Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
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プレゼンテーションの改善 その2
 昨日、早稲田大学エクステンション講座「12時間で学ぶMBAエッセンス」をテーマに、2枚のスライドの問題点を指摘した。そこで、今日はその改善策を示す。

 まず、「人材マネイジメント」の定義を考え直す。思考のポイントは、昨日指摘したように「管理」と「戦略に適合した組織を構築すること」の関係だ。さらに、この定義が、この後に続く5つの視点や2つのアプローチとつながっていなければならないということだ。「人材マネイジメント」の定義と、その後に続く説明がばらばらでは論理性を欠く。

 そこで、「人材マネイジメント」の定義を「中長期の戦略を実現する力を有する社員を育成すること、および、その社員が力を発揮できる組織を構築すること」とした。まず、「管理」=「戦略に適合した組織を構築すること」ととらえた、なぜなら、昨日説明したように、そうとらえないと説明に無理が生じるからだ。次に、「管理」という抽象的な表現ではなく、「戦略に適合した組織を構築する」というより具体的な表現を使った。ちなみに「採用」は削除した。なぜなら、このあと「採用」の話はほとんど出てこないからだ。

 この「人材マネイジメント」の定義の中に、5つの視点と2つのアプローチにつながる内容を織り込んだ。社員の育成は、「仕事を進めていく過程ごとに」として、このあとの5つの視点につなげる。組織の構築は、「制度と感情の両面で」として、同じく2つのアプローチへとつなぐ。後ろの説明との明確な接続が論理性を生む。

 補足として、「人材マネイジメント」の注意点を加えておいた。この注意点は、授業ノートでメモした内容と、オリジナルのスライドに書かれていた内容だ。2つの注意点にも関係性を持たせてある。「労働市場の流動化や社会構造の変化も考慮」だけでは、何に対しての注意か分からないから。

 次のスライドの5つの視点を説明する上で大事なのは、この5つがモレもないダブりもない(MECE)であることを示すことだ。業務は、目標設定→業務遂行→成果評価→次の仕事というプロセスの繰り返しだ。そこで、先のスライドで述べたように「仕事を進めていく過程ごとに」に視点を設ければMECEとなる。ここに私生活を絡めれば、WLBも織り込める。5つの視点の右側には、考慮すべきポイントを、可能な限り並列感が出るよう示した。

 次のスライドの2つのアプローチの説明でも、大事なことはMECEであることを示すことだ。オリジナルのスライドのように、「組織設計と社員の動機付け」ではMECE感はまるでない。そこで、Hardware(制度)とSoftware(感情)とすることで、すこしはMECE感が出る。十分とは言えないが、オリジナルよりかなりましだ。

 ちなみに「人材マネイジメント」の歴史上、組織設計→動機付けという流れになっている。このことは、「ホーソンの実験」という話で、講義中に説明がある(授業ノートに書いてある)。そのこともおまけとして付け加えておいた。

 あとは、2つのアプローチの説明を揃える。つまり、箇条書きの大項目から小項目に行くに従って、両アプローチともブレークダウンする。オリジナルのスライドでは、「動議付け」という言葉が重複している。正しくブレークダウンすれば、このような重複は生じない。

 「人材マネイジメント」の定義と、5つの視点と2つのアプローチがつながっていることも明示的に示す。5つの視点と2つのアプローチのスライドでは、先頭で「〇〇するために」と、「人材マネイジメント」の定義をしたスライドで使用した言葉を使っている。スライド間の接続は、このように明示しなければならない。内容か読み取らせようとしても、読み取れない聴衆が必ずいる。

 このあと説明は、「まとめノート」のトライアルで使った「組織における重大3要素」へとつながるのだが、この接続が苦しい。つまり、「人材マネイジメント」の定義と、5つの視点と2つのアプローチはつながっているのだが、これに続けて「組織における重大3要素」を説明する流れが作れない。今のところ改善策も私の頭には浮かばない。

 論理的な説明なら、このあとは「人材マネイジメント」の方法を、5つの視点ごとに、2つのアプローチをはっきり意識して説明することになる。そうでないなら、何のために5つの視点や2つのアプローチを示したのか分からない。「人材マネイジメントには、5つの視点と2つのアプローチがあります。ところで、話は変わりますが人材マネイジメントでは」では、論理性もへったくれもない。

 しかし、実際の講義では、このあとの説明で、5つの視点も2つのアプローチも明示的に登場しない。やれやれ。

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プレゼンテーションの改善 その1
 先日、早稲田大学エクステンション講座「12時間で学ぶMBAエッセンス」をテーマに「まとめノート」作成のトライアルをしてみた。こうやって「まとめノート」を作成しようとすると、オリジナル講義の論理的な問題点がたくさん目に付く。そこで、今日は、この問題点を洗い出してみよう。

 ターゲットは、下記に示す2枚のスライド。「12時間で学ぶMBAエッセンス」の中から「人材マネイジメント」という科目における、最初の2枚だ。この2枚は、先日「まとめノート」のトライアルをした「組織とは」というスライドの直前に位置する。

<1枚目>

 まず、1文目にある人材マネイジメントの定義がダメだ。「人材マネイジメントとは…管理する」では、循環定義だ。循環定義とは、ある概念を定義するためにその概念自体(=定義しようとしている言葉)を用いることだ。「マネイジメント」=「管理」だろ。英語を日本語にしただけで循環している。そもそも、「人材マネイジメントとは…管理する」では、日本語になっていない。

 さらに、「採用」「育成」は分かるとして、「管理」がそもそどんな行為を指しているのか分からない。「管理」とは何かを考えていくと、すぐ下に「人材を採用・育成しつつ、戦略に適合した組織を構築する」とある。ということは、「管理」とは「戦略に適合した組織を構築する」ことか?もし、「管理」=「戦略に適合した組織を構築すること」なら、なぜ、同じことを繰り返しているのか?もし「管理」≠「戦略に適合した組織を構築すること」なら、この2つの文で整合が取れない。どちらにしても論理性に欠ける。

 また、「戦略に沿った組織設計と社員の動機付けを考える」も唐突で論理性に欠ける。ここに書かれた人材マネイジメントの定義から、なぜ、「戦略に沿った組織設計と社員の動機付けを考える」と言えるのか?根拠もなしに、「人材マネイジメントでは、組織設計と社員の動機付けを考える」と言われても、「はいそうですか」とは思えない。

 さらに、その後の「人材マネジメントを考える5つの視点」も唐突で論理性に欠ける。この5つの視点はどこから導き出されたのか?先に述べた「戦略に沿った組織設計と社員の動機付けを考える」と関係はあるのか?関係があるなら、その関係を示さなければならない。関係がないなら非論理的だ。

 また、この5つの視点はモレもなくダブりもない(MECE)と言えるのか?6つ目の視点はないのか?ないなら、なぜないと言えるのか?

<2枚目>
 この2つのアプローチも唐突だ。1枚目に述べた「戦略に沿った組織設計と社員の動機付けを考える」につながっていることは分かる。しかし、そもそも「戦略に沿った組織設計と社員の動機付けを考える」が唐突なだけに、2つのアプローチを説明されても、「この2つのアプローチが重要だ」とは思えない。

 また、この2つのアプローチはMECEと言えるのか?3つ目のアプローチはないのか?ないなら、なぜないと言えるのか?

 さらに、言葉の使い方もいい加減だ。1枚目では「目的」となっていたことが、2枚目では「目標」となっている。同じことを指していると思われるが、言葉を変えてはいけない。そもそも別科目で目的と目標は異なると学習している。言葉の使い方という意味では他にも、「戦略に沿った組織設計と社員の動機付けを考える」と言ったのに、2枚目のスライドは、「構造アプローチ」と「動機づけアプローチ」となっている。「戦略に沿った組織設計と社員の動機付けを考える」を受けて、「構造アプローチ」ではなく「組織設計アプローチ」とすべきだ。さらに、「動機づけアプローチ」を右にたどると、「欲求動機の高揚を考える」と、ただの繰り返しになっている。ここは、「構造アプローチ」の右の説明が「組織設計を考える」とあるように、「動機づけアプローチ」の右の説明は、「動機づけアプローチ」をブレークダウンしなければならない。

 わずか2枚のスライドだが、このように論理的に分析していくと、論理的な問題が山ほど見つかる。そこで改善だが、それは次回。

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PowerPointにおけるアニメーションの効果的な使い方(2)
 PowerPointをつかったプレゼンテーションで、アニメーションは、概略(ポイント)から詳細へと表示する。上から順に表示するのではない。

 たとえば、プレゼンテーションに使うポインタの紹介をするためのスライドを作ったとしよう(下図参照)。ポインタには、指示棒とレーザーポインタがある。その2つのポインタの長所と短所の紹介だ。
箇条書き後

 このスライドにアニメーションを設定するとき。上から順に表示させるのではない。つまり、指示棒の説明が終わった後、レーザーポインタの説明に移るのではない。

 このアニメーションは、概略から詳細へと表示する。つまり、「ポインタには、指示棒とレーザーポインタがある」とアニメーションしてから(下図参照)、指示棒の詳細説明、レーザーポインタの詳細説明と移るのだ。概略から詳細へと説明した方が分かりやすい。説明の全体像が先につかめるし、話の終わりも見えるから。
箇条書き前

 しかし、このアニメーションで説明する人はまずいない。なぜなら、PowerPointのアニメーションのデフォルトは、上から順に表示だから。そもそも、箇条書きをアニメーション表示するのに、概略から詳細へと表示できることを知らない人もいる。

 説明するときに、「〇〇にはAとBがあります。Aは、…。Bは、…。」と説明することはよくある。なぜ、PowerPointになったら、それをやらない。こういう説明をしている本は、自著以外で見たことはない。

PowerPointにおけるアニメーションの効果的な使い方
 プレゼンテーションの本で、読む価値のある本は少ない。たとえば、PowerPointを使ったプレゼンテーションで、アニメーションの基本説明ですらいい加減だ。

 PowerPointにおけるアニメーションの使い方を、きちんと論理立てて説明している本は少ない、ほぼない。「効果的に使うが、使いすぎない」ようなことは書いてある。しかし、どう使うのが効果的かは書いていない。何が使いすぎかも書いていない。そもそも、PowerPointを使ったプレゼンテーションの説明なのに、スライドの例もなく言葉だけの説明が多い。

 PowerPointにおけるアニメーションの効果的な使い方には3種類ある。(以下の説明は、実際のスライドを使いたいが、ブログという制約上、勘弁を願う)
 1.ステップ・バイ・ステップに見せるマスキング効果
 2.需要ポイントを目立たせる強調効果
 3.動作を伝えるイメージング効果

1.ステップ・バイ・ステップに見せるマスキング効果
 最もよく使う、箇条書きを順に表示するアニメーション。箇条書きは1項目ずつ説明に合わせて表示する。全部をいっぺんに表示してから1項目ずつ説明してはならない。全部をいっぺんに表示すれば、聴衆は全部を読もうとする。したがって、プレゼンターの説明は聞かない。話していないことは、見せない(=マスキングする)ことも大事だ。

2.需要ポイントを目立たせる強調効果
 強調したい部分を示す囲みなどを、後から表示するアニメーション。図や写真を大写しすると、大事なポイントが他のポイントに埋もれるときがある。そこで、大事な部分を枠で囲ったりすることで強調する。

3.動作を伝えるイメージング効果
 PDCAのサイクルなど、動きのあることを説明するときに使うアニメーション。サイクルの動き、右から左への動き、上から下への動き、この動きをアニメーションで見せることで、動きをイメージしやすくする。この使用法は、説明がステップ・バイ・ステップになるので、マスキング効果も兼ねている。上記の1と違うのは、マスキング効果より、動きをイメージさせることが中心にあることだ。

 上記の1-3に当てはまらないなら、多くの場合使いすぎのアニメーションと言えるだろう。スライドを切り替えるときの演出アニメーションは、その代表例だ。私は、かつて、派手な演出のアニメーションによって、失笑が生じたプレゼンテーションを見たことがある。まあ、それはそれで印象には残ったが(内容は覚えていない)。

 年配の方の中には、「アニメーションは邪道だ、意味がない」とおっしゃる人もいるが、そんなことはない。上述のように、説明していない内容は見せないとか、大事なことを強調するとかには必要なテクニックだ。アニメーション不要論を唱える方は、アニメーションを演出と考えているのだろう。アニメーションは演出ではなく、理解を助けるのに必要なのだ。
発信者と受信者は、持っている情報が違う
 私が講座で強調するのは、「発信者と受信者は、持っている情報が違う。これを意識しないと説明が分かりにくくなる」ということだ。代表例は、プレゼンテーションで、目次を最初に示したっきり、二度と示さないことだ。

 発信者は、最初からすべてを知っている。すべてを記憶した上で説明している。説明内容の大きな流れも記憶している。今、自分が何を説明していて、次に何を話すか、今が先とどうつながっているかも知っている。

 しかし、受信者は説明を受けたことを、短時間記憶するだけだ。説明内容の大きな流れは、説明をしてくれないならわからない。説明してくれても記憶はできない。説明者が、今、何を説明していているかは理解できても、次に何を話すか、今が先とどうつながっているかも知らない。

 発信者と受信者の持っている情報を区別できないから、プレゼンテーションで、目次を最初にだけ示す。プレゼンターは、目次を1回見せれば十分だ。なぜなら、その目次を記憶しているのだから。しかし、聴衆は目次を記憶できない。記憶できて20秒程度だ。だから、プレゼンテーションを聴いている間、ロジックの流れを理解できない。

 プレゼンテーションの目次は、目次項目が1つ進むたびに出し直すのだ。たとえ、そのプレゼンテーションが10分であっても。目次を出し直せば、聴衆は、プレゼンテーションのロジックの流れを再確認できる。今話したことが、全体の流れのどういう位置づけかも確認できる。これから話すことが、何で、全体とのつながりも理解できる。

 こういうことをちゃんと説明してくれるプレゼンテーションの本はほとんどない。


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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