Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
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「必要な情報だけを読むと、「文は、既知から未知の情報へと構成する」は矛盾するか?
 「ビジネス文章は、必要な情報だけを読むのだ。全部読んで、必要な情報を見つけるのではない」という指導と、「文は、既知から未知の情報へと構成する」は矛盾すると思うかも知れない。しかし、実は、飛ばし読みしても、すべての文は既知から未知に流れるのだ。

 必要な情報だけを選んで飛ばして読めば、既知から未知の流れが守られないような気がする。飛ばしたところは読んでいないのだ。その読んでいない情報が文頭に来たら、読み手からすれば未知な情報が文頭に来たことになる。しかし、書き手は、前に書いたのだから既知から未知を守っているのだ。「必要な情報だけを読む」と「既知から未知に書く」は、相反するように感じる。

 しかし、飛ばして読むとしても、飛ばす部分と読む部分ががあるのだ。まず、文章の最初、第一パラグラフ(下図の①)は読む。文章の最初を読まずに、真ん中から読む人はいない。次に、第二パラグラフの先頭文(下図の②)を読む。第一パラグラフを読んだ後、いきなり第三パラグラフに飛ぶ人もいない。さらに、あるパラグラフの中を読み進もうとするなら、上から順(下図の③)に読む。パラグラフの先頭文を読んだ後、いきなり三文目に飛ぶ人はいない。

 このように、読んであるはずの場所を考慮すると、飛ばし読みしても、すべての文は既知から未知に流れる。まず、総論は、その総論の中で既知から未知に流す(下図の①)。各論の要約文は、前のパラグラフの要約文と、あるいは総論と、既知から未知に流す(下図の②)。各論のパラグラフの中は、その中で既知から未知に流す(下図の③)。こうすれば、飛ばし読みしても、すべての文は既知から未知に流れる。

 そこまで考えて、ビジネス文章は書くのだ。
読む箇所は決まっている

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未知から既知に書いてしまう理由
 先日、「発信者と受信者は、持っている情報が違う。これを意識しないと説明が分かりにくくなる」という話をした。このことと、「既知から未知に書く」というライティングのルールはつながっている。

 多くの場合、人は無意識に「既知から未知に書く」。なぜなら、その流れが分かりやすいから。分かりやすい文章を書こうと思うと、自然と「既知から未知」の流れになる。

 しかし、「発信者と受信者は、持っている情報が違う」から、時に「未知から既知」に書いてしまう。書き手は、最初からすべてを知っている。だから、無意識の中では既知と未知の区別がつきにくい。未知の情報が文頭にあっても、発信者だけしか持っていない情報に騙されて、その文章でも分かりやすいと誤解してしまうのだ。

 無意識だと、「未知から既知」に書いてしまうので、「既知から未知に書く」というルールがある。つまり、文章を書くときは、文頭には必ず既知な情報があることを確認する。この作業は面倒なようだが、慣れれば逆に楽だ。何しろ、この流れを意識すれば文頭が決まるから、文章が早く書ける。

 「既知から未知」の流れを意識して文章を書き続けると、この流れがクセとなる。この流れに反した文章に過敏となる。未知の情報が文頭にあると、頭の中で鐘が鳴る。「カラン、カラン、変な文章だぞ」と。

 だから、私の書く文章は、すべて「既知から未知」にながれている(はずだ)。
談話の文法
 ライティングのルールに「既知から未知に書く」というのがある。しかし、このルールを日本語で説明した本は皆無だ。このルールを日本語で紹介されている本で、私の知る限り最も古いのが「談話の文法」(1978 久野暲)だ。

 「既知から未知に書く」とは、文頭には読み手が知っている情報を置き、読み手の知らない情報は文末に置いて文を構成することだ。久野暲氏は、「談話の文法」の中では、「旧から新へのインフォメーションの流れ」と述べている。この流れができると、文章の接続がよくなる。文章が読みやすくなるだけでなく、論理の飛躍も防止できる。文章作成上、きわめて有効なルールだ。

 しかし、このルールを紹介している本はほとんどない。もちろん、私の書いた本では紹介しているが、私以外の本で見出すことはまれだ。しっかり紹介している本として、「理系のための英文作法」(1994 杉原厚吉)がある。この本では、「古い情報を前に」として、20ページ以上にわたって紹介している。ただし、この本は英語の書き方について論じた本だ。日本語の書き方の本で、このルールを紹介している本はほとんどない。

 しかし、久野暲氏が、はるか昔(1978年)に紹介している。この本の中では、「文中の語順は、古いインフォメーションを表す要素から、新しいインフォメーションを表す要素へと進むのを原則とする」と述べている。その例として、この本では以下の英語を上げている。ただ、この本でも、例文は英語だ。
 〇 I gave the book to a boy.
 ✖ I gave a boy the book.
「the book」は、theが付いているので前に述べている「古いインフォメーション」だ。一方、「a boy」は「新しいインフォメーション」と言える。

 「談話の文法」は、他にも面白いことが多く書かれているので、国語に興味のある方は読んでおくことをお薦めする。たとえば、どの単語にも強調を入れずに、
 次郎ハ花子トボストン(ニ)行ッタ?
と質問した場合、返事として、
 ウン、ボストン(ニ)行ッタヨ。
は適切だが、
 ウン、花子ト行ッタヨ。
は不適切と述べている。

 「談話の文法」は、2000年に再出版されたようだ。ちょっと値が高い。旧版を古本で手に入れた方がいいかも。なお、手元にある旧版(1978年初版)には、古風にも、厚紙ケースに納められ、本にはパラフィン紙のカバーが付いている。


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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