Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
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ノートの取り方
 昨年の秋からここまで、15回の講演で33時間の講義を受講して、ノートを1冊書きつぶした。1時間平均で2.5ページになる。基本的には、一番前の中央に座り、「鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さ」でノートをとる。

 私が「鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さ」という表現を知ったのは、宇佐美寛氏の「大学の授業」という本だ。

---引用---
 一見、よくまとまっていると見える要約、まとめ、スローガンは要らない。そんなものはノートに書かなくてもいい。帰宅してノートを整理する時に書きこめば十分だ。具体的で面白い事実、目を低く(視線を低く) するとはじめて見えるような細かい事実、飾らないくだけた言葉……そういう類いの非インテリ的な事柄をノートするのだ。
 そういう目の低い「低級」なことを書くのだから、相当な量を書くことになる。相当な速度でノートをとる。鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さだ。ボールペンの場合は、インクが油性で引火するおそれがある。教室には消火器を置く。…… といった速さだ。
---引用---

 私が、「鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さ」でノートを取り始めたのは、約40年前の高校生時代だ。先に紹介した本に出合うずっと前。あるとき、高校の先生の話すことを片っ端からノートにとってみようと思ってやってみた。このノートをとると、定期テストの点数がグンとよくなったのを覚えている。

 ちなみに、「インクが油性で引火するおそれがある」のは困るので(笑)、私は万年筆を3種類使い分けている。
 ・黒インク:講師の述べたことを記す
 ・青インク:受講生が述べたことを記す
 ・赤インク:自分が感じたことを記す

 書き洩らさないために、略語や記号を多用する。たとえば、頻出するキーワードは略語化する。
 ・スモールステップ  → SS
 ・即時フィードバック → SFB
他にも以下のような記号を使う。
 ・増える or 高まる → ↑(逆もあり)
 ・良い/悪い   → O/X

 宇佐美寛氏は「大学の授業」で、ノートの効果を次のようにも述べている。

---引用---
 自分でノートをとるのは、緊張するためにとるのだ。ノートをとるためには、どうしても話の内容を頭の中で整理しなければならない。内容の構造を考え、どこが大事かを判断しないわけにはいかない。この過程が頭のためになる。考えながら聞く…… これで受身のテープレコーダーのような頭にならずにすむ。
---引用---

 偉そうなことを言ったが、高校時代から40年間、私自身がこういうノートを取り続けてきたわけではない。正直、大学生以降ずっと、怠惰に授業を受けてきた。このノートの取り方を思い出したのは、自らが研修講師として人に指導するようになってからだ。なにしろ、企業研修の受講者のほとんどは、全くノートを取らない。その状態を目にして思い出したのだった。
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ノートを取る理由
 早稻田大学エクステンションセンターの「教える技術」(向後千春教授)の全4回に参加した。いつものように、「鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さ」でノートを取る(下図)。ノートを取ることについては以前にも書いたが、また記しておこう。

 ノートを取る理由は2つある。
1.その場でしか得られない情報を記録に残す
2.緊張し、集中して講義を聴く

1.
 ノートには、その場でしか得られない細かな情報を書く。その代表が具体例だ。抽象的な言葉で分かった気になってはいけない。具体例やデータがあるからこそ理解できるのだ。具体例は、著作や配付資料には載っていないので、ノートに取るのだ。神は細部に宿るのだ。

 向後先生が話す、テニスの例こそノートに取るのだ。向後先生はテニスが好きなので、講義の中で、テニスに例えた話が出てくる。テニスの話は雑談ではない。そういう具体的な話が理解を深めるのだ。

 ノートには、まとめやキーワードを書くのではない。そんなことは配付資料や著作に載っている。必要なら、著作を読めばよい。汚い字で書かれたノートを見る必要は無い。ノートにまとめを書こうとするから、ノートに書くことがないのだ。

 具体例など細かな情報をノートに取るので、「鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さ」で書く。何が理解を深める情報かは、その場では分からないので、とりあえず可能な限りノートに書く。話したこと全部をノートには取れないので、取捨選択は必要だ。しかし、全部をノートに取る気合いでペンを走らせる。

2.
 「鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さ」で書くと、緊張し、集中して講義を聴くことになる。一言も漏らすまいと思うので、一瞬たりとも油断はできない。1.5時間の授業なら、1時間を過ぎたあたりで頭が痛くなる。受講後は、「面白かった」ではダメだ。「疲れた」が正しい。

 緊張し、集中して講義を聴くと、疑問がいろいろ湧いてくる。疑問が湧くのは、理解が深まっている証拠だ。理解できなければ、疑問も生じない。湧いた疑問も、ノートに書いておく。

 と、偉そうなこと書いたが、頭で描いていることと現実にできていることは違う。向後先生が、「自分は、フェデラーのフォームで打っているつもり」とおっしゃったのと同じだ。後で自分のノートを見直すと、まだまだ修行が足りないと思う。
スキル研修の目的
 スキル研修は何のためにするのか?スキルを身につけるためではない。目的は2つある。

 まず、スキル研修を受けたからといって、ビジネスに役に立つスキルが身につくことはない。1,2日学習をして、ビジネスで武器になるスキルが身につくはずはない。役に立つスキルはそんな簡単なものではない。1,2日で役に立つスキルが身につくなら、世の中はスパービジネスパーソンばかりだ。

 スキルを身につけようと思えば、1,000時間ぐらいの努力が必要だ。このことは、スキルを指導している人たちでは、よく言われることだ。NHKのラジオ英会話でも知られる杉田敏氏は、「例えば時間なら2000時間。TOEICにしても英会話にしても、これくらいはかけないと効果は期待できないとさまざまな人がいっています。」と言っている。英語を公用語にした楽天では、社会人が英語習得に必要な時間を1,000時間と考え、移行期間を2年と設定した。

 スキル研修の第一の目的は、そのスキルに1,000時間の努力をする価値があるかの判断をすることだ。意味のないスキルに1,000時間を費やすわけにもいかない。役に立つと確信できるからこそ、1,000時間を費やす意味がある。また、1,000時間費やすモチベーションがわく。

 スキル研修の第二の目的は、習得までの時間の短縮だ。試行錯誤するから1,000時間が必要なのだ。研修によって、最短距離がわかれば時間を短縮できる。まあ、それでも500時間ぐらいは必要だが。
鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さでノートを取る
『一見、よくまとまっていると見える要約、まとめ、スローガンは要らない。そんなものはノートに書かなくてもいい。帰宅してノートを整理する時に書きこめば十分だ。具体的で面白い事実、目を低く(視線を低く) するとはじめて見えるような細かい事実、飾らないくだけた言葉……そういう類いの非インテリ的な事柄をノートするのだ。
 そういう目の低い「低級」なことを書くのだから、相当な量を書くことになる。相当な速度でノートをとる。鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さだ。ボールペンの場合は、インクが油性で引火するおそれがある。教室には消火器を置く。…… といった速さだ。』(「大学の授業」宇佐美寛)

 「鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さ」でノートを取った。今週から参加している「グレーター東大塾」だ。そういうノートを取ったのは久しぶりなので、ペンが上手く動かなかった。まあ、そのうち慣れるだろう。ちなみに、「インクが油性で引火するおそれがある」のは困るので、万年筆を使った。(笑)

『自分でノートをとるのは、緊張するためにとるのだ。ノートをとるためには、どうしても話の内容を頭の中で整理しなければならない。内容の構造を考え、どこが大事かを判断しないわけにはいかない。この過程が頭のためになる。考えながら聞く…… これで受身のテープレコーダーのような頭にならずにすむ。』(「大学の授業」宇佐美寛)

 「鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さ」でノートを取るには、無茶苦茶集中する。頭の中はフル回転だ。疑問もたくさん出てくるので、それもノートに書く。1時間も続けると、頭が痛くなる。勉強して頭が痛くなるのも久しぶりだ。
授業で取るノートは、話のポイントをまとめるのではない


 2017.7.15の読売新聞夕刊から。違う!何も分かってはいない!

 授業で取るノートは、話のポイントをつかんでまとめるのではない。まとめは、テキストや資料に載っているはずだ。そんなことをノートに取る意味はない。テキストや資料に載っているのだから、「スマートフォンで撮影したり、配布資料にメモする程度で済ませたり」「ノートを持ち歩かない」のは当然だ。 

 ノートに取るのは、話のポイントを理解するために必要な具体例や例えだ。テキストにも資料にも載っていないことを詳細に記録するのだ。抽象的なまとめでは理解できない。具体例などを通じて正確に理解できるのだ。詳細に記録するから、「ペン先から煙が出る速度」で記録するのだ。まとめは、授業が終わってからする行為だ。

 「話のポイントをつかんでまとめる習慣ができれば、社会に出てから必ず役に立つ」ことはない。社会に出れば、話のポイントはまとめてあるはずだ。話のポイントがまとめてないなら、「話のポイントをまとめてください」と言うべきだ。聞き手側が自分勝手にまとめれば、話して側の意図とは違う理解になりかねない。

 「ノートを評価する入試」も馬鹿げている。いかにまとめたかを評価する意味はない。ノートの取り方を試験したいなら、「講義で説明のあった〇〇というポイントについて、具体例を使って説明せよ」とすればよい。もちろん、その具体例は講義の中で述べているのが前提だ。蛇足だが、講義で使われなかった具体例でも、適切な具体例なら正解とすべきだろう。

 さらにいえば、「読解力低下に通じる」「ネット上の短いやりとりが主流となり、相手の話にじっくり耳を傾ける姿勢が失われている」も的外れだ。単に、指導者が正しい指導ができないだけだ。


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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