つの文は、"and"(等位接続)では接続できない。なぜなら、前半の文は手段で、後半の文は行為だからだ。"and"で接続できるのは、手段と手段か、行為と行為だ。

 日本語の「て、」には、等位ではない別の意味が込められている。その意味を、2つの文の関係から、読み手側が読み取っているのだ。日本語では、このような意味を込めた接続がよく使われる。

 意味を込めない明確な日本語を入力すれば、AI翻訳は正しく翻訳(下記参照)してくる。
「この装置は、内蔵の赤外線センサーを使って、障害物を認識できます。」
VoiceTraの英語
“The device can recognize the obstacles by using an integrated infrared sensor.”
Google翻訳の英語
"This unit can recognize obstacles by using built-in infrared sensor."

 しかし、現実にはAI翻訳が、込めた意味を推測する必要がある。なぜなら、日本の教育では、「この装置は、赤外線センサーが内蔵されていて、障害物を認識できます。」は、不十分な文であるとは習わないからだ。ほとんどの人は、こういう文を、正しいと思って、ごく普通に書いてくる。AI翻訳のために日本語の再教育をするなら本末転倒だ。

 AI翻訳が、込めた意味を推測できるようになるには、誰かがフィードバックしてあげないとならない。つまり、「この翻訳ではだめで、こう意味をくみ取らないとならない」と、AIに教えてあげなければならない。AIが、「この英文で正しく翻訳できた」と思っている限り上達はない。

 しかし、このフィードバックは期待できない。なぜなら、AI開発者が現状の問題点(AIが文と文の接続を推測できない)ことに気がついていないからだ。AI開発者が「正しく翻訳できた」と思っている限り、いつまでたってもAIが文と文の接続を推測できるようにはならない。

 AIは自己学習すると思っている人もいるかもしれないが、こういうケースで自己学習は期待できない。自己学習というのは、囲碁や将棋の対戦で負けるというようなフィードバックをベースとしている。あるいは、膨大な情報から標準的傾向を読み取って学習する。しかし、翻訳の世界に勝ち負けはないし、意味を込めた表現が一般的だ。これではAIによる自己学習は期待できない。

 不十分だというフィードバックがかからない以上、AIが正しく翻訳できるようになるには時間がかかるだろうというのが私の予測である。
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プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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