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Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
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自分の文章のチェック方法
 自分の文章が論理的で分かりやすいかどうかは、以下の方法でチェックできます。
 1.後に登場する見出しをすべて使って、簡単な総括文章が作れるか
 2.各パラグラフは、4-8文で構成されているか
 3.各パラグラフの先頭文でロジックは通るか
 4.各パラグラフの先頭文は、既知から未知に流れるか

1.
 正しく書かれた文章では、後に登場する見出しをすべて使って、簡単な総括文章が作れるはずです。見出しは、その文章のキーワード、つまり重要な論理構成単位です。論理構成単位を集めれば、文章の総括が出来るはずです。見出しを集めて短い総括的な文章が作れないなら、論理構成が不十分な証拠です。

2.
 正しく書かれた文章では、各パラグラフは、4-8文で構成されているはずです。説得力のある文章では、すべてのトピックを、データや具体例などで説明、論証しなければなりません。しっかりと説明、論証しようとすれば、4-8文程度は必要です。1つのパラグラフが1,2文だけで終わってしまうなら、説得できない、分かりにくい文章である証拠です。

3.
 正しく書かれた文章では、各パラグラフの先頭文でロジックは通るはずです。1つのパラグラフは、1つのトピック、1つの論理構成単位で構成されています。そのトピックを適切に1文目で表明できれば、1文目だけ読んで、すべての論理構成単位が拾えるはずです。すべての論理構成単位が拾えれば、それだけで文章として成立する、ロジックが通るはずです。各パラグラフの先頭文でロジックは通らないなら、1パラグラフは1トピックの原則が守られていないか、先頭文でトピックを述べていない文章である証拠です。

4.
 正しく書かれた文章では、各パラグラフの先頭文は、既知から未知に流れるはずです。その文章が横に並ぶロジックなら、最初にA,B,Cとポイントを述べてからA,B,Cを詳しく説明します。たとえば、この文章がまさにその形です。一方、その文章が縦につながっているなら、A-B、B-C、C-Dのように流れます。たとえば、以下のようにパラグラフの先頭文が流れます。
 ・プラントXで不純物混入という問題が生じている
 ・不純物が混入した原因は、バルブAに問題がある
 ・そこで、バルブAに〇〇という対策を取った
 ・この対策の結果、不純物混入率は基準値以下に収まるようになった
各パラグラフの先頭文が、既知から未知に流れないなら、説明が不十分、ロジックが飛んでいる文章である証拠です。

 ちなみに、上記4条件を満たす文章を見ることは、まずありません。
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習慣は論理に優先する
「習慣は論理に優先する」 このことは、講座の最初で簡単に説明しておく。実社会を生き抜くのに必要な考え方だ。

 書き方が習慣で決まっていれば、その習慣に従うしかない。仮にその習慣が理不尽で納得できないものであっても、論理では覆せない。「この書類はこのフォーマットで提出しする」と決まっているなら、そのフォーマットが理不尽で納得できないものであっても、従うしかない。「これが正しい」と自分一人で異なる書き方をしても、受け取ってもらえないだけだ。

 だから、「もし上司がおかしな書き方をごり押ししてきたら、『習慣は論理に優先する』と考えて受け入れろ」と指導する。そのおかしな書き方は、その上司の管理下というきわめて狭い領域での習慣なのだ。この上司に、「世界標準の書き方は、」と言ってみたところで意味はない。正しい書き方をしても、上司からの承認は得られない。

 あるいは、アカデミックな世界で、おかしな文章が氾濫していても、「それが習慣だ」と考えることにしている。「世界標準の書き方は、」などと喧嘩は売らない。喧嘩を売って論破することは簡単だが、こちらに何のメリットもない。ただ疲れるだけでむなしい。
隆車に歯向かう蟷螂の斧
 隆車に歯向かう蟷螂の斧。ライティングを指導していると、この言葉を実感して心が折れそうになります。その例をご紹介しましょう。

 ずいぶん昔、学校の先生が集まるような勉強会で、小論文の書き方を紹介したことがあります。テクニカル・ライティングをベースに、論理的な小論文の書き方を紹介しました。その実例として、欧米のアカデミック・ライティングの教科書に載っている例を使いながら説明しました。

 この講座の中で、2つの小論文を読み比べてもらいました。1つは、アカデミック・ライティングの教科書に載っている例を和訳した文章。もう一つは、日本で「小論文の神様」と言われる方の著作に掲載されていたよい例です。読み比べてもらうときには、両方の文章とも、出典は伝えませんでした。出典を示さなかったのは、バイアスのない状態で読んでもらいたかったからです。

 読み比べてもらった結果、アカデミック・ライティングの教科書に載っている例が圧倒的的な支持を得ました。「小論文の神様」のよい例は、罵詈雑言の嵐です。バイアスのない状態で読んでもらえれば、学校の先生なので、よいか悪いかは判断が付くのです。出典を明らかにすると、どよめきが起こりました。「こんな文章をよい文章として崇めていたのか」と。

 この講座に感化されたある先生が、自分の学校で、正しい文章を指導しようとしたそうです。どのような指導をされたのかはわかりません。しかし、従来の書き方は間違っていて、正しい書き方があることを伝えようとしたようです。

 しかし、同僚の先生から、反論が相次いであきらめたとのことです。「小論文の神様」の信者が多いのです。正しいかどうかではありません。多数派(隆車)に勝てないのです。少数の正しい意見(蟷螂=カマキリ)は、多数の間違った意見(隆車)に押しつぶされてしまいます。

 結果、今でも日本人の書く小論文は、非論理的で分かりにくです。欧米との距離は全く縮まっていません。


テクニカル・ライティングを知らなくても…
 2日連続で同じ質問があった。「テクニカル・ライティングに基づく書き方は、テクニカル・ライティングを知らないと効果はないのではないか」という質問である。しかし、そんなことはない。

 この質問が出る背景には、「正しく書けた文章は、パラグラフの先頭文だけでロジックが通る」という説明を頭に置いているのだろう。確かに、パラグラフを正しく使って書けば、パラグラフの先頭文だけでロジックが通る。だから、パラグラフの先頭文だけを読み、必要なパラグラフだけを読むという読み方ができる。しかし、「正しく書けた文章は、パラグラフの先頭文だけでロジックが通る」ことを知らないなら、この読み方はできない。

 しかし、忙しいビジネスパーソンは、文章を効率よく読もうと思っている。文章のすべての部分を、隅から隅までじっくり読んだりはしない。短時間で必要な情報をほしがっている。だから、無駄なところを飛ばして読むのは、ごく普通の行為だ。

 テクニカル・ライティングを知らない人でも、効率よく読もうとすれば、読むべきところは決まっているのだ。まず、文章の最初のパートを読む。いきなり真ん中から読み出す人はいない。飛ばすにしてもランダムには飛ばさない。見出しやキーワードを頼りに飛ばす。さらに、パラグラフの先頭文は読む。パラグラフの真ん中から読み出す人はいない。

 ということは、テクニカル・ライティングに基づけば、テクニカル・ライティングを知らない人でも効率よく情報を入手できる。テクニカル・ライティングに基づけば、文章の最初のパートには、重要な情報がまとめて書いてある。パラグラフの先頭文にはキーワードが含まれているし、そのパラグラフのポイントが書いてある。

 テクニカル・ライティングは、人間の認知心理に基づいているのだ。だから、テクニカル・ライティングを知らなくても、効率よく伝達できるのだ。
最初の10年が人生を決める
 "The most important period of researchers is the first ten years."  ある大手建機会社の研究所の応接室に飾られていた色紙にあった言葉だ。(訳:研究者にとって最も大切な期間は、最初の10年である)

 この言葉に、私は共感する。ただ、研究者に限らず、ビジネスパーソン全員に言えることだと、私は思う。私がフリーランスで生活していけるだけのスキル(その基本)を身につけたのは、社会人になって10年以内だ。ライティングも、論理的思考も、プレゼンテーションも、30代半ばまでは必死に勉強した。基本はこの時期までにできあがっている。

 最初の10年頑張ってしまえば、あとは流れに身を任せるだけだ。特別何もしなくても、周りから依頼だの仕事だのが舞い込む。それをこなしていると、さらに知識やスキルが高まる。そうなると、さらに依頼だの仕事だのが舞い込む。好循環が生まれる。

 最初の10年が、その後の人生を大きく左右する。


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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