Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
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受講者の指名順
 研修をやっていると、受講者を指名しして、質問に答えてもらうときがある。受講者をランダムに指名しているのではない。

 時間が押しているなら、正解を答えてくれそうな受講者を指名することがある。正解を答えてくれた方が、講義が早く進むから。この指名はちょっとずるいかな。

 逆に、正解を答えては困る場合は、答えられそうもない人を指名する。講義の流れで、正解ではなく、間違えてもらった方がよいときもあるのだ。特に、典型的な、こちらが待っている誤答をしてくれると、講義が上手く進む。

 居眠りしている人の隣の人を指名する。居眠りしている人は指名しない。居眠りしている人を指名しても答えられないので無駄。隣の人を指名すれば、回答する声で、寝ていた隣の人も目を覚ましやすい。

 年配の方には、正解しやすい問題で指名する。歳を取るにつれ、変なプライドを持つ方がたまにいる。質問に正解できないと恥ずかしいと感じてしまうらしい。少数派だが、年配の方には若干いる。

 基本的には、指名回数が均等になるように指名する。だから、だれを指名したかを名簿にチェックする。たまに、やる気のない受講者がいると、二日間で一度も指名しない。やる気のある受講者を優先する。

 最も難しい問題には、最も真剣な受講者を指名する。難しい問題は、ぼーと考えているようでは、正解を望めないから。
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電子メールのパラグラフは短い
 何度か、パラグラフは文だけなら4-8文で書くことを紹介してきました。しかし、電子メールの場合は、もう少し短いパラグラフでかまいません。

 電子メールのパラグラフは短くなりがちです。なぜなら、ディスプレイで読むことになる電子メールは、改行が少ないと読みにくいからです。ディスプレイで表示される文章は、一般的なワープロで書かれた文章に比べ行間が狭いです。行間が狭い分、読みにくいのです。行間を広げる設定ができるメールソフトもありますし、行間が広がるフォントもありますが、一般的ではありません。

 短いパラグラフで書く電子メールは、しっかり説明、説得するには不向きと考えてください。パラグラフが短いということは、パラグラフのトピックをサポートする文が少ないということです。つまり、データや具体例、詳細説明が少ないと言うことです。情報が少ないのですから、しっかりとして説明にはなりません。

 しっかり説明、説得するなら、ワープロで書いた文章を、メールに添付しましょう。ワープロで書けば、4-8文のパラグラフでも難なく読めます。電子メールは、しょせん簡易な通信手段です。簡易な文書向けと考えるべきです。
講座では指導すらしない常識
 ライティングの指導の一環で、添削をしていると、「こんな常識も知らないのか」という文章に出会うことがある。上司は大変だなあ。

1.ビジネス文章で自問自答は使わない。
 自問自答、つまり「では、ユーザーのニーズはどこにあるのだろう?それは、」のような表現は、ビジネス文章では使わない。自問自答は、読み手を後ろに引っ張るためのテクニックなので、エッセーのような文章なら使ってもよい。ビジネス文章は、ストレートに「ユーザーのニーズは、〇〇にある」と述べる。

2.本文は明朝体を使う
 原則として、本文のフォントは明朝体だ。本文をゴシック体で書いてはならない。ゴシック体は見出しで使う。まして、丸ゴシックやポップ調のフォントは、見出しですら多用してはならない。ただし、PowerPointのスライドの本文は、ゴシック体でもよい(遠くからでも読みやすいから)。

3.図表には見出しを付けて本文で参照する
 すべての図表には見出しが必要だし、本文で参照しなければならない。見出しは、図なら図の下、表なら表の上につけるのが習慣だ。見出しを付けた上で、本文中で「下図のように」とか、「(右図参照)」のように参照する。図表を載せたのに、本文で言及しないなんてことはない。

 その他、ありがちな非常識。
・ですます調とである調の混在
・ら抜き言葉
・「させていただきます」の乱発
言葉の定義
テクニカル・ライティングでは、言葉は分類と差異で定義する。
Term = Class + Differentiate

たとえば、「snow」をオックスフォード現代英英辞典で引くと以下のような定義が載っている。
small soft white pieces, (called FLAKES), of frozen water that fall from the sky in cold weather
Class は、小さく白い薄片
Differentiateは、寒い気候の際に空から落ちてくる凍った水

このclassは具体的でなくてはならない。「もの」とか「物質」のような言葉は使わない。snowも、flakeとなっている。flakeより、crystalのほうがよりよいかもしれない。

ところが、日本ではこの定義の仕方が十分広まっていない。広辞苑で「雪」を引くと、以下のような定義が載っている。
 水蒸気が空中で昇華し結晶となって降る白いもの
「もの」と定義している。

ちなみに、rain(雨)は、以下のとおり。
オックスフォード現代英英辞典
 water that falls from the clouds in separate drops
広辞苑
 大気中の水蒸気が高所で凝結し、水滴となって地上に落ちるもの

ありゃま。
 知っているのと、できるのは違う
 知っているのと、できるのは違う。重要な順に並べるという簡単なことすら、できない人は多い。

 たとえば、「女性活躍推進セミナー」という催しに参加した報告書を書くケースを考えよう。たまたまネットで見つけた催しを例に使う。カリキュラムが下図のようになっている。(https://www.sendenkaigi.com/…/sa…/03240957_5510b68768414.pdf を参考)
WS000008.jpg

 このセミナーの参加報告書を書くとき、ほとんどの人は、聴講した5人の話を、この順番で説明するだろう。その順番で書くのが楽だから。セミナーのパンフには、その順番にカリキュラムが載っている。自分のノートにもその順番でメモが書いてある。

 なぜ、重要な順に並べ直さないのか。読み手は、自社の参考になる事例を知りたいはずだ。報告者が聴講した順に、報告を読む意味はない。報告の順とパンフの順が一致しなくても、報告書の最初に「参考になる順に」と断っておけば問題ない。そもそも、読み手は、報告書に添付されているパンフなど読まない(忙しいから)。

 重要な順に並べるという、誰もが知っていることですら、意外と難しい。
自分一人でもフィードバックを得る方法
 文章力を向上させるには、フィードバックが必要だ。しかし、文章力のある第三者がいなければ、フィードバックは得られない。でも、自分一人でもフィードバックを得る方法が実はある。

 正しく書けているかのフィードバックがないと、文章を書く力の上達は難しい。フィードバックない状態で文章を書くということは、野球の練習で、真っ暗闇の中で無感覚の人間がボールを打っているようなもんだ。バットにボールがあたったのか、ボールはどこに飛んだのか、が分からないなら(フィードバックがないなら)、バッティングが向上するはずもない。同様に、自分の文章が良いか悪いかのフィードバックがないと、上達は難しいだろう。

 正しく書けているかは、書き手では判断しにくい。たとえば、「1つのパラグラフでは1つのトピック」というルールを知っていても、自分の書いたパラグラフが、1つのトピックだけを述べているかは、書き手が素人なら判断しきれない。「パラグラフの先頭にトピックセンテンスを書く」も、先頭文がそのパラグラフを的確に総括しているかは、やはり素人では判断しきれない。

 フィードバックしてくれる第三者もいないし、自分でも判断できないとなると、文章力の向上は難しい。その結果、ルールは知っているが、そのルールに基づかない文章を書いていて気がつかない。おかしな文章が氾濫する。書いた本人は、ルールを守ったつもりでいるのだから、おかしな文章とも思ってはいない。

 正しく書けているかを、書き手が判断する効果的な方法は、「パラグラフの先頭文でロジックが通るかどうか」を確認することだ。パラグラフはロジックの構成単位だ。そのトピックを正しく1文目で表明してあるなら、1文目だけでロジックを構成するトピックをすべて抽出できる。だから、1文目だけ読んで、ロジックが成立する。パラグラフの先頭文でロジックが通るなら、1つのパラグラフで1つのトピックを述べ、かつ、そのトピックを1文目で述べた証拠となる。

 さらに、プラスの方法として、「パラグラフの先頭文だけで、既知から未知に流れるかどうか」もチェックするといいだろう。書き手は、書いていないことまで頭に置いているので、おかしな文章でも、「ロジックが通る」と勘違いすることもある。これを防ぐために、既知から未知に流れも確認する。書き手の頭にだけある情報を使うと、未知な情報が文頭に来る。こういう文章は、書き手には違和感がなくても、読み手は理解できない。

 まあ、このチェックをクリアできる文章を見ることは、10年に1度くらいだが。
「必要な情報だけを読むと、「文は、既知から未知の情報へと構成する」は矛盾するか?
 「ビジネス文章は、必要な情報だけを読むのだ。全部読んで、必要な情報を見つけるのではない」という指導と、「文は、既知から未知の情報へと構成する」は矛盾すると思うかも知れない。しかし、実は、飛ばし読みしても、すべての文は既知から未知に流れるのだ。

 必要な情報だけを選んで飛ばして読めば、既知から未知の流れが守られないような気がする。飛ばしたところは読んでいないのだ。その読んでいない情報が文頭に来たら、読み手からすれば未知な情報が文頭に来たことになる。しかし、書き手は、前に書いたのだから既知から未知を守っているのだ。「必要な情報だけを読む」と「既知から未知に書く」は、相反するように感じる。

 しかし、飛ばして読むとしても、飛ばす部分と読む部分ががあるのだ。まず、文章の最初、第一パラグラフ(下図の①)は読む。文章の最初を読まずに、真ん中から読む人はいない。次に、第二パラグラフの先頭文(下図の②)を読む。第一パラグラフを読んだ後、いきなり第三パラグラフに飛ぶ人もいない。さらに、あるパラグラフの中を読み進もうとするなら、上から順(下図の③)に読む。パラグラフの先頭文を読んだ後、いきなり三文目に飛ぶ人はいない。

 このように、読んであるはずの場所を考慮すると、飛ばし読みしても、すべての文は既知から未知に流れる。まず、総論は、その総論の中で既知から未知に流す(下図の①)。各論の要約文は、前のパラグラフの要約文と、あるいは総論と、既知から未知に流す(下図の②)。各論のパラグラフの中は、その中で既知から未知に流す(下図の③)。こうすれば、飛ばし読みしても、すべての文は既知から未知に流れる。

 そこまで考えて、ビジネス文章は書くのだ。
読む箇所は決まっている

総論と各論では、パラグラフの書き方が異なる
 総論(=まとめ)と各論(詳細説明)では、パラグラフの書き方が異なる。このことを知らないと、おかしな文章を書きかねない。

 たとえば、以下のような文章で、1文目と2文目の間を改行するかどうか迷ったことはないだろうか?

例:
 〇〇には、以下の3つの利点がある。第一に、…(複数の文)
 第二に…(複数の文)
 第三に…(複数の文)

 迷ってしまう理由は、おそらく以下のようなことだろう。『改行すると、「〇〇には、以下の3つの利点がある」という、1文だけのパラグラフができてしまう。ここだけ極端に短いパラグラフはなんか変だ。しかし、改行しないと、「第二に」と「第三に」はパラグラフの先頭に来るのに、「第一に」だけが先頭に来なくなる。揃わないのもなんか変だ。』

 この場合、1文目と2文目の間は改行する。その結果、1文だけのパラグラフができてしまっても問題はない。なぜなら、「〇〇には、以下の3つの利点がある」は、下に続く3つのパラグラフを総括する総論だからである。

 総論のパラグラフは、1,2文でも構わない。なぜなら、まとめをしているのだから。まとめに詳しい説明はいらない。たとえば、「〇〇には、AとBがある」という1文でも、総論ならパラグラフになる。

 一方、各論のパラグラフは4-8文必要だ。なぜなら、そのパラグラフのトピックを論証しなければならないからだ。論証には、データや具体例、詳細説明が必要だ。1,2文では論証できない。

 総論と各論では、パラグラフの書き方が違うのだ。
詳しく説明するまでもないトピックは?
 1つのパラグラフは、4~8文で構成する。では、4~8文も使って説明するまでもないようなトピックはどうするのか?そのトピックは、パラグラフにはせずに、総論の背景で述べたり、他のパラグラフで従属情報的に潜り込ませるのである。

 4~8文使って説明するまでもないトピックは、パラグラフにしてはいけない。つまり、ロジックの構成単位にしてはいけない。1~2文で説明が十分なら、論証する必要のない当たり前の内容だ。当たり前のことはロジックの構成単位にはならない。

 このことを、以前書いた記事『「AだけどB」は1パラグラフか?』で説明しよう(詳細は下記の記事参照)。Aが当たり前なら、Aを論証する必要がないので、「AだけどB」は、Bを中心とした1パラグラフとなる。つまり、Aはロジックの構成単位にはならない。しかし、Aを論証する必要があるなら、AもBもパラグラフとなる。つまり、Aはロジックの構成単位になる。

 論証するまでもないトピックは、別の方法として、総論の背景として述べることもある。たとえば、前提条件(もっと具体的に言えばたとえば予算)である。無条件に決まっている前提条件があるなら、なぜその条件に従わなければならないかなどを説明する必要はない。総論の背景で、「今回は予算がいくらなので、」と簡単に述べておけば十分だ。パラグラフで説明する必要はない。

 かくして、各論のパラグラフは、すべて4~8文使って書くことになる。
パラグラフでは論証する
 日本人は「論証」という概念を、十分理解できていない。主張を論証するには、4~8文は必要だ。1つのトピックを1,2文で終わってしまったら論証できない、説得できない。

 1つのトピック、つまり1つのパラグラフは、4~8文で構成する。そのパラグラフで言わんとするトピックに対して、読み手に納得してもらうには、データや具体例、詳細説明が必要だ。これらの情報を丁寧に述べれば、どうしたって4~8文にはなる。言わんとするトピックを1,2文では説得できない。

 下図の文章で具体的に説明しよう。出典は、「Writing Academic English」(Alice Ohshima)という、アメリカの大学生向けアカデミックライティングの教科書から、日本語で言う小論文のサンプルである。

ModernTechnology.jpg

 この文章は、各論のパラグラフが長いのが分かる。全6つのパラグラフのうち、最初と最後は、総論と結論だ。総論と結論はまとめであって、論証するところではないので短い。各論は第2-5パラグラフ。最も短い第3パラグラフですら5文ある。各論は、各トピックを論証しないといけないので長くなる。

 ところが日本人は、論証という意識が希薄なので、1つのパラグラフが1,2文で終わってしまう。1,2文で終わるということはトピックを表明しただけである。そこには、データも具体例も詳細説明も書いていない。そんな説明で人を説得できるはずはない。

 この傾向が顕著に見られるのが、デメリットに対する反論だ。たとえば、「このノートパソコンは、ちょっと重いものの、ディスプレイが大きいので操作しやすいです」と「重い」というデメリットに反論したとしよう。この主張は、「ノートパソコンは、軽量でないとね」と思っている人を念頭に置いて反論している。「ノートパソコンは、軽量でないとね」と思っている人は、「ディスプレイが大きいので操作しやすい」の1文で納得するはずもない。なぜなら、軽ければ、ディスプレイは小さくなり、操作性が落ちることは知った上で、軽量を望んでいるのだから。

 デメリットに対する反論を、1,2文で終えてしまう人は、メリットがデメリットを上回ることを論証する気持ちが希薄なのだ。そんな文章では、人を説得はできない。


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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