Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
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小論文の書き方
 小論文が論理的な文章を書くトレーニングに適していることを述べた。先に紹介した小論文を引き合いに説明してみよう。

 小論文を書くには、最初に、論理構成単位を縦と横につないでロジックを組む。先に紹介した小論文なら、以下のような構成をまず考える。下記の3から4と5は横に展開されているが、それ以外はすべて縦につながっている。
1.財政破綻の危機
2.最大の金食い虫は社会保障費
3.歳入と歳出の両方で改革
4.歳入は、消費税を増税
5.増税のインパクトは小さいはず
6.歳出は、給付を制限
7.高齢者に泣いてもらうしかない

 このように、まず、論理構成単位を縦と横につないでロジックを組むことから考える。いきなり文章を書き出してはいけない。考えるに当たっては、アウトラインプロセッサーというソフトウェアを使うのもいいだろう。専用ソフトでなくても、MS-Wordでも似た機能はある。

 次に、この論理構成単位を。パラグラフのトピックセンテンスに落とし込む。先に紹介した小論文では、以下のようなトピックセンテンスにした。
1.現在、日本の財政は破綻の危機に直面している。
2.財政を圧迫しているのは社会保障費だ。
3.膨れあがる社会保障費を捻出するには、歳入と歳出の両方で改革が必要だ。
4.社会保障費向けの歳入を増やすには、消費税を増税するしかない。
5.消費税を増税すると、消費が冷え込むという恐れもあるが、影響は比較的小さく済むだろう。
6.一方、社会保障費向けの歳出を減らすには、給付を制限するしかない。
7.社会保障費の給付を制限すると、高齢者に負担を強いることになるが、致し方ないだろう。

 トピックセンテンスに落とし込む時の注意は、短く書くことだ。トピックセンテンスは、ロジックを伝えるための文だ。そのトピックを説明する文ではない。短く書くと、記憶に残るので、ロジックが伝わりやすい。細かい説明は、パラグラフの2文目以降(サポートセンテンス)で述べれば良い。

 もう一つ、トピックセンテンスに落とし込む時の注意は、縦と横を文章表現することだ。縦につながっているパラグラフなら、トピックセンテンスに「A-B、B-C、C-D」という流れができる。一方、横なら、「AとB、A、B」という流れができる。

 もし、縦と横の関係が文章表現として見えないなら、ロジックが不十分な可能性が高い。論理的な接続の弱い論理構成単位をつなぐと、「A-B、B-C、C-D」や「AとB、A、B」と表現できない。ロジックの見直しが必要だ。

 トピックセンテンスができたら、各パラグラフにサポートセンテンスを加える。トピックセンテンスで述べた論点(=論理構成単位)を、データや具体例、詳細説明で論証するのだ。原則すべてのパラグラフで、そのパラグラフのトピックを論証しなければならない。サポートセンテンスまで読めば、読み手が全員、そのトピックセンテンスに同意するように書く。

 サポートセンテンスは、それなりの量(3-7文ぐらい)の文章やグラフや表、図解が必要だ。サポートセンテンスを1-2文だけで終わってはいけない。論点を論証するには、どうしてもそれなりの量の情報量がいる。1-2文で終わるパラグラフは、論点を論証できていない。つまり、その文章は論理的ではない。

 ただし、下のパラグラフを導く導入のパラグラフにサポートセンテンスは不要だ。たとえば、先に紹介した小論文なら、「膨れあがる社会保障費を捻出するには、歳入と歳出の両方で改革が必要だ」と述べたパラグラフだ。詳細説明は、その下のパラグラフでするのだから、ここでは簡単に述べるだけで良い。

 こうやって考えながら文章を作成するので書く力が付く。また、先に説明した以下の点をチェックすれば、自分の文章が正しく書けたか確認できる。
「トピックセンテンスは短く」
「トピックセンテンスで縦と横を文章表現する」
「サポートセンテンスは、3-7文ぐらいの文章やグラフや表、図解が必要」
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社会人の文章力向上に小論文が効果的
 私は、社会人の文章力向上には、ビジネスレポートを書くより、小論文を書くトレーニングの方が効果的だと思っている。小論文のほうが、応用力が付くからだ。

 ビジネスレポートの場合、論理構成も論証すべき論点もほぼ決まっている。たとえば、トラブル解析のレポートの論理展開は、問題-原因-対策-効果確認だ。各論点をグラフや図解で論証したり説明する。提案書なら、現状-問題-提案-メリット-デメリットへの反論などだ。

 論理構成も論証すべき論点もほぼ決まってしまうと、考えずに習慣のように書いてしまう。考えなくても、論理構成は決まっているから簡単にできてしまう。論点の論証も、「ここにはこういうデータを付けるものだ」とばかりに、グラフや表を付ける。それでビジネス文章としては合格だ。

 しかし、考えずに習慣のように書くと応用が利かない。ちょっと新しいテーマになると、もう論理構成はできない。どう書いて良いかが分からなくなる。考えられなくなると、何でもかんでも箇条書きする。論証すべき論点には、データも具体例も付けない。貧弱な文章ができあがる。

 一方、小論文を書くには、まず、しっかりとして論理構成が必要だ(下図)。どんな論理思考単位を、どうつないでロジックを組むかは、そのテーマごとに考えるしかない。論理展開をテーマごとに考えることが、書き慣れないビジネスレポートを書くときにも有効だ。

 また、小論文を書くには、各論理思考単位を論証しなければならない。論証にはデータや具体例が必要だ。どんなデータや具体例があれば、自分の主張が成立するのかを考えることが、書き慣れないビジネスレポートを書くときにも有効だ。

 しかし、ライティングのトレーニングでは、小論文ではなくビジネスレポートを使う。ビジネスレポートの方が、受講者や研修担当に受けが良いからだ。ちょっと残念。
論文には新規性と有効性が必要
 論文の命は、新規性と有効性にある。新規性だけあっても有効性がないと、論文にはならない。

 論文で述べられている筆者の考えには、新規性が求めらる。つまり、これまでの研究とは異なっていなければならない。これまでとは異なる手法、材料、視点が必要だ。すでに示されている考えをまとめたり、データで示したりするだけなら、論文ではなくレポートだ。

 新規性以上に、有効性も求められる。つまり、論文で述べられている筆者の考えは、これまでの研究より優れていなければならない。従来より劣っているなら、発表する価値はない。新規性があっても有効性がなければ意味がない。

 この新規性と有効性について、宇佐美寛は著書「論理的思考」の中で、以下のように述べている。
---引用始---
論文である以上、述べられている筆者の考えが、それ以前にあった他人の研究とは対立し、それらを批判し、それらにまさっている点を明らかにしていなければならない。
---引用終---

 論文に新規性と有効性が求められることは足り前のように感じるかもしれないが、これを満たせない論文はよくある。技術論文なら問題ないのだが、人文系の論文だと、新規性と有効性が怪しい論文がよくある。私は、英語関係の学会に属しているが、その論文の中には、「だから何?」と思う研究が結構ある。先に紹介した宇佐美寛も、同じ著書の中で「これらの論文のほとんどは、その筆者自身が他の研究者と違って何を明らかにし得たのかが、どう読みなおしても、書かれていないのである。」と述べている。

 オリジナリティがあるからと言って、論文になるわけではない。


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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