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Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
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「まとめノート」のトライアル その4
 この1枚のスライド(上図)だけで、突っ込みどころは満載だ。

 まず、チェスター・バーナードの紹介は、最初に述べることではない。受講者が知りたいのは3つの要素が何かだ。あるいはその元になる情報だ。3つの要素が誰の提案かはどうでもよい。少なくともビジネスの世界なら。出典がチェスター・バーナードの幸福論であることは、スライド内の端に小さく書いてあれさえすればよい情報だ。

 次に、3つの要素の妥当性が理解できない。この3つは、どこからどんな根拠で導き出されたのか?4つ目はないのか?根拠もなしに「この3つです」と言われて、「ああそうか」とは思えない。

 さらに、「組織の生誕」も唐突だ。3つの要素とどうつながっているのか?なぜ、ここで組織の生誕の話をしなければならないのか?これも表面的にはわからない。

 しかし、スライドをよく見ると、3つの要素と組織の生誕との関係を紐解くヒントが見える。3つの要素の2番目「貢献(協働)意欲」と、「組織の生誕」で赤字でハイライトされている「協働によって」とに同じキーワード「協働」がある。ということは、3つの要素と「組織の生誕」には論理的な接続関係がありそうだと。

 そこで、3つの要素と組織の生誕との関係を考えると、以下のように考えられる。
要素1:意識的に調整された体系 → 共通の目的
要素2:協働によって → 貢献(協働)意欲
要素3:? → コミュニケーション

 こう考えると、要素3に対応する「組織の生誕」がない。そこで、教科書の該当部分を読む。分からないことは、教科書側を参考にする。それでも分からない場合は、他の参考書やWEBを参考にすることになるが、その段階で教科書が教科書の役割を担っていない。

 この抜けている情報が教科書には記載があった。教科書には次のように記載(「組織論」の翻訳引用)されている。
「人間が個人として達成できないことを他の人々との協働によって達成しようとした時に、組織が生まれる。したがって、組織は2人以上の人々の意識的に調整された活動や諸力の体系である。」

 教科書の記載をベースに、3つの要素と組織の生誕との関係を考えると、以下のように考えられる。
要素1:個人として達成できないこと → 共通の目的
要素2:人々との協働によって → 貢献(協働)意欲
要素3:意識的に調整された活動や諸力 → コミュニケーション

 この、3つの要素と組織の生誕との関係を、講師は理解できていない。だから「組織の生誕」の説明がいい加減なのだ。説明の順もおかしい。「組織の生誕」の説明から3つの要素の説明というように、縦の接続関係を明示すべきだ。

 理解できていないのは、引用元の「組織論」の翻訳で、キーワードの使い方が不十分だからだ。私なら、「組織論」の該当部分を以下のように述べる。これなら3つの要素との関係も明確だ。(講義では「組織論」の翻訳引用なので、この部分を自分の言葉に修正はできない)
「組織とは、個人では達成できないことを他の人々と共通の目的として掲げ、その目的を他の人々と協働によって達成しようと、2人以上の人々とのコミュニケーションで調整された活動の体系である。」

 次に3要素の補足説明もバラバラで論理性に欠ける。
要素1:共通の目的 → 何を目指しているのか(ビジョン) を明確にする。
 (「共通の目的」に「明確にする」という動詞をつけただけの説明)
要素2:貢献(協働)意欲 → ビジョンを浸透させることで、貢献意欲を引き出す。
 (「貢献意欲」に「引き出す」という動詞を加えた上で、「ビジョンを浸透」という手段が書かれている)
要素3:コミュニケーション → フラットな組織等によって自由関達な組織を作る。
 (「コミュニケーション」には動詞が加えられておらず、手段だけが書かれている)

 この説明は揃えるべきだ。まあ、下記の改善例(左下図)でも完全にはそろっていないが、オリジナルよりはかなりまし。
要素1:共通の目的 → 明確すると、社員がまとまる
要素2:貢献(協働)意欲 → 浸透させると、自分は何ができるかを自発的に考える
要素3:コミュニケーション → 組織をフラットにすると、アイデアが生まれる

 ここで私は、「ビジョンを浸透させることで、貢献意欲を引き出す」に疑問が湧いた。なぜ、ビジョンを浸透させることで、貢献意欲が高まるのか?本当に、ビジョンを浸透させることで、貢献意欲が高まるのか?現実のビジネスの場では、ビジョンが明確であろうが、なかろうが、自分のやるべきことは決まっている。例えば、自社の製品やサービスを多く売ろうとか、他社より優れた製品を安い原価で製造しようとか。ビジョンが明確になったからといって、その行動が変わることはない。

 この疑問は、授業ノートに既に書いてある。授業を受けながら抱いた疑問だ。教科書読んでも疑問は解決しないので、「まとめノート」にも疑問のまま書く。これが学校な後日質問する(まあ、納得のいく回答は得られないだろうが)。

 3つの要素と組織の生誕との関係は論理的にはなったが、しかしこの論理性も、チェスター・バーナードの組織に対する定義の妥当性が前提だ。そもそも、「組織とはそんなものではない」とか、「組織にはもっと重要な役割がある」と言われてしまったら、チェスター・バーナードの組織に対する定義に基づく3つの要素は成立しない。チェスター・バーナードの定義の妥当性を検証する必要がある。しかし、講義でも教科書でもその検証はない。

というように、わずか1枚のスライドでも、考えるべきことは山ほどある。

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プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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