Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
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電子メールのタイトルの付け方
 論文のタイトルについて書いたので、今日は電子メールのタイトルについて書きます。お願いですから、電子メールのタイトルに自分の名前を入れないでください。

 たまに差出人の名前を入れたタイトルでメールを送ってくる人がいます。たとえば、『佐藤です』とか、『ご連絡:山田商事の鈴木』みたいな。

 自分の名前を送信メールのタイトルに入れるのはやめましょう。名前を知らせたいなら、メールアドレスを『倉島保美 』のようにすればよいことです。タイトルに送信者の名前が入っていると、返信するときにタイトルを付け直さなければなりません。無駄な手間を受信者に強制しないでください。

 メールのタイトルでは、最低、トピックを『何の何』で書きましょう。たとえば、『月例会議の議題』のように。トピックを『何』の形にすると分かりません。『月例会議』では、何を伝えようとしているのかよく分かりません。

 トピックを書いた上で、相手からの返事を期待するなら、返事が必要なことが分かるキーワードを入れましょう。たとえば、『依頼』、『提案』、『確認』などです。『提案:月例会議の議題』とあれば、月例会議の議題を提案したメールなので、提案内容に対する賛否を返事しないといけないことが分かります。

 一方、相手からの返事を特に期待しないなら、トピックだけで大丈夫です。トピックだけのタイトルなら、読み手は自然と、単なる通知と認識してくれます。『月例会議の議題』とあれば、月例会議の議題を通知してきたと思うはずです。

 蛇足ですが、返事が必要なことが分かるキーワードとしての『要返事』は、身内でのみ使いましょう。私は、見ず知らずの人から『要返事』とあるタイトルのメールをもらって、びっくりしたことがあります。
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論題のつけ方
 論文の論題は、「内容の分かるように付けろ」とよく言う。問題はどうすれば、内容が分かるようになるかだ。大事なのはテーマと新規性だ。新規性は、科学系の論文と人文系の論文で違うので注意が必要だ。

 テーマは、「何の何」を意識するとよい。たとえば、「ソフトウェアの設計生産性」とか、「顧客情報のセキュリティ」とか。「何」だけだとよく分からない。

 新規性は、科学系の論文なら、方法や材料に、人文系の論文ならアプローチに出ることが多い。たとえば、「~を使った」、「~に着目をした」のようになる。「APA論文作成マニュアル」(アメリカ心理学会発行の論文作成マニュアル)では、「method[方法]やresults[結果]はタイトルにはつけないのが普通である」と書いてあるのは、心理学の世界では、方法に新規性はなく、着想に新規性があるからだ。しかし、科学系は方法にこそ新規性が現れる。

 さらに、必要に応じて目的も書く。目的とはテーマをどうしたいのかである。たとえば、「向上」、「削減」、「強化」、「効率化」などである。しかし、目的は、テーマから明らかな場合も多い。当たり前なら省略でよい。

 ちなみに、次のような言葉は不要だ。「~についての考察」、「~について」、「~に関して」、「~の検討」。なぜなら、当たり前だから。論文は、何かについて考察するものであり、検討するものだから。

 あとは、習慣にも左右される。習慣的に決まっているなら、理屈より習慣が優先する。たとえば、「~についての考察」と書くのが習慣なら、そう書くのもしかたない。

 ちなみに、英語の場合、すべての主要単語の先頭の1字は大文字となる。前置詞や冠詞はすべて小文字。「APA論文作成マニュアル」には、以下のような記載がある。

--------引用----------
3.1 3 標題や見出しの主要語
以下の場合は語を大文字で始める.
・書籍, および論文の表題の主要語, 接続詞, 冠詞, 短い前置詞は主要語とはみなされない. ただし, 4 文字以上の語は前置詞であってもすべて大文字で始める. 動詞(be 動詞などの連結動詞も含む), 名詞, 形容詞, 副詞, 代名詞は常に大文字で始める.ハイフンで結ばれた複合語の場合は2 語とも大文字で始める. 表題で, コロンやダッシュの後に続く部分の最初の語も大文字で始める.
--------引用----------
論文のタイトルは、人文と科学で違う
 論題のつけ方は、人文と科学で違う。人文では方法を書かないが、科学では方法(あるいは材料)を書く。

 「APA論文作成マニュアル」(アメリカ心理学会発行の論文作成マニュアル)では、論題のつけ方について、方法を書かないことも含めて、以下のような記述がある。

---引用始---
2.01 タイトル
 タイトルは論文の中心アイディアを簡潔に,そして可能ならば,格調高く要約するものである。タイトルは論文の中心テーマを簡潔に述べ,研究で扱われる変数と理論的問題,またこの両者の関係を明確にするものでなくてはならない。たとえば,Effect of Transformed Letters on Reading Speed(読書スピードに及ぼす変形文字の影響)は模範的なタイトルである。
 タイトルのみで論文のテーマが完全にわかることが望ましい。タイトル本来の役割は研究のテーマを知らせることであるが,他にもAPAのPsycINFOなどのデータベースで,要約や検索の目的で論文の内容を示すものとしても使われる。良いタイトルは,ランニングヘッド(欄外見出し)用に短縮するのが容易である。
 通常,タイトルは索引や文献資料集に掲載されるので不要な語は避けるべきである。余分な語はタイトルを長くするだけでなく,索引作成者に誤解を与えることにもなる。たとえば,method[方法]やresults[結果]はタイトルにはつけないのが普通である。まして, A Study of[~の研究]やAn Experimental Investigation[~の実験調査]などの余計な語を含むタイトルは避けるべきである。ただし,a research synthesis[リサーチ統合],a meta-analysis[メタアナリシス],あるいはfMRI study of[~の機能的磁気共鳴画像法による研究]などの語は読者にとって重要な情報を提供する場合もあるので,タイトルに含めてよい。また,タイトル内では略語は使用しないこと。すべての語を略さずに書くことで,その論文の正確かつ完全な索引化が確実になる。タイトルの望ましい長さは12語程度である。
 タイトルは,主要語の最初の文字を大文字にして(セクション4.15を参照),左右マージンの中央,ページの上半分に置く。
---引用終---

 心理学では、論題に方法を示さない。なぜなら、方法に重要性がないからだ。「読書スピードに及ぼす変形文字の影響」を調査するにあたり、どんな方法を使うかにさほど重要性を感じない。そこに論者のオリジナリティはない。オリジナリティは、テーマの「読書スピードに及ぼす変形文字の影響」そのものにあるからだ。

 しかし、科学技術論文では、方法や材料を示すことは普通だ。なぜなら、その方法や材料こそが、論者のオリジナリティだからだ。テーマ(たとえば、ある性能値の向上)にオリジナリティはない。その分野の研究者がみな同じテーマで競っているのだ。どんな方法や材料を使うかこそがオリジナリティだ。

 何も考えずに、「ここにこう書いてある」ではダメなのだ。


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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