Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
05 | 2017/06 | 07
S M T W T F S
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

成功者に学ぶのは危険
 ビジネス書の多くで、成功者がいかに成功したかを説明し、その成功の秘訣を学ぼうとする。しかし、成功者に学ぶのは危険な思想だ。

 成功者(=勝者)の陰に、無数の敗者がいることを忘れてはならない。成功者が、敗者のやっていないことをやって勝者になったかどうかはわからない。もしかすると、勝者も敗者も同じことをしたのに、才能や運で勝敗が付いたのかもしれない。しかし、敗者が何をやったかは分からない。表舞台には登場しないからだ。

 たとえば、豊臣秀吉が、織田信長の草履を懐で温めていたのを評価されて出世のきっかけをつかんだ話は有名だ。では、豊臣秀吉だけが、織田信長の草履を懐で温めていたのか?同じことをやっても、親方に気が付かれなかったもの、尻にひいていたと勘違いされて切り殺されたものが山ほどいるかもしれない。しかし、成功しなかったものは出世しないのだから、記録には残らない。

 同様に、「あきらめなければ夢はかなう」と、安直に述べてほしくはない。そりゃあ、成功したあなたは、あきらめなかったから成功したのだろう。しかし、その成功の裏には、多くの人間の夢を踏みつぶして成功してきたのだ。圧倒的多数の人間は、夢をあきらめなかったがかないはしなかったのだ。

 成功者の裏にいる無数の敗者のことを忘れてはならない。
スポンサーサイト
カスタマイズお断り
 私は、講座のカスタマイズを、承ることはありません。カスタマイズは、スキル習得上、何のメリットもないからです。

 時々、研修担当者が、自社向けのカスタマイズを要求してきます。たとえば、ライティング講座やディベート講座で、自社に関係した内容の文章やテーマを扱ってくれと。あるいは、内容が古いから、新しい内容にしてくれとか。

 私は、この手のカスタマイズをお断りしています。なぜなら、用意している文章やテーマは、学習効果を高められるよう、10年以上かけて練り込んできているからです。時には、講座の別の部分とつながりを持たせていたりもするからです。受講者に身近であるという理由だけで、文章やテーマを変えれば、学習効果が下がるだけです。

 たとえば、ロジカルライティング講座では、「ソニー社のAIBOを分析する」というテーマでレポートを作成する課題を使います。この課題は、ロジックを縦と横で組むことを学習するのに最適だからです。他のテーマの課題も持ち合わせはありますが、このテーマ以上に、ロジックを縦と横で組むことを学習するのに適したテーマはありません。

 しかし、研修担当の中には、「AIBOは古いので別のテーマに」と言ってくる人がいます。テーマの新旧は、文章の書き方と関係がありません。最新のトピックにしても学習効果に何の影響もありません。逆に、ロジックを縦と横で組むことを学習しにくくなるので、大きなマイナスです。

 ただ、学習したことの応用として、受講者がよく書く文章を引き合いに、説明を付け足すことはやります。
 
リンクを繋げる難しさ
「多くの人は、このリンクがまともに繋げられない。繋げられないのに、繋げている気になっている」と述べた。その例を示そう。

 家庭ごみの収集を有料化すると、家庭ごみが減ると、すぐにリンク繋げる人が多い。有料化すれば、お金を払いたくないので、出すゴミの量が減るというわけだ。「家庭ごみの収集を有料化→家庭ごみが減る」のリンクがつながっていないことに気が付かない。つながっていると思い込んでいる。

 しかし、有料化されていない自治体に在住の人に、なぜ家庭ごみが減るかを質問すると、ほぼ答えられない。家庭ごみの収集を有料化したからといって、ゴミはゴミだ。生ごみを食べるわけにはいかない。ゴミをため込んでゴミ屋敷にすることもできない。埋めたり燃やしたりは、田舎ならともかく都心では無理だ。結局、ゴミは回収してもらうしかない。

 家庭ごみの収集を有料化すると、家庭ごみが減るのは、リサイクルが進むからだ。リサイクルが可能な、紙資源、ペットボトル、発泡スチロールのトレイ、ビン、缶などは、無料で回収される。リサイクルできるものはリサイクルに回すので、家庭ごみが減るのだ。

 この例のように、「AならばBになるはず」というリンクを、甘く考えている人は多い。
ライティングとディベート
 私は、ライティングを深められのは、ディベートを勉強したことによると思っている。ディベートで勉強したのは、リンクと論証の概念だ。

 リンクとは論理単位を縦につなぐ概念だ。縦につなぐとは、「AならばBになるはず」というつなぎだ。このリンクがしかっりできていないと、論理は破綻する。しかし、多くの人は、このリンクがまともに繋げられない。繋げられないのに、繋げている気になっている。ディベートでは、リンクが弱いと相手に突っ込まれて負ける。

 論証とは、リンクを根拠で支持することだ。ついまり、「AならばBになるはず」と言ったら、そうなることを根拠で支持する。しかし、多くの人は、「AならばBになるはず」と主張しただけで根拠を述べない。根拠を述べていないのに、述べた気になっている。ディベートでは、論証が甘いと相手に突っ込まれて負ける。

 リンクがしっかりしていると、文章は「既知から未知」に流れる。つまり、「AならばBになる」、「BならばCになる」、「CならばDになる」という流れになる。未知な情報=初登場の単語が文頭に来るなら、リンクはつながっていないのだ。逆に言えば、「既知から未知」の流れを意識すると、リンクは自然とつながってくれる。

 論証がしっかりしていると、パラグラフは4-8文ぐらいにはなる。根拠をしっかり述べれば、データや具体例が必要になるので、自然と4-8文は必要になる。パラグラフが、1-2文で終わるなら、根拠はほとんど述べていないのだ。逆に言えば、1つのパラグラフを4-8文で書こうとすると、自然と論証ができてしまう。

 ディベートは議論のためだけの勉強ではない。もちろん、議論の勉強にはなる。しかし、日本では論理的な議論をする場面が少ない。むしろ、別の勉強に有効だ。
辞書をプロジェクタに映して研修
 テクニカル・ライティングの世界では、「辞書はお金で買える実力」と言われているほど、上手に辞書を使うことが大事だ。そこで、私は英語を指導するとき、実際に辞書をプロジェクターで映しながら説明する。

 私は、windowsの辞書ソフトで、複数の辞書を引ける環境を構築している。このソフトで引けるのは、たとえば以下のような辞書だ。
 岩波国語辞典
 広辞苑
 ジーニアス英和辞典
 ジーニアス和英辞典
 ジーニアズ英和大辞典
 研究社新英和辞典
 研究社新和英辞典
 新編活用大辞典
 英辞郎
 和英辞郎
 例辞郎
 リーダーズ
 リーダーズプラス
 Oxford Advanced Lerner's Dictionary
 Collins COBUILD Advanced Learner's Dictionary
 Longman Dictionary of Contemporary English
 など

 この環境は、すべての辞書を個別に買わなければならないので、お金がかかる。数十の辞書がバンドルされている電子辞書と比べると、コストパフォーマンスが悪い。しかし、電子辞書ではプロジェクタに表示できないのだから仕方ない。

 さらに、この環境を構築するには、それなりのパソコン知識が必要だ。すべての辞書をEPWINGというフォーマットで用意する必要がある。このフォーマットで購入できない辞書は、ネットを頼りに自力で変換する。

 この環境を使って、実際に辞書を引きながら、講座を進める。辞書を使えば、大概の日本語は英語になることを指導する。受講者が演習を進めているのを見て回り、辞書を引かずに書いた英文を探す。誤用した英単語の辞書の記述をプロジェクタで映し、間違った使い方をしていることを指摘する。その指摘と同時に、辞書を引けば間違いを防止できることを指摘する。

 実際には辞書以外も使う。WEBだ。パソコンをネットにつないでおいて、必要に応じてWEBで調べる。使うのは主に、weblioというページとgoogleだ。

 辞書をプロジェクタに映しながら講座を進める講師っているのかなあ。
派生語なのにストレスの位置が異なる
英語は、派生語なのにストレス(日本語で言うアクセント)の位置が異なることがある。しかも、英語の場合、ストレスの位置を間違えると、ほぼ通じないので注意が必要だ。

たとえば、photograph と photographer。photograph のストレスは第1音節の pho にあるが、photographer は第2音節の to にある。

同様に、analyze と analysis。analyze のストレスは第1音節の a にあるが、analysis は第2音節の a にある。

派生語なんだから統一してくれよと言いたくなる。
アンケートに望むこと
 研修後、クライアント企業は研修のアンケートを取る。私は、以下の3つを希望したい。
1.アンケート結果で研修の継続の可否を決めない
2.評価は4段階
3.「講義は理解できましたか」と質問しない

アンケート結果で研修の継続の可否を決めない

 受講者の評価力を信用してはいけない。受講者は負荷の高い研修を嫌う。負荷を重くすれば評価は下がる。しかし、負荷が軽いならスキルは身につかない。評価する能力のない受講者もいる。無気力だただひたすら眠っている受講者。従来の手法に固執し、新しい手法を頭から否定する受講者。こういう受講者の評価は意味がない。

 受講者の評価はあくまで参考で、最終決定は人材育成責任者がすべきだ。責任者は、アンケートを参考に、その評価が正しいかを、自らの目で確認すべきだ。アンケート結果に不満が書かれていても、その研修が企業の力を高めるのに必要なら、責任者の裁量で継続すべきなのだ。

 研修継続の可否が、アンケートで決まると、講師は受講者に迎合する。研修の負荷は軽くする。内容も易しくする。意味のないワークを増やす。受講者のスキル習得が二の次になる。

評価は4段階

 評価の段階に「普通」を入れてはいけない。良いか悪いかを聞く。中庸を選択しに置くと、日本人は中庸を選びがちだ。真の姿が見えにくくなる。

「講義は理解できましたか」と質問しない

「講義は理解できましたか」に「No」と記入する社員は、理解できないことを放置したことを告白したことになる。つまり、自ら、「自分は無能です」と言ったのと同じだ。理解できないなら、なぜ、質問しないのか?同じようなこと聞くなら、「講義は理解しやすかったですか?」と聞いてほしい。
聞きかじったルールを何も考えずに振り回すのは危険
 どこかで学んだライティングのルールを、絶対と思い込んではいけない。そのルールの背景をよく考えてから判断すべきだ。

 たとえば、「『言われている』という表現を使うな」と教わることがある。「言われている」という表現では、「誰が言っているのかわからない」という理由だ。確かに、「今回の故障の原因は、部品Aの耐久性の低さにあると言われている」なんて表現なら、「誰の意見なんだ?」という疑問がわくだろう。

 しかし、誰が言っているかを問題にしないなら、「言われている」という表現を使うことは問題ではない。たとえば、「日本人は、議論が下手だといわれています」なら、問題はない。「、議論が下手だ」と言っているのは、世間一般だからだ。この文では、
「世間は、日本人は議論が下手だと言っている」と書く意味はない。むしろ、中心語の「日本人」が文頭に来ないという弊害を生む。

 逆に、「言われている」という表現は、周知の事実なので、論証しなくていいことを表現するのに適している。たとえば、「日本人は、議論が下手だといわれています」なら、暗に、「誰もが認めているように」と述べているのだ。誰もが認めているなら、論証は不要だ。

 これを、別の表現にすると、論証が必要になる。たとえば、「日本人は議論が下手である」と述べてしまうと、これは意見の表明ととられかねない。意見を述べたなら論証しなければならない。つまり根拠を述べなければならなくなる。

 聞きかじったルールを何も考えずに振り回すのは危険だ。
ライティングのルールは、絶対性に3種類ある
 ライティングのルールには、守るべき絶対性に3種類ある。
 1.必ず守るべき(例外のない)ルール
 2.わずかな例外を除いて必ず守るルール
 3.守った方がよいことの多いルール

1.必ず守るべき(例外のない)ルール
 たとえば、「ビジネス文章では、最初にポイントを述べる」というルールだ。ビジネス文章である限り例外はない。何らかの理由で、ポイントを後回しにしても、読み手はページをめくってポイントから読む。ポイントを後に書く意味はない。 

2.わずかな例外を除いて必ず守るルール
 たとえば、「一文一義で書く」というルールだ。ほぼすべての文で、一文一義で書く。ただし、並列でき、かつ重要性が低い文は、2つ以上をつなげることがある。たとえば、3つの文を並列しようと思うが、1つ目にくらべて、2つ目と3つ目の文の重要性が低いときだ。一文一義で書くと、3つが同じような重要性で伝わってしまう。そこで、2つ目と3つ目の文をつなげる。この手法は、このブログでも過去に紹介している。

3.守った方がよいことの多いルール
 たとえば、「このルールは、~なルールです」のような重ね言葉を使わないとするルールだ。確かに使わない方がよい。この重ね言葉は、5割以上の確率で避けられるだろう。しかし、重なっていても、目くじら立てるまでもないと感じることも多い。修正しなくても自然に読め、修正したからと言って簡潔になるわけでもないなら、そのままでもいいだろうと思うことがある。
二重否定は避ける
 テクニカル・ライティングでは、二重否定は避ける。二重否定は否定の否定なので、肯定文に直る。肯定文の方が簡潔で分かりやすい。

 二重否定を肯定文に直す1つの方法は、そのまま前後を肯定文にしてしまうのだ。たとえば、「組織の壁がなくならないから、売り上げが伸びない」なら、「組織の壁がなくなれば、売り上げが伸びる」とする。短く分かりやすい。

 しかし、この修正は、修正前と後が完全には同じ意味ではない。修正前は、必要条件だったことが、修正後には十分条件になってしまっている。

 そこで、2つめの修正として、後ろから前に肯定文にする手がある。つまり、「売り上げを伸ばすには、組織の壁をなくすべきだ」とするのだ。これなら、修正前後が同じ意味になる。

 この2つの修正を知っていれば、二重否定はすべて肯定文に直せる。だから、二重否定を使うのは、強調のために肯定文を述べた後に追加するような場合だけになる。たとえば、「組織の壁がなくなれば、売り上げが伸びる。このままいつまでも組織の壁がなくならないから、売り上げも伸びない」のように。

 ちなみに、先日あるテレビで「No challenge, no success」を、「チャレンジするから成功する」のように肯定文で訳しているのを見た。「おお!知っている人がいる」と思ったものだ。普通なら、「挑戦しないなら成功もない」のように訳すところだ。


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

最新記事

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム