Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
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M大のS教授の文章
 ある方から、M大のS教授(超有名、下の写真とは無関係)がパラグラフで文章を書けると聞いたので、チェックしてみた。しかし、まったくできていない。

 原文は著作権の関係で表示できないのでポイントだけ。
・パラグラフのトピックセンテンスが、パラグラフのポイントを正しくまとめていない
・パラグラフのトピックセンテンスで意見を述べながら、その根拠は述べていない。根拠を述べないので、パラグラフが1,2文で終わる
・パラグラフをつないでロジックを組む意識がない。だからロジックが破綻している。

 このS教授、文章書き方の本も書いているんだけどね。
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アンケートに望むこと
 研修後、クライアント企業は研修のアンケートを取る。私は、以下の3つを希望したい。
1.アンケート結果で研修の継続の可否を決めない
2.評価は4段階
3.「講義は理解できましたか」と質問しない

アンケート結果で研修の継続の可否を決めない

 受講者の評価力を信用してはいけない。受講者は負荷の高い研修を嫌う。負荷を重くすれば評価は下がる。しかし、負荷が軽いならスキルは身につかない。評価する能力のない受講者もいる。無気力だただひたすら眠っている受講者。従来の手法に固執し、新しい手法を頭から否定する受講者。こういう受講者の評価は意味がない。

 受講者の評価はあくまで参考で、最終決定は人材育成責任者がすべきだ。責任者は、アンケートを参考に、その評価が正しいかを、自らの目で確認すべきだ。アンケート結果に不満が書かれていても、その研修が企業の力を高めるのに必要なら、責任者の裁量で継続すべきなのだ。

 研修継続の可否が、アンケートで決まると、講師は受講者に迎合する。研修の負荷は軽くする。内容も易しくする。意味のないワークを増やす。受講者のスキル習得が二の次になる。

評価は4段階

 評価の段階に「普通」を入れてはいけない。良いか悪いかを聞く。中庸を選択しに置くと、日本人は中庸を選びがちだ。真の姿が見えにくくなる。

「講義は理解できましたか」と質問しない

「講義は理解できましたか」に「No」と記入する社員は、理解できないことを放置したことを告白したことになる。つまり、自ら、「自分は無能です」と言ったのと同じだ。理解できないなら、なぜ、質問しないのか?同じようなこと聞くなら、「講義は理解しやすかったですか?」と聞いてほしい。
論理より習慣が優先される
 私は、分かりやすい文章を書くための、ライティングのルールを論理的に指導している。しかし、論理より習慣が優先だ。習慣的な書き方が決まっていれば、習慣に基づくしかない。

 文章の書き方が、習慣的に決まっているケースがある。その習慣は、会社や業界での標準だ。こういう習慣はよくある。たとえば、会社の中で、「このフォーマットに基づいた形で作成の上、提出してください」と指定のある文章だ。明示的な場合もあれば、暗黙の了解の場合もある。

 しかし、この習慣が、明らかに理不尽なケースがある。おかしな書き方が、暗黙の標準になっているケースだ。たとえば、特許明細書の特許請求範囲という部分。ここは、ライティング的には許せない、とってもわかりにくい文章を書く習慣がある。

 しかし、習慣が理不尽でも、習慣として固定してしまうと守るしかない。何しろ、圧倒的多数はその悪しき習慣に基づいて文章を作成するのだ。自分だけが、「この書き方が正しい」と言って、習慣に反する文章を書いても、多勢に無勢だ。認められることはない。

 悪しき習慣をただすのは、研修ではなく、コンサルティングになってしまう。要は、トップダウンで強制的に一気に変えるしかない。研修を受講した人間は少数派なので、習慣を変える勢力にはならない。
日本の科学技術論文の標準
 日本でも、科学技術論文については、標準を制定しようとした動きがある。科学技術情報流通技術基準(SIST)という標準だ。ホームページで公開されている。
https://jipsti.jst.go.jp/sist/

 SISTは、文部科学省が主導した、科学技術情報の流通を円滑にするための基準である。日本の標準にしたかったのであろうが、あまり広まっているとは言えない。にもかかわらず、活動も2011年に終了している。日本の標準と言うのは、ちょっと苦しい。

 内容的には、当たり前のことが多く、重要な情報がぼけた感じ。書くまでもない当たり前のことを書くと、情報量が増えすぎて読みたくなくなる。実際、この標準を精読した人って、いないのではないだろうか。

 この手の標準は、制定しただけではなく、以下に広めるかが大事だ。文部科学省が主導したのだから、文部科学省管轄内の論文は、この標準を制定すればよかったのに。制定しただけでは、誰も見向きもしない。残念だ。
略語の表記
 テクニカル・ライティングでは、略語はスペルアウトした後に示す。その後、その略語を使う。多くの日本人がこの原則を知らない。

 略語は、スペルアウトしてから括弧で示す。たとえば、"American National Standards Institute (ANSI)"のように示す。この表記は、「American National Standards Institute
は長いので、ここから先、ANSIという略語を使います」という意味だ。

 スペルアウトしてから括弧で略語を示してはいけない。たとえば、"ANSI (American National Standards Institute)" のように示してはいけない。この表記は、「ANSIという略語の意味を知らないでしょ。教えてあげましょう。American National Standards Institute という意味です」という印象だ。

 略語を示したら、その後は略語を使う。上記の例なら、今後は、ANSIという言葉を使う。"American National Standards Institute"は使わない。略語を紹介して、その略語を使わないということはない。使わないなら、略語を紹介する意味がない。
 
 日本人の文章では、"ANSI (American National Standards Institute)"といのをよく見る。


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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