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Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
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受動態か能動態かではなく、何を中心に述べるかだ
 以前にも書きましたが、受動態か能動態かは、何を中心に述べるかで決まるのです。「受動態は避ける」は古い理論です。

 たとえば、次の2つの文を比べてみましょう。
1.山田一郎氏は、1980年にABC社を設立しました。
2.ABC社は、1980年に山田一郎氏によって設立されました。

 この2つの文では、中心が異なります。1は、山田一郎氏について説明しているのです。2は、ABC社について説明しているのです。受動態か能動態かではありません。何について説明したかによって態は変わるのです。

 確かに、「受動態は避ける」と昔は言われていました。30年ほど前はこの考えが主流でした。しかし、今では、態は文の中心によって変わるが、テクニカル・ライティングの主流です。

 今だに「受動態は避ける」と主張してしまうのは、思考せずに鵜呑みにしているのです。「昔読んだ本に書いてあったから」という理由だけで、考えることなく鵜呑みにしているのです。なぜ、「受動態は避ける」べきかを、自分では考えていないのです。

 思考していない例を以下に示します。出典は『入門テクニカルライティング』(IT委員会 著)です。

---引用---
●受動文より能動文を
一般に受動文より、能動文の方が説得力があります。それゆえ、なるべく能動文を使用すべきです。
たとえば、
[PrintScrn]キーが押されると、画面表示がプリンタに出力される。
という文章は、次のように書換た方がよいでしょう。[PrintScrn]キーを押すと、画面表示がプリンタに出力される。
---引用---

 「受動文より、能動文の方が説得力があります」って根拠は?なぜ、受動文より能動文の方が説得力があるのでしょう。私は、受動文より能動文の方が説得力があるなんて感じたことはありません。根拠が根拠になっていないのは、思考できない人の特徴です。

 この書き換えの例文は、なぜ、文の後半も能動態にしないのでしょう。文の前半は能動態ですが、文の後半は受動態です。自分が示した例文が、自分の主張と矛盾していることに気づいていません。

 書き換えの例文のほうが説得力があるのでしょうか?2つの文をどう感じるかは別として、説得力があるとは感じられません。このことは、根拠を述べるまでもなく、多くの方が同様の感想を持つでしょう。ならば、「受動文より、能動文の方が説得力があります」という根拠が。根拠になっていないことを自己証明してしまっています。

 この2つの文は、文の中心に何を置くかで、両方ともアリです。「[PrintScrn]キーが押されると、画面表示がプリンタに出力される」は、ソフトウェア開発者が中心に置かれているのです。一方、「[PrintScrn]キーを押すと、画面表示がプリンタに出力される。」は、ソフトウェアユーザーが中心に置かれているのです。どちらが良いか悪いかではなく、誰に向かって書いているかです。
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「られる」の受身と自発の混同に注意
 日本語の「られる」には4つの意味がある。このうち、自発を受け身と誤解してはいけない。このミス、結構多い。

 「られる」の意味を、goo辞書では、受け身、可能、自発、尊敬の4つと説明している。
---引用---
1 受け身の意を表す。「乗客が次々と助けられた」「花壇の中にごみを捨てられて困った」
2 可能の意を表す。「僕でも組み立てられる模型」「彼が落第するとは、とても考えられなかった」
3 自発の意を表す。自然に…となる。「性格が性格だから将来が案じられる」
4 軽い尊敬の意を表す。「先生が入って来られた」→らる →る →れる
---引用---

 「と考えられる」は自発(上記3)であって、受け身(上記1)ではない。「自然とそう考える」、「そう考えて自然」という意味だ。この混同は多い。文章の書き方を論じた本ですら、「受動態を避ける」という趣旨でこの表現が登場することがある。

 受け身と自発の混同から生まれたのが、"It is considered that"という英語と推測できる。「と考えられる」を受け身と考えて、直訳しているのだ。だから、"It is considered that"と書くのは、ほぼ日本人だけだ。似た表現に”It is said that”(といわれている)があるので、ここから類似表現として生じたのかもしれない。しかし、「といわれている」は自発ではなく受け身だ。

 ちなにみ、「と考えられる」に直接対応する英語はないかもしれない。この表現は、婉曲的で、日本文化的だ。英語なら、"We conclude that"とか、"This results indicate that"とかの直接的な表現が多い。自信がなくて婉曲にしたいなら、助動詞(mayなど)を使う。
正しい日本語で書くためのツール
 テクニカル・ライティングの基本は、3つのCと言われます。3Cとは、Correct, Clear, Concise。
  Correct: 文法的に正しい文
  Clear:  誰が読んでも同じ理解の文
  Concise: 簡潔な表現の文

 このうち、Correctについては、ある程度、ソフトウェアでチェック可能です。私は、次の2つを活用しています。
  1.日本語変換ソフトのATOKの『共同通信社 記者ハンドブック辞書』オプション
  2.文章校正支援ソフトのJust Right!

日本語変換ソフトのATOKの『共同通信社 記者ハンドブック辞書』オプション
 『共同通信社 記者ハンドブック辞書』は、共同通信社内部の表記ルールをまとめています。たとえば、平仮名と漢字のどちらで書くべき単語かとか、正確なカタカナ表記などです。本来は、共同通信社のローカルルールでしたが、今では出版界のデファクトスタンダードになっています。この辞書は、日本語変換ソフトのATOK用のオプション辞書として購入できます。これがあると、変換するときに、問題点を指摘してくれます(下図)。
handbook.jpg

文章校正支援ソフトのJust Right!
 このソフトは、誤字・誤用、不適切な表現や、表記ゆれなどをチェックしてくれます。書いた後にチェックするソフトです。まあ、MS-Wordにデフォルトで付属する文書チェック機能の高度版という感じ。便利だけど、ちょっと高価。


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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