Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
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小論文の模範解答
 研修向けに小論文の課題と模範解答を作った。

 その小論文問題は、複数のグラフから、自己の考えを論理的に説明してもらうという内容だ。グラフは全部で7種。グラフの読み取りは、回答者の自由。内容も自由だ。問うのは書き方。論理的で分かりやすいか。

 この問題の模範解答を作成する上で注意したのは以下の点(各論のパラグラフだけ、総論のパラグラフは別)。
1.1パラグラフ/1トピックで書く
2.そのトピックは、パラグラフの先頭文(トピックセンテンス)に書く
3.トピックセンテンスは短く書く
4.トピックセンテンスだけで文章として成立する(ロジックが読み取れる)ように書く
5.ロジックが縦なら、トピックセンテンスは<AーB>、<BーC>のようにつながり、横なら、トピックセンテンスは<A,B>、<A>、<B>のように並ぶように書く

 私の作った解答例が以下。

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 国の借金が増え続け、財政破綻が心配されている。財政破綻を避けるには、社会保障費への対策が必要だ。財政を再建するには、消費税を増税して社会保障費に回すべきだ。また、社会保障の給付も制限すべきである。

 現在、日本の財政は破綻の危機に直面している。国の借金である国債残高は、平成29年度末で、約865兆円にも昇る(図4参照)。この額は、一般会計税収の15年分にも相当する。つまり、年間所得が580万円なのに、8,650万円の借金をしている計算だ。しかも、国債残高は年間30兆円ずつ増えている。つまり、8,650万円の借金をしているのに、借金を返済するどころか、さらに年間で300万円ずつ借金を増やしているのだ。このままでは早晩破綻する。

 財政を圧迫しているのは社会保障費だ。社会保障費は、国家予算の33.3%を占め、32兆円を超えている(図2参照)。この額は、一般会計税収(図3参照)の56%に匹敵する。しかも、この社会保障費は、毎年1兆円以上増え続けている(図1参照)。税金の無駄使いとして、よくやり玉に挙げられる公共投資は6兆円程度に過ぎない。つまり、公共投資の無駄遣いを無くしても、社会保障費の負担に対しては焼け石に水だ。

 膨れあがる社会保障費を捻出するには、歳入と歳出の両方で改革が必要だ。つまり、歳入を増やすために増税し、歳出を減らすために社会保障費の給付を削減するのだ。

 社会保障費向けの歳入を増やすには、消費税を増税するしかない。歳入である税収は主に、所得税、法人税、消費税で構成される。このうち、所得税と法人税は、先進各国と較べても妥当なレベルだ。この所得税と法人税を大幅に挙げるわけにはいかない。一方、消費税は、先進各国の20%前後と較べてるとかなり低い。仮に、消費税率を8%から10%に上げたとすれば、25%増だから、単純計算で4兆円の税収増加が見込める(図3参照)。社会保障費がピークを迎えるであろう10-20年後までに、段階的に消費税を増税すれば、社会保障費増加分のほとんどは、消費税で捻出できるだろう。

 消費税を増税すると、消費が冷え込むという恐れもあるが、影響は比較的小さく済むだろう。なぜなら、過去の消費税導入と2回の増税(3%→5%と5%→8%)で、景気が下落して所得税が減ったのは、3%から5%に増税した時だけだからだ(図6参照)。しかも、この時はバブル崩壊の後で、所得税が自然減少方向にあったのだ。現在の経済状況は、5%から8%に増税した時により近い。あるいは前回の増税時より、良い経済状況だ。消費税を増税しても影響は小さいだろう。

 一方、社会保障費向けの歳出を減らすには、給付を制限するしかない。社会保障費とは主に、年金、医療、介護にかかる費用だ。いずれも高齢化社会では避けようがない。年金向けの歳出を減らすために、国民年金の納付率を上げたり、医療向けの歳出を減らすために、喫煙率を下げる取り組みをしたりはしている。しかし、全体の額から見れば焼け石に水だ。目に見える歳出削減には給付を減らすしかないだろう。一部の高齢者に対しては、最低限の文化的な生活ができる程度まで、給付を下げざるを得なくなるかも知れない。

 社会保障費の給付を制限すると、高齢者に負担を強いることになるが、致し方ないだろう。確かに、現在高齢である方々が、今の豊かな日本を作ったのは疑いようがない。しかし、一方で、借金をしまくって、身の丈以上の生活をしてきたのも事実だ。日本を豊かにしたのだから、後は野となれ山となれでは、現役世代がたまったものではない。高齢者に負担を強いることで、高齢者の生活水準が下がるのは、仕方がないと言えるだろう。

 豊かな日本を、次の世代に引き継ぐためにも、財政破綻はなんとしても避けなければならない。早急に消費税を増税し、社会保障の給付を制限すべきである。

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電子メールのパラグラフは短い
 何度か、パラグラフは文だけなら4-8文で書くことを紹介してきました。しかし、電子メールの場合は、もう少し短いパラグラフでかまいません。

 電子メールのパラグラフは短くなりがちです。なぜなら、ディスプレイで読むことになる電子メールは、改行が少ないと読みにくいからです。ディスプレイで表示される文章は、一般的なワープロで書かれた文章に比べ行間が狭いです。行間が狭い分、読みにくいのです。行間を広げる設定ができるメールソフトもありますし、行間が広がるフォントもありますが、一般的ではありません。

 短いパラグラフで書く電子メールは、しっかり説明、説得するには不向きと考えてください。パラグラフが短いということは、パラグラフのトピックをサポートする文が少ないということです。つまり、データや具体例、詳細説明が少ないと言うことです。情報が少ないのですから、しっかりとして説明にはなりません。

 しっかり説明、説得するなら、ワープロで書いた文章を、メールに添付しましょう。ワープロで書けば、4-8文のパラグラフでも難なく読めます。電子メールは、しょせん簡易な通信手段です。簡易な文書向けと考えるべきです。
総論と各論では、パラグラフの書き方が異なる
 総論(=まとめ)と各論(詳細説明)では、パラグラフの書き方が異なる。このことを知らないと、おかしな文章を書きかねない。

 たとえば、以下のような文章で、1文目と2文目の間を改行するかどうか迷ったことはないだろうか?

例:
 〇〇には、以下の3つの利点がある。第一に、…(複数の文)
 第二に…(複数の文)
 第三に…(複数の文)

 迷ってしまう理由は、おそらく以下のようなことだろう。『改行すると、「〇〇には、以下の3つの利点がある」という、1文だけのパラグラフができてしまう。ここだけ極端に短いパラグラフはなんか変だ。しかし、改行しないと、「第二に」と「第三に」はパラグラフの先頭に来るのに、「第一に」だけが先頭に来なくなる。揃わないのもなんか変だ。』

 この場合、1文目と2文目の間は改行する。その結果、1文だけのパラグラフができてしまっても問題はない。なぜなら、「〇〇には、以下の3つの利点がある」は、下に続く3つのパラグラフを総括する総論だからである。

 総論のパラグラフは、1,2文でも構わない。なぜなら、まとめをしているのだから。まとめに詳しい説明はいらない。たとえば、「〇〇には、AとBがある」という1文でも、総論ならパラグラフになる。

 一方、各論のパラグラフは4-8文必要だ。なぜなら、そのパラグラフのトピックを論証しなければならないからだ。論証には、データや具体例、詳細説明が必要だ。1,2文では論証できない。

 総論と各論では、パラグラフの書き方が違うのだ。
詳しく説明するまでもないトピックは?
 1つのパラグラフは、4~8文で構成する。では、4~8文も使って説明するまでもないようなトピックはどうするのか?そのトピックは、パラグラフにはせずに、総論の背景で述べたり、他のパラグラフで従属情報的に潜り込ませるのである。

 4~8文使って説明するまでもないトピックは、パラグラフにしてはいけない。つまり、ロジックの構成単位にしてはいけない。1~2文で説明が十分なら、論証する必要のない当たり前の内容だ。当たり前のことはロジックの構成単位にはならない。

 このことを、以前書いた記事『「AだけどB」は1パラグラフか?』で説明しよう(詳細は下記の記事参照)。Aが当たり前なら、Aを論証する必要がないので、「AだけどB」は、Bを中心とした1パラグラフとなる。つまり、Aはロジックの構成単位にはならない。しかし、Aを論証する必要があるなら、AもBもパラグラフとなる。つまり、Aはロジックの構成単位になる。

 論証するまでもないトピックは、別の方法として、総論の背景として述べることもある。たとえば、前提条件(もっと具体的に言えばたとえば予算)である。無条件に決まっている前提条件があるなら、なぜその条件に従わなければならないかなどを説明する必要はない。総論の背景で、「今回は予算がいくらなので、」と簡単に述べておけば十分だ。パラグラフで説明する必要はない。

 かくして、各論のパラグラフは、すべて4~8文使って書くことになる。
パラグラフでは論証する
 日本人は「論証」という概念を、十分理解できていない。主張を論証するには、4~8文は必要だ。1つのトピックを1,2文で終わってしまったら論証できない、説得できない。

 1つのトピック、つまり1つのパラグラフは、4~8文で構成する。そのパラグラフで言わんとするトピックに対して、読み手に納得してもらうには、データや具体例、詳細説明が必要だ。これらの情報を丁寧に述べれば、どうしたって4~8文にはなる。言わんとするトピックを1,2文では説得できない。

 下図の文章で具体的に説明しよう。出典は、「Writing Academic English」(Alice Ohshima)という、アメリカの大学生向けアカデミックライティングの教科書から、日本語で言う小論文のサンプルである。

ModernTechnology.jpg

 この文章は、各論のパラグラフが長いのが分かる。全6つのパラグラフのうち、最初と最後は、総論と結論だ。総論と結論はまとめであって、論証するところではないので短い。各論は第2-5パラグラフ。最も短い第3パラグラフですら5文ある。各論は、各トピックを論証しないといけないので長くなる。

 ところが日本人は、論証という意識が希薄なので、1つのパラグラフが1,2文で終わってしまう。1,2文で終わるということはトピックを表明しただけである。そこには、データも具体例も詳細説明も書いていない。そんな説明で人を説得できるはずはない。

 この傾向が顕著に見られるのが、デメリットに対する反論だ。たとえば、「このノートパソコンは、ちょっと重いものの、ディスプレイが大きいので操作しやすいです」と「重い」というデメリットに反論したとしよう。この主張は、「ノートパソコンは、軽量でないとね」と思っている人を念頭に置いて反論している。「ノートパソコンは、軽量でないとね」と思っている人は、「ディスプレイが大きいので操作しやすい」の1文で納得するはずもない。なぜなら、軽ければ、ディスプレイは小さくなり、操作性が落ちることは知った上で、軽量を望んでいるのだから。

 デメリットに対する反論を、1,2文で終えてしまう人は、メリットがデメリットを上回ることを論証する気持ちが希薄なのだ。そんな文章では、人を説得はできない。


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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