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Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
11 | 2018/12 | 01
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代名詞は使わない
 テクニカル・ライティングの考え方の一つに、「代名詞は避ける」というのがあります。しかし、論理的な文章を書くことを生業にしている人でも、このルールを守れないことは多いのです。

 論理的な文章では代名詞は避けます。代名詞というのは、「これ」「それ」「あれ」です。これらの言葉は、何を差しているかが曖昧になるからです。曖昧でなくても、読み手に考えさせる時間を強いること自体が伝達性を下げてしまいます。

 そこで、代名詞の代わりに「この〇〇」という言い方をします。つまり、「この方針」とか、「この態度」のように使います。この言い方を「代示」と学びましたが、「代示」は広辞苑には載っていません。テクニカル・ライティングの世界における専門用語なのでしょうか。代示を使えば、指しているものが何かは明確です。

 ところが、論理的な文章を書くことを生業にしている人でも、このルールを守らないケースが多いです。文章書き方を論じた本でも、代名詞が使われているケースはよく見ます。あるいは、テクニカルライターの書いた解説書でも、代名詞を見ることがあります。

 ちなみに私は、代名詞は使いません。大量の文章を書くときでも、一切使いません。たとえば、一冊の本を書くにしても、一回も使いません。徹底しているので、代名詞を使う発想が自分にはないのです。
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「が、」「り、」「し、」「て、」で文と文をつながない
「が、」「り、」「し、」「て、」で文と文をつないではいけません。

 文と文をつなぐ「が、」を使わないのは、順接と逆接の両方の意味が可能だからです(下記の例参照)。しかも、順接か逆接かは、「が、」以降を読まないと特定できません。それだけわかりにくく、読み手に負担のかかる表現なのです。
 順接:先日、A氏の還暦祝いの会が催されたが、B氏がそこで重大発表をした。(順接)
 逆接:先日、A氏の還暦祝いの会が催されたが、B氏は参加しなかった。(逆説)

 特に、順接の「が、」は使う意味がありません。使わないようにしましょう。私は、「生涯使うまい」と心に誓っているぐらいです。順接の「が、」を使った文は、使わない文に直せるのです(下記参照)
 例:先日、A氏の還暦祝いの会が催された。その会で、B氏は重大発表をした。
 例:先日催されたA氏の還暦祝いの会で、B氏は重大発表をした。

 同様に、「『り、』『し、』『て、』も使うな」と私は指導しています。これらの接続は、ほとんど場合、意味のない接続か、意味を込めた接続だからです。
 例:偽造写真広告は技術の責任でなく、ルール違反行為であって、技術と行為は明確に区別されなければならない。(切ればよいだけの意味のない接続)
 例:偽造写真広告は技術の責任でなく、ルール違反行為であって、技術ではなく行為の規制が必要となる。(原因結果という意味を込めた接続)

 この「『が、』『り、』『し、』『て、』で文と文をつながない」は、「一文一義」や「文を短く」と同意です。「が、」「り、」「し、」「て、」で文と文をつなぐから、一文多義になるのです。あるいは、文が長くなるのです。「一文一義」や「文を短く」のできていないサインが、「が、」「り、」「し、」「て、」なのです。私は、「一文一義」という抽象的なお題目も使います。しかし、より具体的に「『が、』『り、』『し、』『て、』で文と文をつながない」と強調します。

 ちなみに、上記の文章で「が、」「り、」「し、」「て、」で文と文をつないでいるところはありません(例文を除く)。
二重否定は避ける
 テクニカル・ライティングでは、二重否定は避ける。二重否定は否定の否定なので、肯定文に直る。肯定文の方が簡潔で分かりやすい。

 二重否定を肯定文に直す1つの方法は、そのまま前後を肯定文にしてしまうのだ。たとえば、「組織の壁がなくならないから、売り上げが伸びない」なら、「組織の壁がなくなれば、売り上げが伸びる」とする。短く分かりやすい。

 しかし、この修正は、修正前と後が完全には同じ意味ではない。修正前は、必要条件だったことが、修正後には十分条件になってしまっている。

 そこで、2つめの修正として、後ろから前に肯定文にする手がある。つまり、「売り上げを伸ばすには、組織の壁をなくすべきだ」とするのだ。これなら、修正前後が同じ意味になる。

 この2つの修正を知っていれば、二重否定はすべて肯定文に直せる。だから、二重否定を使うのは、強調のために肯定文を述べた後に追加するような場合だけになる。たとえば、「組織の壁がなくなれば、売り上げが伸びる。このままいつまでも組織の壁がなくならないから、売り上げも伸びない」のように。

 ちなみに、先日あるテレビで「No challenge, no success」を、「チャレンジするから成功する」のように肯定文で訳しているのを見た。「おお!知っている人がいる」と思ったものだ。普通なら、「挑戦しないなら成功もない」のように訳すところだ。
代名詞の単独使用を避ける
 テクニカル・ライティングでは、代名詞を単独で使用することを避ける。代名詞を使うなら名詞と合わせて使う。

 代名詞の使用を避けるのは、代名詞が指している情報を誤解したり、読解したりすることになるからだ。「それ」とは何を指すかを誤解しなくても、読解しなければならないなら、実務文章として失格だ。中には、筆者に聞いても答えられないようなひどい代名詞もある。何を指すかを読み手にわずかでも考えさせてしまうなら、その代名詞は使うべきではない。

 たとえば、「速く論理的に書く技術」(平田周)の以下の文章。2文目の「それには」が何を指しているのか分からない。筆者も答えられないのでは?
----引用----
 書き方の指導というと、マナーのお説教と同じで、何か堅苦しい、面白くないもののように思われがちですが、考える力を養うのと同じで夢のあることです。それには、あまり細かいことに神経を使わず、言うべきことを的確に伝えることに注意を向けましょう。数多く書いているうちに、書く技術は自然と身につきます。
----引用----

 代名詞を使うなら、「この〇〇」のように、名詞と合わせて使う。こうすると、誤解なく、読解することなく読める。たとえば以下のように。
悪い例:現状では企業隣接の育児施設はごく少数であり、また託児時間も短い。これを企業隣接型にしたり、時間の延長をしたりすべきである。これを政府は、補助金等により支援するとよい。
よい例:現状では企業隣接の育児施設はごく少数であり、また託児時間も短い。この託児施設を企業隣接型にしたり、時間の延長をしたりすべきである。このような活動を政府は、補助金等により支援するとよい。
同じ言葉は繰り返さない?
 日本語の文章の書き方の本を見ると、よく「同じ言葉は繰り返さない」ということが書かれています。しかし、この説明では、同じ言葉の繰り返しは必ず避けなければならないような誤解を招きかねません。正しくは、「キーとなる単語は統一して使用し、言い換えはできるだけ避ける。それ以外の単語、特に文末表現は、同じ言葉を繰り返さない」です。
 
 キーとなる単語は統一して使用しなければなりません。読者が同じものを指しているのか判断できない場合があるからです。同じ単語を使い続けると、単調になり、不自然にすら感じることがあります。しかし、ビジネス文章では、誤解を招かないということが優先されます。特にマニュアルではこの考え方は重要です。
 
 キーとなる単語以外は、なるべく同じ言葉を繰り返さないほうがよいです。なぜなら、同じ言葉の繰り返しは、読み手に不自然さを与え、時には、稚拙な印象すら与えかねないからです。キーとなる単語以外なら、同じことを別の言葉で表現しても、誤解を生む心配はありません。
 
 キーとなる単語以外とは、接続詞や文末表現です。たとえば、『または』が連続するようなら、一方を『および』に換えたり、『....です。』という表現と『....ます。』という表現を混ぜて使うと良いです。


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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