Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
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読売新聞社説の解析(5)
 食品ロスに関する、読売新聞の社説(2018.01.09)の分析、5回目。前回書き直した文章を解説をする。解説の都合上、パラグラフに番号を付けた。また、各論のパラグラフでは、先頭文をゴシック表示した。

 文章全体は、総論-各論-結論で構成する。書き直した文章では、第1パラグラフが総論で、第2-8パラグラフが各論、第9パラグラフが結論だ。最初と最後で、言いたいことを強調する。だから、総論と結論で内容をかぶらせる。

 各論は、1論理構成単位を1パラグラフとし、7パラグラフぐらいまでで構成する。論理構成単位とレイアウト上の固まりが対応していることが大事だ。論理構成単位も人間の把握しきれる7ぐらいまでにする。7つぐらいまでの論理構成単位が、はっきり視覚的に見えるので、論理構成も把握しやすくなる。論理構成単位が7を超え始めたら、文章を階層構造化することを検討する。

 各論のパラグラフでは、そのパラグラフのトピックを1文目(トピックセンテンス)で述べる。このとき、トピックセンテンスは、論理構成が正しく伝わる範囲で短く述べる。短く述べるから、そのパラグラフのトピックが頭にすっと入る。1文目が長いと、それだけで論理構成が伝わるにくくなる。

 また、各トピックセンテンスだけ読んで、論理構成が分かるように書く。つまり、トピックセンテンスだけで文章として成立するように書く。1論理構成単位を1パラグラフに割り当て、そのパラグラフのトピックが1文目のトピックセンテンスで正しくまとめられていれば、トピックセンテンスだけで、すべての論理構成単位が拾える。だからトピックセンテンスだけ読んで文章として成立する。

 さらに、各トピックセンテンスだけで既知から未知に流れなければならない。各トピックセンテンスだけで文章として成立するなら、各トピックセンテンスどうしは既知から未知につながっているはずだ。もし、既知から未知につながっていないなら、「文章として成立する」と思っているのは書き手だけかも知れない。

 各論のパラグラフは、4-8文を目安に書く。パラグラフで述べたトピックに納得感を持ってもらうには、どうしても詳しい説明や具体例がいる。1,2文では説得できない。たとえば、『「もったいない」という日本人の美徳』について述べたら、日本人がいかに「もったいない」という気持ちを大切にしているかを具体例などで示すのだ。また、対策を述べたら、その対策を詳しく具体的に説明するのだ。オリジナルの文章のように、「少なくとも手つかずで捨てる食品を減らすような消費行動を、一人一人が心がけたい。」の1文で終わってはいけない。

 情報量とトピックの重要性とのバランスも考慮する。重要なトピックはより詳しく、重要性の低いトピックは説明が少なくても良い。たとえば、日本人の美徳と経済的なロスでは、前者を重要としているので説明量に差がある。これはあくまで目安に過ぎない。しかし、重要性を無視した、極端な情報量の差は、論理性を疑われかねない。

 他にもいろいろなことに注意しながら書くのだが、今回はここまで。

食品ロス書き直し

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読売新聞社説の解析(4)
 食品ロスに関する、読売新聞の社説(2018.01.09)の分析、4回目。前回検討した論理構成で書き直しをする。

 前回検討した論理構成を、1構成ユニットを1パラグラフに展開する。そこに、総括する総論を最初に、まとめを最後につけると、以下のようになる。細かい解説は次回に。

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 本来食べられる商品が廃棄される「食品ロス」は、日本人の美徳に反するし、社会全体の損失ともなる。無駄の削減には、消費者の「もったいない」という意識と、食品製造業・小売店の商習慣の改革が必要だ。

 家庭や食品製造業・小売店、飲食店での「食品ロス」が問題視されている。食べ忘れ、売れ残り、返品、食べ残しなどによって、多くの食品が破棄されている。国内の食品ロスは、年間約592万トンと推計される(平成26年 農林水産省の調べ)。毎日1人あたり茶わん1杯分の食品が捨てられている計算だ。

 食品ロスは、「もったいない」という日本人の美徳に反する。日本人は昔から、食べ物に対する感謝の意から、無駄にすることを「もったいない」と嫌ってきた。この感謝は、命を捧げてくれた動植物に対してはもちろん、料理になるまでに関わったすべての人の労働に対してだ。いくら裕福だからといって、食べ物を粗末に扱うのは、下品な行為と感じる人は多いはずだ。

 また、食品ロスは、経済的な損失でもある。無駄な廃棄はコストを上昇させるので、企業の経営を圧迫する。あるいは小売価格の上昇を招く。無駄な食品加工、輸送、販売でエネルギーの浪費にもつながってしまう。

 食品ロスの最大の要因は、消費者の食べ残しや食べ忘れだ。家庭内での食べ残しや食べ忘れによる廃棄だけでも、食品ロス全体の48%にもなる。おいしく食べられる期間の賞味期限を、安全に食べられる期間の消費期限と混同しての廃棄も多い。さらに飲食店での食品ロス(全体の20%)の多くは、消費者の食べ残しだ。宴会での食べ残しは、よく見る光景となってしまった。

 次に大きな要因となるのが、食品製造業・小売店での「3分の1ルール」による返品や廃棄だ。「3分の1ルール」とは、製造から賞味期限までの期間の3分の1を過ぎると、食品製造会社や卸売業者は小売店に納品できないという、加工食品での商習慣だ。まだ食べられる商品が、廃棄を余儀なくされる。売り場でも、賞味期限まで一定期間を切った商品は撤去される。

 そこで、消費者による食品ロスを減らすために、「もったいない」という美徳をもっとアピールすべきだ。たとえば、公共広告機構のCMを使うのも一つだ。一粒も残さずに食べきったご飯茶碗や、骨だけ残してきれいに食べた魚などを放映するだけでも効果は高いだろう。こういった食べ方を見て「意地汚い」と思ったりはしない。むしろ「自分もそうありたい」と思う人が多いはずだ。

 また、食品製造業・小売店でによる食品ロスを減らすために、業界に残る「3分の1ルール」を見直すべきだ。ここ数年、一部の大手小売りチェーンなどでは、3分の1ルールの見直しが始まっている。保存性の高い菓子や飲料について、納品期限を「賞味期限までの期間の2分の1」に延ばすものだ。農林水産、経済産業両省も昨年5月、海外に比べても厳しい3分の1ルールの緩和を業界に要請した。対象品目の拡大を含めて取り組みを加速してほしい。

 手つかずで捨てる食品を減らすよう、消費者と食品製造業・小売店の両方で努力したい。豊かになっても、「もったいない」という美徳は捨てたくはない。
読売新聞社説の解析(3)
 食品ロスに関する、読売新聞の社説(2018.01.09)の分析、3回目。書き直しを考える。そのために、まずは論理構成を整理する。

 論理構成を考える上で大事なのは、論理構成単位を7ぐらいまでに抑えることだ。論理構成単位が10もあったら、人間は頭で把握しきれない。人間の短期メモリーは7±2しかないのだ。論理構成単位が7を超え始めたら、階層構造化すべきだ。だから、階層のない文章を、社説のように細切れで説明してはいけない。

 また、論理構成単位は、縦か横でつながっていなければならない。縦でも横でもないなら無関係だ。無関係な話が突然登場すれば論理性が下がる。論理構成単位が縦か横でつながっていれば、論理構成はブロック図のようになる。

 論理構成単位を7つまで、縦か横でつなぐのだから、縦も横も3-4が限界だ。つまり、大きな論理の流れ(縦)を3前後で作る。その一部を3前後の横に展開する。全部で7つ程度に納める。

 以上のようなことを考えながら論理構成すると、例えば以下のようになる。大きくは「現状-問題ー原因-対策」という4つが縦につながっている。そのうち、「問題」、「原因」、「対策」は、それぞれ横に2つ展開している。合計で7つだ。

 ここで気をつけるべきは、「問題」と「対策」の対応だ。離れているから忘れてしまいがちだ。その結果、「問題」と関係の無い「対策」を述べてしまう。今回の読売新聞の社説では、食品ロスを経済的な観点から述べていたのに、最後に「宴会での食べ残しを減らす」という対応しないことを述べてしまっている。

 さて、そんなことを考えながら、書き直した結果は次回に。
食品ロス論理構成

読売新聞社説の解析(2)
 昨日に続き、読売新聞の社説(2018.01.09)を分析する。昨日は主にライティング的な視点だったので、今日は論理的な視点から。

 この記事で、私が最も違和感を感じたのは、「食品ロスの半分近くは、家庭から出ている実態がある」という文だ。食品を最もロスしているのは家庭であることが最後になって述べられている。なお、食品ロスの比率は、下のグラフ(農林水産省のH26のデータを参考に作成)を参考にしてほしい。

 なぜ、家庭に対する対策はほぼ述べず、製造元や卸に対する対策を詳しく述べる?食品ロスを減らすなら、まず、家庭でのロスを減らさなければならないだろう。食品ロスの比率の少ない製造元や卸に対する対策は意味があるのか?製造元や卸における食品ロスの比率を示していないのは、意図的なようにも感じる。

 家庭ではなく製造元や卸に対する対策を述べたのは、最も簡単に効果が上がるからだろう。家庭で食品ロスを減らすよう、家庭外から強制するのは難しい。確実で現実的な解決策は、私には思いつかない。家庭に較べて製造元や卸なら、政府などから通達は可能だ。まずは、簡単で効果の上がる対策からということかと思う。

 であるなら、そう述べておくべきだ。前半では、あたかも「3分の1ルール」を見直すことが、とても有効な手法であるように述べいる。しかし、最後になって、最も大きな食品ロスには手つかず。これでは、読み手を馬鹿にしているようだ。

 「賞味期限の表示を「年月」に切り替える動き」は話がそれている。それまでは、「3分の1ルール」の話をしていたのだ。「3分の1ルール」が、消費者の「鮮度志向」を元にしていることから、「鮮度志向」つながりで、別の話を持ち出している。「3分の1ルールの見直しとともに、賞味期限の表示を…」のように、第2の対策として述べるべきだろう。

 「宴会の最初の30分、最後の10分は着席して食べよう」は意味があるのか?確かに、食品ロスは減る。しかし、積極的に食べたいわけではない料理を、無駄にしないために食べることに意味はあるのか?この行為は、最初に述べた「貴重な資源の浪費」、「企業の経営を圧迫」、「小売価格の上昇」のどれにも対応しない。あえて言えば、「もったいない」という価値観だ。論理ではない。

 食品ロスを論じるとき、「もったいない」という価値観を避けては通れまい。経済だけで論じるのは難しく感じる。特に家庭や飲食産業における顧客(=個人)に対して、「貴重な資源の浪費」、「企業の経営を圧迫」、「小売価格の上昇」を訴えても、食品ロスが減るとは思えない。個人に訴えるには、「もったいない」という価値観の美徳ではなかろうか。


食品ロス

読売新聞社説の解析(1)
 久しぶりに、ロジカルライティングの観点で、文章を分析しよう。対象は、本日(2018.01.09)の読売新聞社説(最後に掲載)。数回にわたる分析の1回目。

 第3段落で、食品ロスによる「資源の浪費」、「経営の圧迫」、「小売価格の上昇」を指摘している。
--- 引用開始 ---
「貴重な資源の浪費であり、企業の経営を圧迫する側面もある。コストがかさむ分、小売価格の上昇を招きかねない。」
--- 引用終了 ---

 この3つが並列なら、なぜ、「資源の浪費」と「経営の圧迫」を1文でつなげ、「小売価格の上昇」は独立した1文なのか?並列なら一般に重要な順だ。重要な2つの文をつなげれば、ともにボケる。最も重要性の低い「小売価格の上昇」は1文なので強調される。「資源の浪費」が1文で、「経営の圧迫」と「小売価格の上昇」がつながって1文なら理解できる。

 この3つは並列ではなく、「経営の圧迫」の理由が「小売価格の上昇」と読むなら、さらにおかしなことになる。「小売価格の上昇」を理由としたいなら、誤解を生まぬよう、「なぜなら」のような接続詞が必要だ。さらに、なぜ、重要性の高い「資源の浪費」は理由を述べず、重要性の低い「経営の圧迫」についてだけ、次の文で補足するのか?

 1文目が、「貴重な資源の浪費であることは言うまでも無く、企業の経営を圧迫する」ならライティング的には理解できる。この場合、「資源の浪費」と「経営の圧迫」は並立ではなくなる。書き手が「経営の圧迫」にフォーカスを置いていることが伝わる。

 しかし、「貴重な資源の浪費であることは言うまでも無く」としても、私は論理的に納得できない。私には、食品ロスが、深刻な「資源の浪費」には思えないからだ。まず、食品ロスを減らしても、その食品が飢えた人々に回るわけではない。となると、この「資源の浪費」とは、食品の原材料を作ったり、食品に加工したり、輸送したりするときの「資源の浪費」だろう。確かに、「資源の浪費」には違いないが、社説で取り上げるほどの膨大な浪費だろうか。

 そこで、わたしなら「もったいないという気持ちは言うまでも無く」とする。この表現なら、「経営の圧迫」にフォーカスを置きつつ、「もったいない」を論証する必要もなくなる。多くの人が、食品ロスを「もったいない」と感じているはずだ。皆が「そう言える」と思っていることは論証する必要が無い。さらに、「もったいない」は価値観なので、論証には向かない。

 論理的な文章を書くときは、1文たりとも油断してはいけない。この文章のように、何気なく「り、」で文をつなげば、ろくに考えずに文章を書いたことがすぐにばれてしまう。

------ 原文 -------
食品ロス削減 過度な「鮮度志向」見直したい

読売新聞 2018年1月9日6時0分

 本来食べられる商品が廃棄される「食品ロス」は、社会全体の損失となる。無駄の削減には、企業と消費者の双方で意識改革が欠かせない。

 売れ残りや返品、食べ残しなどによる国内の食品ロスは、年間約620万トンと推計される。毎日1人あたり茶わん1杯分の食品が捨てられている計算だ。

 貴重な資源の浪費であり、企業の経営を圧迫する側面もある。コストがかさむ分、小売価格の上昇を招きかねない。

 大きな要因とされるのが、加工食品の商慣習である「3分の1ルール」が存続していることだ。

 製造から賞味期限までの期間の3分の1を過ぎると、メーカーや卸売業者は小売店に納品できない。まだ食べられる商品が、廃棄を余儀なくされる仕組みだ。売り場でも、賞味期限まで一定期間を切った商品は撤去される。

 小売業者は消費者の「鮮度志向」を理由に挙げる。しかし、適切な商品知識を普及させることこそ、業界には求められよう。

 賞味期限は、傷みやすい食品に表示される消費期限とは異なる。おいしく食べられる期間のことであり、直ちに捨てなければならない日付というわけではない。

 ここ数年、一部の大手小売りチェーンなどでは、3分の1ルールの見直しが始まっている。保存性の高い菓子や飲料について、納品期限を「賞味期限までの期間の2分の1」に延ばすものだ。

 卸からメーカーへの返品や廃棄が減る成果が報告されている。

 農林水産、経済産業両省も昨年5月、海外に比べても厳しい3分の1ルールの緩和を業界に要請した。まだまだ全体には浸透していない。対象品目の拡大を含めて取り組みを加速してほしい。

 メーカー側の努力も要る。需給を見極めた的確な生産計画や、容器の高機能化などによる賞味期限の延長が課題となっている。

 日付単位の賞味期限の表示を「年月」に切り替える動きがみられる。1日でも新しい商品を求めがちな業界や消費者の意識を改める契機になるのではないか。

 外食は大量の食べ残しが問題だ。各地の自治体で「宴会の最初の30分、最後の10分は着席して食べよう」といった呼びかけが始まっている。ゴミ量削減に少なからぬ効果があるという。

 食品ロスの半分近くは、家庭から出ている実態がある。

 少なくとも手つかずで捨てる食品を減らすような消費行動を、一人一人が心がけたい。


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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