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Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
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小論文の分析
 小論文は、論理的な文章を書く練習に効果的だという話の続き。市販されている小論文の書き方の本を見れば、非論理的な文章のサンプルを簡単にみつけられる。

 最後に引用した文章は、小論文の書き方の本に掲載されている模範解答例だ。ちなみに、著者は「小論文の神様」と崇められる、業界では有名人だ。

 4つのパラグラフでできた文章だが、各論である第2、3パラグラフを注目すると、ロジックができていない。2つのパラグラフの先頭文(本来、トピックセンテンス)では、ロジックがわからない。
 「確かに、日本ほど独自の文化が保持されている国は多くない。」
 「文化というものは、ほとんどが混合によってできている。」

 パラグラフの中まで丁寧に読んでもロジックがわかりにくい。最大の問題は、「独自」と「特殊」という言葉を、筆者の中で使い分けているが、読み手に正確に伝わっていないことだ。おそらく、筆者は「特殊」=他に類例を見ない「独自」性と考えているのだろう。しかし、説明がないのでわからない。ちなみに、広辞苑によると、「独自」と「特殊」の定義は以下のようで、大差はない。
「独自」:他と異なり、そのものだけに特有であること
「特殊」:普通と異なること。特別であること。

 さらに、1つのパラグラフで2つのことが述べられているのも分かりにくくしている。
第2パラグラフ
「日本ほど独自の文化が保持されている国は多くない」
「日本だけが特殊とは言えないはずである」
第3パラグラフ
「文化というものは、ほとんどが混合によってできている」
「自分たちは特殊だと決めつけていたのでは、国際社会で孤立するばかりである」

 特に第3パラグラフは、話がずれたようにも読める。この文章は、最初、「他に類例を見ない特殊で独特の文化である」かどうかという事実認定だった。しかし、後半は、「他に類例を見ない特殊で独特の文化である」と考えることが良いか悪いかに変わっている。一つのパラグラフで変わってしまったので、話がそれた印象を与える。

 結局、筆者のロジックは以下のような構成なのか?(私の読み取り)
「日本文化は「独特」といえるだろう」
「しかし、日本文化が「独特」だとしても、「他に類例を見ない特殊で独特」とは言えまい」
「仮に日本文化が、「他に類例を見ない特殊で独特」であったとしても、そのような考え方を持つべきではない。」



「新『型』書き小論文」 (樋口裕一) の模範解答例より引用-------------------------------------

「日本文化は世界の中でも他に類例を見ない特殊で独特の文化である」という考え方に、あなたは賛成ですか、反対ですか。①賛成か、反対かを記した上で、②あなたがそう考える理由を、具体的な事例をあげながら八00字程度の文章にまとめて述べなさい。

 私は「日本文化は世界の中でも他に類例を見ない特殊で独特の文化である」という考え方に反対である。

 確かに、日本ほど独自の文化が保持されている国は多くない。歌舞伎や相撲、神社、そして、着物や日本家屋や日本庭園などは独自の文化だと言っていいだろう。とりわけ、私が日本人の独自性を感じるのは、俳句や和歌や寺院などに見られる日本人特有のわびさびの美学である。このような日本人の感性が、茶道や武士道などを生み出したのである。だが、そのような独自の文化は日本だけでなく、多くの国にあるのではなかろうか。どの国もそれぞれ独自の文化を持っている。日本だけが特殊とは言えないはずである。

 文化というものは、ほとんどが混合によってできている。日本は、縄文、弥生の時代から、米作を、そしてその後は漢字や仏教までも、外国から取り入れてきた。また、日本はシルクロードの東の終着点であり、ペルシャの文物も多く日本に入ってきているという。日本独自と思われるみこしなどの祭りの道具立ても、ほとんどがペルシャや中国に起源を持つものだと聞いたことがある。それなのに、自分たちは特殊だと決めつけていたのでは、国際社会で孤立するばかりである。しかも、不必要に優越感や劣等感を持つことにつながる。どの国にも、特殊な面と、他の国と共通する面がある。それは特殊なことではない。それをふまえた上で、外国との共通点を求めて話し合い、時には自分たちの文化を守るために対等の立場で議論するべきなのだ。

 以上述べたとおり、私は、「日本文化は世界の中でも他に類例を見ない特殊で独特の文化である」という考え方に反対である。この考え方は、孤立を深め、無意味な優越感を持たせる危険な考え方である。
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小論文の書き方
 小論文が論理的な文章を書くトレーニングに適していることを述べた。先に紹介した小論文を引き合いに説明してみよう。

 小論文を書くには、最初に、論理構成単位を縦と横につないでロジックを組む。先に紹介した小論文なら、以下のような構成をまず考える。下記の3から4と5は横に展開されているが、それ以外はすべて縦につながっている。
1.財政破綻の危機
2.最大の金食い虫は社会保障費
3.歳入と歳出の両方で改革
4.歳入は、消費税を増税
5.増税のインパクトは小さいはず
6.歳出は、給付を制限
7.高齢者に泣いてもらうしかない

 このように、まず、論理構成単位を縦と横につないでロジックを組むことから考える。いきなり文章を書き出してはいけない。考えるに当たっては、アウトラインプロセッサーというソフトウェアを使うのもいいだろう。専用ソフトでなくても、MS-Wordでも似た機能はある。

 次に、この論理構成単位を。パラグラフのトピックセンテンスに落とし込む。先に紹介した小論文では、以下のようなトピックセンテンスにした。
1.現在、日本の財政は破綻の危機に直面している。
2.財政を圧迫しているのは社会保障費だ。
3.膨れあがる社会保障費を捻出するには、歳入と歳出の両方で改革が必要だ。
4.社会保障費向けの歳入を増やすには、消費税を増税するしかない。
5.消費税を増税すると、消費が冷え込むという恐れもあるが、影響は比較的小さく済むだろう。
6.一方、社会保障費向けの歳出を減らすには、給付を制限するしかない。
7.社会保障費の給付を制限すると、高齢者に負担を強いることになるが、致し方ないだろう。

 トピックセンテンスに落とし込む時の注意は、短く書くことだ。トピックセンテンスは、ロジックを伝えるための文だ。そのトピックを説明する文ではない。短く書くと、記憶に残るので、ロジックが伝わりやすい。細かい説明は、パラグラフの2文目以降(サポートセンテンス)で述べれば良い。

 もう一つ、トピックセンテンスに落とし込む時の注意は、縦と横を文章表現することだ。縦につながっているパラグラフなら、トピックセンテンスに「A-B、B-C、C-D」という流れができる。一方、横なら、「AとB、A、B」という流れができる。

 もし、縦と横の関係が文章表現として見えないなら、ロジックが不十分な可能性が高い。論理的な接続の弱い論理構成単位をつなぐと、「A-B、B-C、C-D」や「AとB、A、B」と表現できない。ロジックの見直しが必要だ。

 トピックセンテンスができたら、各パラグラフにサポートセンテンスを加える。トピックセンテンスで述べた論点(=論理構成単位)を、データや具体例、詳細説明で論証するのだ。原則すべてのパラグラフで、そのパラグラフのトピックを論証しなければならない。サポートセンテンスまで読めば、読み手が全員、そのトピックセンテンスに同意するように書く。

 サポートセンテンスは、それなりの量(3-7文ぐらい)の文章やグラフや表、図解が必要だ。サポートセンテンスを1-2文だけで終わってはいけない。論点を論証するには、どうしてもそれなりの量の情報量がいる。1-2文で終わるパラグラフは、論点を論証できていない。つまり、その文章は論理的ではない。

 ただし、下のパラグラフを導く導入のパラグラフにサポートセンテンスは不要だ。たとえば、先に紹介した小論文なら、「膨れあがる社会保障費を捻出するには、歳入と歳出の両方で改革が必要だ」と述べたパラグラフだ。詳細説明は、その下のパラグラフでするのだから、ここでは簡単に述べるだけで良い。

 こうやって考えながら文章を作成するので書く力が付く。また、先に説明した以下の点をチェックすれば、自分の文章が正しく書けたか確認できる。
「トピックセンテンスは短く」
「トピックセンテンスで縦と横を文章表現する」
「サポートセンテンスは、3-7文ぐらいの文章やグラフや表、図解が必要」
社会人の文章力向上に小論文が効果的
 私は、社会人の文章力向上には、ビジネスレポートを書くより、小論文を書くトレーニングの方が効果的だと思っている。小論文のほうが、応用力が付くからだ。

 ビジネスレポートの場合、論理構成も論証すべき論点もほぼ決まっている。たとえば、トラブル解析のレポートの論理展開は、問題-原因-対策-効果確認だ。各論点をグラフや図解で論証したり説明する。提案書なら、現状-問題-提案-メリット-デメリットへの反論などだ。

 論理構成も論証すべき論点もほぼ決まってしまうと、考えずに習慣のように書いてしまう。考えなくても、論理構成は決まっているから簡単にできてしまう。論点の論証も、「ここにはこういうデータを付けるものだ」とばかりに、グラフや表を付ける。それでビジネス文章としては合格だ。

 しかし、考えずに習慣のように書くと応用が利かない。ちょっと新しいテーマになると、もう論理構成はできない。どう書いて良いかが分からなくなる。考えられなくなると、何でもかんでも箇条書きする。論証すべき論点には、データも具体例も付けない。貧弱な文章ができあがる。

 一方、小論文を書くには、まず、しっかりとして論理構成が必要だ(下図)。どんな論理思考単位を、どうつないでロジックを組むかは、そのテーマごとに考えるしかない。論理展開をテーマごとに考えることが、書き慣れないビジネスレポートを書くときにも有効だ。

 また、小論文を書くには、各論理思考単位を論証しなければならない。論証にはデータや具体例が必要だ。どんなデータや具体例があれば、自分の主張が成立するのかを考えることが、書き慣れないビジネスレポートを書くときにも有効だ。

 しかし、ライティングのトレーニングでは、小論文ではなくビジネスレポートを使う。ビジネスレポートの方が、受講者や研修担当に受けが良いからだ。ちょっと残念。


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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