FC2ブログ
Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
11 | 2018/12 | 01
S M T W T F S
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

神は細部に宿る
 「神は細部に宿る」"God is in the Details" 例で紹介しよう。

 以下は、大学生の学力低下に関する原因分析である(内容はフィクション)
1.高校生の自宅での学習時間が年々減りつつある。
2.大学入試の科目が減って、高校での学習範囲が狭い。
3.大学の単位が簡単に取れるので、入学後に勉強しない。

 この3つの「不揃い」を探してもらうと以下のような指摘が上がる。これらの指摘は、もちろん正しい。
・1,2は高校だが、3は大学(時間の不揃い)
・1,3は勉強量だが、2は勉強範囲(責任主体が学生か、学校か)
・1,2は数値データを示せるが、3は「単位が簡単に取れる」を数値では示せない(定量的か、定性的か)

 私が注目するのは、読点の有無だ。1には読点がないが、2,3には読点がある。このことは、1は2,3に比べて文の構成が違うことを示している。文の構成が違うなら、並列として不十分だ。

 読点の有無をヒントに紐解くと、2,3は原因を2段で分析しているのがわかる。これに比べると、1は分析が浅い。2,3と並列するには、1も「自宅での学習時間が年々減りつつある」原因まで分析しなければならない。そこまでそろえて、初めて正しい並列と言える。

 この違いは、論理性だけではなく、パラグラフの内容に大きな影響を及ぼす。なぜなら、実際の文章は、この3つの文がパラグラフのトピックセンテンスとなるからだ。トピックセンテンスが不十分だと、その後に続くサポートセンテンスに影響が出る。

 この3つの理由が、それぞれパラグラフなら、パラグラフの中に以下のような情報を書くことになるだろう。
1.自宅での学習時間が年々減りつつあることを示すデータ
2.大学入試の科目が減ったことを示すデータと、高校での学習範囲が狭くなったデータ。
3.単位が簡単に取れることを示すデータ(単位が簡単に取れることを証明できれば、大学生が勉強しないのは自明だ)

 その結果、1と3は、学生が勉強しないという同じ指摘なのに、パラグラフの内容が大きく異なってしまう。読点一つないがしろにはできない。

 「神は細部に宿る」
スポンサーサイト
箇条書きは、「等価」の印象を与えるので注意が必要
 箇条書きは読みやすいので、並列した情報を表示するとき、ビジネス文章にはよく使われます。しかし、箇条書きは、「並列した情報に大きな重要性の差が無い」という先入観を読み手に与えることがあるので注意が必要です。

 たとえば、以下のような書き出しで始まる文章を例に考えてみましょう。
『本モジュールは、A,B,Cの3つのサブモジュールで構成されています。
 A:(Aの簡単な説明)
 B:(Bの簡単な説明)
 C:(Cの簡単な説明)』

 このとき、読み手は以下のようなことを無意識に予想して、この後の文章を読むはずです。
・このあとは、A,B,Cの3つのサブモジュールを、より詳しく説明する
・A,B,Cをこの順番で説明する
・A,B,Cは、おおむね同じような位置づけ(重要性)である

 このとき、並列した情報に大きな差があると、読み手の予想が崩れます。たとえば、上記の例で、Aサブモジュールは、数ページに及ぶ説明が書かれていたとしましょう。一方、B,Cサブモジュールの説明が数行で終わっていたらどうでしょう。読み手は、「あれ?」という印象を持つはずです。

 読み手の予想を裏切らないためには、次のような説明が必要です。
『本モジュールは、3つのサブモジュール、特にAサブモジュールを中心にで構成されています。
 A:(Aの簡単な説明)
このメインであるAサブモジュール以外に、B,Cサブモジュールもあります。
 B:(Bの簡単な説明)
 C:(Cの簡単な説明)』

 箇条書きのような羅列は、読み手に「等価」の印象を与えることがあるので、注意が必要です。
箇条書きで注意すべきこと
 箇条書きは読みやすいのでビジネス文章にはよく使われます。簡単なようですが、結構注意すべきことも多いです。

1.公式性の低い文章に使う
 箇条書きは、ベタの文章に較べると、公式性に劣ります。したがって、公式性の高い文章、たとえば学会論文などには使いません。社内文書などに適した書き方です。学会論文などでは箇条書きが使えないので、ベタの文章中に番号、たとえば(1)のように、書き入れることがあります。

2.羅列できる情報だけを並べる
 箇条書きできるのは、羅列できる情報だけです。羅列できる情報とは、並列している情報か、ステップ・バイ・ステップのような情報です。普通の文章、たとえば、このパラグラフの文章を、読みやすいからと言って箇条書きしてはいけません。「この文章を箇条書きするわけはない」と思うかも知れませんが、そういう文章を書く人は結構います。

3.同じ種類の情報だけを並べる
 箇条書きできるのは、同じ種類の情報だけです。同じ種類、つまりメリットならメリットだけを箇条書きします。その箇条書きに、デメリットを書いてはいけません。これも当たり前のように感じますが、できない人は多いです。

4.同じ形に揃える
 箇条書きされている情報は、可能な限り形も揃えます。文なら文で、名詞で終わるなら名詞で終わるように統一します。ただし、若干の不揃いは許容すべきことも多いです。

5.数字と記号は使い分ける
 文頭を数字にするか、記号(●など)にするかには意味の差があります。数字を使うときは、序列がある場合か、後で参照したい場合です。ステップ・バイ・ステップのような情報は、序列があるので文頭を数字にします。この文章の見出しに番号を置いていいるのは、参照しやすくするためです。普通に並列するだけなら、記号を使います。記号を使った場合、重要な順に並べるのを基本とします。

6.記号は意味で統一する
 文頭を記号にするとき、同じ並列なら同じ記号を使います。たとえば、あるページで注意事項を●で箇条書きしたら、別のページの注意事項も●で箇条書きします。記号をむやみに変えてはいけません。

 ざっと、思いつくままにポイントを紹介しました。箇条書きひとつでも注意すべきことはたくさんあります。
重要な順、時間順、あとは…
 並列したら順位付けをする。順位付けで最も使われるのが重要な順。次いで、時間順。重要性と時間に差がないときは、テクニカル・ライティングなら、言葉の長さ順やアルファベット(あいうえお)順を使う。

 重要性と時間に差がないなら、短い方から長い方へと並べる。この方が発音しやすいから。"ladies and gentlemen"は、レディ・ファーストではない。短い単語を前にした方が言いやすいから。事実、"boys and girls"と、こちらは男が前だ。

 重要性と時間、長さに差がないなら、アルファベット順を使う。"boys and girls"はアルファベット順だ。日本語で「白黒」でも、英語なら"black and white"となる。ディズニーなら、"chip and dale"だ。

 しかし、ここであげた例は、カクテルパーティ効果ではないか?カクテルパーティ効果、つまり、自分に都合のよいサンプルだけを無意識に拾い上げる現象だ。だって、"Jack and Betty"や"Tom and Jerry"もある。

 ちなみに、日本語の「白黒」や「早慶」は何の順?まあ、「黒白」や「慶早」という人もいますが...
 知っているのと、できるのは違う
 知っているのと、できるのは違う。重要な順に並べるという簡単なことすら、できない人は多い。

 たとえば、「女性活躍推進セミナー」という催しに参加した報告書を書くケースを考えよう。たまたまネットで見つけた催しを例に使う。カリキュラムが下図のようになっている。(https://www.sendenkaigi.com/…/sa…/03240957_5510b68768414.pdf を参考)
WS000008.jpg

 このセミナーの参加報告書を書くとき、ほとんどの人は、聴講した5人の話を、この順番で説明するだろう。その順番で書くのが楽だから。セミナーのパンフには、その順番にカリキュラムが載っている。自分のノートにもその順番でメモが書いてある。

 なぜ、重要な順に並べ直さないのか。読み手は、自社の参考になる事例を知りたいはずだ。報告者が聴講した順に、報告を読む意味はない。報告の順とパンフの順が一致しなくても、報告書の最初に「参考になる順に」と断っておけば問題ない。そもそも、読み手は、報告書に添付されているパンフなど読まない(忙しいから)。

 重要な順に並べるという、誰もが知っていることですら、意外と難しい。


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

最新記事

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム