Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
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電子メールのパラグラフは短い
 何度か、パラグラフは文だけなら4-8文で書くことを紹介してきました。しかし、電子メールの場合は、もう少し短いパラグラフでかまいません。

 電子メールのパラグラフは短くなりがちです。なぜなら、ディスプレイで読むことになる電子メールは、改行が少ないと読みにくいからです。ディスプレイで表示される文章は、一般的なワープロで書かれた文章に比べ行間が狭いです。行間が狭い分、読みにくいのです。行間を広げる設定ができるメールソフトもありますし、行間が広がるフォントもありますが、一般的ではありません。

 短いパラグラフで書く電子メールは、しっかり説明、説得するには不向きと考えてください。パラグラフが短いということは、パラグラフのトピックをサポートする文が少ないということです。つまり、データや具体例、詳細説明が少ないと言うことです。情報が少ないのですから、しっかりとして説明にはなりません。

 しっかり説明、説得するなら、ワープロで書いた文章を、メールに添付しましょう。ワープロで書けば、4-8文のパラグラフでも難なく読めます。電子メールは、しょせん簡易な通信手段です。簡易な文書向けと考えるべきです。
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総論と各論では、パラグラフの書き方が異なる
 総論(=まとめ)と各論(詳細説明)では、パラグラフの書き方が異なる。このことを知らないと、おかしな文章を書きかねない。

 たとえば、以下のような文章で、1文目と2文目の間を改行するかどうか迷ったことはないだろうか?

例:
 〇〇には、以下の3つの利点がある。第一に、…(複数の文)
 第二に…(複数の文)
 第三に…(複数の文)

 迷ってしまう理由は、おそらく以下のようなことだろう。『改行すると、「〇〇には、以下の3つの利点がある」という、1文だけのパラグラフができてしまう。ここだけ極端に短いパラグラフはなんか変だ。しかし、改行しないと、「第二に」と「第三に」はパラグラフの先頭に来るのに、「第一に」だけが先頭に来なくなる。揃わないのもなんか変だ。』

 この場合、1文目と2文目の間は改行する。その結果、1文だけのパラグラフができてしまっても問題はない。なぜなら、「〇〇には、以下の3つの利点がある」は、下に続く3つのパラグラフを総括する総論だからである。

 総論のパラグラフは、1,2文でも構わない。なぜなら、まとめをしているのだから。まとめに詳しい説明はいらない。たとえば、「〇〇には、AとBがある」という1文でも、総論ならパラグラフになる。

 一方、各論のパラグラフは4-8文必要だ。なぜなら、そのパラグラフのトピックを論証しなければならないからだ。論証には、データや具体例、詳細説明が必要だ。1,2文では論証できない。

 総論と各論では、パラグラフの書き方が違うのだ。
詳しく説明するまでもないトピックは?
 1つのパラグラフは、4~8文で構成する。では、4~8文も使って説明するまでもないようなトピックはどうするのか?そのトピックは、パラグラフにはせずに、総論の背景で述べたり、他のパラグラフで従属情報的に潜り込ませるのである。

 4~8文使って説明するまでもないトピックは、パラグラフにしてはいけない。つまり、ロジックの構成単位にしてはいけない。1~2文で説明が十分なら、論証する必要のない当たり前の内容だ。当たり前のことはロジックの構成単位にはならない。

 このことを、以前書いた記事『「AだけどB」は1パラグラフか?』で説明しよう(詳細は下記の記事参照)。Aが当たり前なら、Aを論証する必要がないので、「AだけどB」は、Bを中心とした1パラグラフとなる。つまり、Aはロジックの構成単位にはならない。しかし、Aを論証する必要があるなら、AもBもパラグラフとなる。つまり、Aはロジックの構成単位になる。

 論証するまでもないトピックは、別の方法として、総論の背景として述べることもある。たとえば、前提条件(もっと具体的に言えばたとえば予算)である。無条件に決まっている前提条件があるなら、なぜその条件に従わなければならないかなどを説明する必要はない。総論の背景で、「今回は予算がいくらなので、」と簡単に述べておけば十分だ。パラグラフで説明する必要はない。

 かくして、各論のパラグラフは、すべて4~8文使って書くことになる。
パラグラフでは論証する
 日本人は「論証」という概念を、十分理解できていない。主張を論証するには、4~8文は必要だ。1つのトピックを1,2文で終わってしまったら論証できない、説得できない。

 1つのトピック、つまり1つのパラグラフは、4~8文で構成する。そのパラグラフで言わんとするトピックに対して、読み手に納得してもらうには、データや具体例、詳細説明が必要だ。これらの情報を丁寧に述べれば、どうしたって4~8文にはなる。言わんとするトピックを1,2文では説得できない。

 下図の文章で具体的に説明しよう。出典は、「Writing Academic English」(Alice Ohshima)という、アメリカの大学生向けアカデミックライティングの教科書から、日本語で言う小論文のサンプルである。

ModernTechnology.jpg

 この文章は、各論のパラグラフが長いのが分かる。全6つのパラグラフのうち、最初と最後は、総論と結論だ。総論と結論はまとめであって、論証するところではないので短い。各論は第2-5パラグラフ。最も短い第3パラグラフですら5文ある。各論は、各トピックを論証しないといけないので長くなる。

 ところが日本人は、論証という意識が希薄なので、1つのパラグラフが1,2文で終わってしまう。1,2文で終わるということはトピックを表明しただけである。そこには、データも具体例も詳細説明も書いていない。そんな説明で人を説得できるはずはない。

 この傾向が顕著に見られるのが、デメリットに対する反論だ。たとえば、「このノートパソコンは、ちょっと重いものの、ディスプレイが大きいので操作しやすいです」と「重い」というデメリットに反論したとしよう。この主張は、「ノートパソコンは、軽量でないとね」と思っている人を念頭に置いて反論している。「ノートパソコンは、軽量でないとね」と思っている人は、「ディスプレイが大きいので操作しやすい」の1文で納得するはずもない。なぜなら、軽ければ、ディスプレイは小さくなり、操作性が落ちることは知った上で、軽量を望んでいるのだから。

 デメリットに対する反論を、1,2文で終えてしまう人は、メリットがデメリットを上回ることを論証する気持ちが希薄なのだ。そんな文章では、人を説得はできない。
パラグラフを論理的につなぐ
 パラグラフで文章を書くにあたり難しいのは、パラグラフとパラグラフを論理的につなぐことである。これが難しいのは、パラグラフの接続より、隣接している文の接続に目が行ってしまうからである。しかし、この接続ができないと、文章の論理性が大幅に下がる。

 パラグラフ間の接続の難しさを、「反事実的思考力」(大竹文雄
 https://note.mu/fohtake/n/n0591a20d8458)というネット記事から引用して説明しよう。大竹氏は、この記事の中で、「社会科学を学ぶ過程では、反事実的思考ができるように訓練を積む。しかし、そのような能力を身につけるのは、なかなか難しい。」と述べた後、次のように説明している。

---引用---
 「仮に、大学の授業料が全額税金で負担されて無償だったとしたら、大学教育授業料の負担のあり方や税金についてのあなたの価値観は今と異なっていただろうか」。この質問は、「オイコノミア」という経済学教養番組の収録で、若い一般の出演者が別の一般の人から受けた質問だった。この質問を受けた方は、うまく反事実的思考ができずに答えていた。そこで、「こういう条件だけを変えて考えてみて下さい」とヒントを出した。その議論を聞いていた番組の出演者である芸人で作家の又吉直樹さんが、「経験したことがないことを想像することは難しいですよね」と助け船を出してくれた。

 小説家でもある又吉さんは、人物の気持ちや行動を自分が経験したことがないことでも想像力で作り上げていくという作業を続けているので、その難しさをよく理解しているのだろう。また、お笑いのネタを考える上でも、仮にこのようなことを言えば、人々の予想と少しずれるので笑いが生じるはずだ、ということを常に考えているので、そうした能力が鍛えられているのだろう。よく人の気持ちを考えられる人になりなさい、という親や教師は言うけれど、自分がその立場だったらどう考えるか、ということは、反事実的思考そのものだ。
---引用---

 この2つのパラグラフが、論理的に接続されていない。前半のパラグラフのポイントは、反事実的思考の具体例の紹介だ。一方、後半のパラグラフは、又吉直樹さんに対するコメントになってしまっている。その結果、反事実的思考が難しいという全体の論旨から外れて論理性が失われている。

 この2つのパラグラフを論理的に接続するには、後半のパラグラフを「この例でいえば、」のように始めなければならない。つまり前のパラグラフのポイント(=先頭文)を受けて、次のパラグラフを始めるのだ。この接続ができると、論理的な展開になる。

 なぜ、この接続ができないかというと、書き手は後半のパラグラフを始めるときに、前のパラグラフの終わりを意識してしまうからだ。つまり、前のパラグラフの最後の方の文と、次のパラグラフの最初の文をつないでしまう。しかし、前のパラグラフの先頭に書いた、前のパラグラフのポイントを忘れているのだ。

 パラグラフの中なら、隣接する文と文をつなぐ。しかし、パラグラフ間は、隣接するパラグラフの先頭文をつなぐのだ。


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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