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Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
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並列したら順位付け、でもできない
「並列したら、順位付け。基本は重要な順」は、誰もが知っているライティングのルールだ。しかし、これが意外とできない。知っていてもできない代表例である。

 なぜできないかというと、人は作業した順に報告したくなるからだ。作業した順とは、ノートや資料に書いてある順だ。この順に報告書を書くのが楽なのだ。何も考えずに、ノートや資料を見ながら、やったことをやった順に思い出しつつまとめればよい。並べ替えるという面倒なことをせずにすむ。

 しかし、作業は重要な順よりは作業効率がよくなる順を優先することが多い。作業には無駄な時間をかけたくない。だから、重要性より作業効率を優先する。たとえば、複数箇所でデータを採取するなら、移動時間が短くなる順に回るだろう。複数の実験をするなら、実験装置が空いていた順位やることもあるだろう。

 だからノートに書いた順(作業した順)に報告書をまとめるとおかしなことになる。読み手から見れば、何の意味も無い順に並んでいるのだ。知りたい順には書かれていないことになる。

 誰もが絶対できない代表例は、複数のプレゼンターによるセミナーの受講報告書だ。この報告書は、誰もが受講した順に報告書を書く。受講した順に書くのが楽だからだ。しかし、どんな順に受講したかは読み手には興味が無い。参考になった順に並べ替えるべきだろう。しかし、並べ替えられる人はまずいない。
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神は細部に宿る
 「神は細部に宿る」"God is in the Details" 例で紹介しよう。

 以下は、大学生の学力低下に関する原因分析である(内容はフィクション)
1.高校生の自宅での学習時間が年々減りつつある。
2.大学入試の科目が減って、高校での学習範囲が狭い。
3.大学の単位が簡単に取れるので、入学後に勉強しない。

 この3つの「不揃い」を探してもらうと以下のような指摘が上がる。これらの指摘は、もちろん正しい。
・1,2は高校だが、3は大学(時間の不揃い)
・1,3は勉強量だが、2は勉強範囲(責任主体が学生か、学校か)
・1,2は数値データを示せるが、3は「単位が簡単に取れる」を数値では示せない(定量的か、定性的か)

 私が注目するのは、読点の有無だ。1には読点がないが、2,3には読点がある。このことは、1は2,3に比べて文の構成が違うことを示している。文の構成が違うなら、並列として不十分だ。

 読点の有無をヒントに紐解くと、2,3は原因を2段で分析しているのがわかる。これに比べると、1は分析が浅い。2,3と並列するには、1も「自宅での学習時間が年々減りつつある」原因まで分析しなければならない。そこまでそろえて、初めて正しい並列と言える。

 この違いは、論理性だけではなく、パラグラフの内容に大きな影響を及ぼす。なぜなら、実際の文章は、この3つの文がパラグラフのトピックセンテンスとなるからだ。トピックセンテンスが不十分だと、その後に続くサポートセンテンスに影響が出る。

 この3つの理由が、それぞれパラグラフなら、パラグラフの中に以下のような情報を書くことになるだろう。
1.自宅での学習時間が年々減りつつあることを示すデータ
2.大学入試の科目が減ったことを示すデータと、高校での学習範囲が狭くなったデータ。
3.単位が簡単に取れることを示すデータ(単位が簡単に取れることを証明できれば、大学生が勉強しないのは自明だ)

 その結果、1と3は、学生が勉強しないという同じ指摘なのに、パラグラフの内容が大きく異なってしまう。読点一つないがしろにはできない。

 「神は細部に宿る」
箇条書きは、「等価」の印象を与えるので注意が必要
 箇条書きは読みやすいので、並列した情報を表示するとき、ビジネス文章にはよく使われます。しかし、箇条書きは、「並列した情報に大きな重要性の差が無い」という先入観を読み手に与えることがあるので注意が必要です。

 たとえば、以下のような書き出しで始まる文章を例に考えてみましょう。
『本モジュールは、A,B,Cの3つのサブモジュールで構成されています。
 A:(Aの簡単な説明)
 B:(Bの簡単な説明)
 C:(Cの簡単な説明)』

 このとき、読み手は以下のようなことを無意識に予想して、この後の文章を読むはずです。
・このあとは、A,B,Cの3つのサブモジュールを、より詳しく説明する
・A,B,Cをこの順番で説明する
・A,B,Cは、おおむね同じような位置づけ(重要性)である

 このとき、並列した情報に大きな差があると、読み手の予想が崩れます。たとえば、上記の例で、Aサブモジュールは、数ページに及ぶ説明が書かれていたとしましょう。一方、B,Cサブモジュールの説明が数行で終わっていたらどうでしょう。読み手は、「あれ?」という印象を持つはずです。

 読み手の予想を裏切らないためには、次のような説明が必要です。
『本モジュールは、3つのサブモジュール、特にAサブモジュールを中心にで構成されています。
 A:(Aの簡単な説明)
このメインであるAサブモジュール以外に、B,Cサブモジュールもあります。
 B:(Bの簡単な説明)
 C:(Cの簡単な説明)』

 箇条書きのような羅列は、読み手に「等価」の印象を与えることがあるので、注意が必要です。
箇条書きで注意すべきこと
 箇条書きは読みやすいのでビジネス文章にはよく使われます。簡単なようですが、結構注意すべきことも多いです。

1.公式性の低い文章に使う
 箇条書きは、ベタの文章に較べると、公式性に劣ります。したがって、公式性の高い文章、たとえば学会論文などには使いません。社内文書などに適した書き方です。学会論文などでは箇条書きが使えないので、ベタの文章中に番号、たとえば(1)のように、書き入れることがあります。

2.羅列できる情報だけを並べる
 箇条書きできるのは、羅列できる情報だけです。羅列できる情報とは、並列している情報か、ステップ・バイ・ステップのような情報です。普通の文章、たとえば、このパラグラフの文章を、読みやすいからと言って箇条書きしてはいけません。「この文章を箇条書きするわけはない」と思うかも知れませんが、そういう文章を書く人は結構います。

3.同じ種類の情報だけを並べる
 箇条書きできるのは、同じ種類の情報だけです。同じ種類、つまりメリットならメリットだけを箇条書きします。その箇条書きに、デメリットを書いてはいけません。これも当たり前のように感じますが、できない人は多いです。

4.同じ形に揃える
 箇条書きされている情報は、可能な限り形も揃えます。文なら文で、名詞で終わるなら名詞で終わるように統一します。ただし、若干の不揃いは許容すべきことも多いです。

5.数字と記号は使い分ける
 文頭を数字にするか、記号(●など)にするかには意味の差があります。数字を使うときは、序列がある場合か、後で参照したい場合です。ステップ・バイ・ステップのような情報は、序列があるので文頭を数字にします。この文章の見出しに番号を置いていいるのは、参照しやすくするためです。普通に並列するだけなら、記号を使います。記号を使った場合、重要な順に並べるのを基本とします。

6.記号は意味で統一する
 文頭を記号にするとき、同じ並列なら同じ記号を使います。たとえば、あるページで注意事項を●で箇条書きしたら、別のページの注意事項も●で箇条書きします。記号をむやみに変えてはいけません。

 ざっと、思いつくままにポイントを紹介しました。箇条書きひとつでも注意すべきことはたくさんあります。
重要な順、時間順、あとは…
 並列したら順位付けをする。順位付けで最も使われるのが重要な順。次いで、時間順。重要性と時間に差がないときは、テクニカル・ライティングなら、言葉の長さ順やアルファベット(あいうえお)順を使う。

 重要性と時間に差がないなら、短い方から長い方へと並べる。この方が発音しやすいから。"ladies and gentlemen"は、レディ・ファーストではない。短い単語を前にした方が言いやすいから。事実、"boys and girls"と、こちらは男が前だ。

 重要性と時間、長さに差がないなら、アルファベット順を使う。"boys and girls"はアルファベット順だ。日本語で「白黒」でも、英語なら"black and white"となる。ディズニーなら、"chip and dale"だ。

 しかし、ここであげた例は、カクテルパーティ効果ではないか?カクテルパーティ効果、つまり、自分に都合のよいサンプルだけを無意識に拾い上げる現象だ。だって、"Jack and Betty"や"Tom and Jerry"もある。

 ちなみに、日本語の「白黒」や「早慶」は何の順?まあ、「黒白」や「慶早」という人もいますが...


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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