Logical Skill の深い話
Logical Skill (特にLogical Writing) について、著書(たとえば、「論理が伝わる世界標準の書く技術」講談社)には書かなかった、より深い話を紹介します。
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Google翻訳での注意点
 最近、私は英語を指導するとき、日本語をGoogle翻訳で英語に直し、その英語を修正するような指導を取り入れている(それだけではないが)。

 Google翻訳で少しでも英文作成の時間が短縮できれば、それに越したことはない。Google翻訳、昔の自動翻訳と異なり、かなり精度が上がっている。しかも無料だ。これをビジネスに使わない手はない。

 しかし、Google翻訳では不十分なことも多いので、そこを指導する。具体的には、いかのようなポイントだ。
 ・時制の誤り(過去形と現在完了形)
 ・主語の選択の誤り
 ・書き言葉向けの表現への修正

 Google翻訳で、もう一つ大事なことは、日本語を正しく書くことだ。日本語では普通に使う表現でも、実はAIでは理解しきれない表現がある。また、日本語が冗長なら、英語も冗長になる。

 たとえば、以下の日本語と、Google翻訳で作成された英語を考えてみよう。
元の日本語:
「この装置は、赤外線センサーが内蔵されていて、障害物を認識できます。」
Google翻訳の英語
「This unit has an infrared sensor built in, and it can recognize obstacles.」

 Google翻訳は、日本語を正しく読み取れていない。「赤外線センサー内蔵」と「障害物を認識」は、andで接続する情報ではない。前者は手段で、後者は行為だ。手段と行為は、等位(and)接続できない。しかし、日本語では、こういう意味を込めたような表現をよく使う。

 Google翻訳で正しい英語を出すためには、日本語も明確に書かなければならない。先の例でいえば、以下のような日本語なら、そこそこの英語が出てくる。
元の日本語:
「この装置は、内蔵の赤外線センサーを使って、障害物を認識できます。」
Google翻訳の英語
「This unit can recognize obstacles by using built-in infrared sensor.」

 結局、科学が進歩しても、日本語の書けない人は、英語も書けないのだ。
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ノートの取り方
 昨年の秋からここまで、15回の講演で33時間の講義を受講して、ノートを1冊書きつぶした。1時間平均で2.5ページになる。基本的には、一番前の中央に座り、「鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さ」でノートをとる。

 私が「鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さ」という表現を知ったのは、宇佐美寛氏の「大学の授業」という本だ。

---引用---
 一見、よくまとまっていると見える要約、まとめ、スローガンは要らない。そんなものはノートに書かなくてもいい。帰宅してノートを整理する時に書きこめば十分だ。具体的で面白い事実、目を低く(視線を低く) するとはじめて見えるような細かい事実、飾らないくだけた言葉……そういう類いの非インテリ的な事柄をノートするのだ。
 そういう目の低い「低級」なことを書くのだから、相当な量を書くことになる。相当な速度でノートをとる。鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さだ。ボールペンの場合は、インクが油性で引火するおそれがある。教室には消火器を置く。…… といった速さだ。
---引用---

 私が、「鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さ」でノートを取り始めたのは、約40年前の高校生時代だ。先に紹介した本に出合うずっと前。あるとき、高校の先生の話すことを片っ端からノートにとってみようと思ってやってみた。このノートをとると、定期テストの点数がグンとよくなったのを覚えている。

 ちなみに、「インクが油性で引火するおそれがある」のは困るので(笑)、私は万年筆を3種類使い分けている。
 ・黒インク:講師の述べたことを記す
 ・青インク:受講生が述べたことを記す
 ・赤インク:自分が感じたことを記す

 書き洩らさないために、略語や記号を多用する。たとえば、頻出するキーワードは略語化する。
 ・スモールステップ  → SS
 ・即時フィードバック → SFB
他にも以下のような記号を使う。
 ・増える or 高まる → ↑(逆もあり)
 ・良い/悪い   → O/X

 宇佐美寛氏は「大学の授業」で、ノートの効果を次のようにも述べている。

---引用---
 自分でノートをとるのは、緊張するためにとるのだ。ノートをとるためには、どうしても話の内容を頭の中で整理しなければならない。内容の構造を考え、どこが大事かを判断しないわけにはいかない。この過程が頭のためになる。考えながら聞く…… これで受身のテープレコーダーのような頭にならずにすむ。
---引用---

 偉そうなことを言ったが、高校時代から40年間、私自身がこういうノートを取り続けてきたわけではない。正直、大学生以降ずっと、怠惰に授業を受けてきた。このノートの取り方を思い出したのは、自らが研修講師として人に指導するようになってからだ。なにしろ、企業研修の受講者のほとんどは、全くノートを取らない。その状態を目にして思い出したのだった。
ノートを取る理由
 早稻田大学エクステンションセンターの「教える技術」(向後千春教授)の全4回に参加した。いつものように、「鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さ」でノートを取る(下図)。ノートを取ることについては以前にも書いたが、また記しておこう。

 ノートを取る理由は2つある。
1.その場でしか得られない情報を記録に残す
2.緊張し、集中して講義を聴く

1.
 ノートには、その場でしか得られない細かな情報を書く。その代表が具体例だ。抽象的な言葉で分かった気になってはいけない。具体例やデータがあるからこそ理解できるのだ。具体例は、著作や配付資料には載っていないので、ノートに取るのだ。神は細部に宿るのだ。

 向後先生が話す、テニスの例こそノートに取るのだ。向後先生はテニスが好きなので、講義の中で、テニスに例えた話が出てくる。テニスの話は雑談ではない。そういう具体的な話が理解を深めるのだ。

 ノートには、まとめやキーワードを書くのではない。そんなことは配付資料や著作に載っている。必要なら、著作を読めばよい。汚い字で書かれたノートを見る必要は無い。ノートにまとめを書こうとするから、ノートに書くことがないのだ。

 具体例など細かな情報をノートに取るので、「鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さ」で書く。何が理解を深める情報かは、その場では分からないので、とりあえず可能な限りノートに書く。話したこと全部をノートには取れないので、取捨選択は必要だ。しかし、全部をノートに取る気合いでペンを走らせる。

2.
 「鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さ」で書くと、緊張し、集中して講義を聴くことになる。一言も漏らすまいと思うので、一瞬たりとも油断はできない。1.5時間の授業なら、1時間を過ぎたあたりで頭が痛くなる。受講後は、「面白かった」ではダメだ。「疲れた」が正しい。

 緊張し、集中して講義を聴くと、疑問がいろいろ湧いてくる。疑問が湧くのは、理解が深まっている証拠だ。理解できなければ、疑問も生じない。湧いた疑問も、ノートに書いておく。

 と、偉そうなこと書いたが、頭で描いていることと現実にできていることは違う。向後先生が、「自分は、フェデラーのフォームで打っているつもり」とおっしゃったのと同じだ。後で自分のノートを見直すと、まだまだ修行が足りないと思う。
スキル研修の目的
 スキル研修は何のためにするのか?スキルを身につけるためではない。目的は2つある。

 まず、スキル研修を受けたからといって、ビジネスに役に立つスキルが身につくことはない。1,2日学習をして、ビジネスで武器になるスキルが身につくはずはない。役に立つスキルはそんな簡単なものではない。1,2日で役に立つスキルが身につくなら、世の中はスパービジネスパーソンばかりだ。

 スキルを身につけようと思えば、1,000時間ぐらいの努力が必要だ。このことは、スキルを指導している人たちでは、よく言われることだ。NHKのラジオ英会話でも知られる杉田敏氏は、「例えば時間なら2000時間。TOEICにしても英会話にしても、これくらいはかけないと効果は期待できないとさまざまな人がいっています。」と言っている。英語を公用語にした楽天では、社会人が英語習得に必要な時間を1,000時間と考え、移行期間を2年と設定した。

 スキル研修の第一の目的は、そのスキルに1,000時間の努力をする価値があるかの判断をすることだ。意味のないスキルに1,000時間を費やすわけにもいかない。役に立つと確信できるからこそ、1,000時間を費やす意味がある。また、1,000時間費やすモチベーションがわく。

 スキル研修の第二の目的は、習得までの時間の短縮だ。試行錯誤するから1,000時間が必要なのだ。研修によって、最短距離がわかれば時間を短縮できる。まあ、それでも500時間ぐらいは必要だが。
読売新聞社説の解析(5)
 食品ロスに関する、読売新聞の社説(2018.01.09)の分析、5回目。前回書き直した文章を解説をする。解説の都合上、パラグラフに番号を付けた。また、各論のパラグラフでは、先頭文をゴシック表示した。

 文章全体は、総論-各論-結論で構成する。書き直した文章では、第1パラグラフが総論で、第2-8パラグラフが各論、第9パラグラフが結論だ。最初と最後で、言いたいことを強調する。だから、総論と結論で内容をかぶらせる。

 各論は、1論理構成単位を1パラグラフとし、7パラグラフぐらいまでで構成する。論理構成単位とレイアウト上の固まりが対応していることが大事だ。論理構成単位も人間の把握しきれる7ぐらいまでにする。7つぐらいまでの論理構成単位が、はっきり視覚的に見えるので、論理構成も把握しやすくなる。論理構成単位が7を超え始めたら、文章を階層構造化することを検討する。

 各論のパラグラフでは、そのパラグラフのトピックを1文目(トピックセンテンス)で述べる。このとき、トピックセンテンスは、論理構成が正しく伝わる範囲で短く述べる。短く述べるから、そのパラグラフのトピックが頭にすっと入る。1文目が長いと、それだけで論理構成が伝わるにくくなる。

 また、各トピックセンテンスだけ読んで、論理構成が分かるように書く。つまり、トピックセンテンスだけで文章として成立するように書く。1論理構成単位を1パラグラフに割り当て、そのパラグラフのトピックが1文目のトピックセンテンスで正しくまとめられていれば、トピックセンテンスだけで、すべての論理構成単位が拾える。だからトピックセンテンスだけ読んで文章として成立する。

 さらに、各トピックセンテンスだけで既知から未知に流れなければならない。各トピックセンテンスだけで文章として成立するなら、各トピックセンテンスどうしは既知から未知につながっているはずだ。もし、既知から未知につながっていないなら、「文章として成立する」と思っているのは書き手だけかも知れない。

 各論のパラグラフは、4-8文を目安に書く。パラグラフで述べたトピックに納得感を持ってもらうには、どうしても詳しい説明や具体例がいる。1,2文では説得できない。たとえば、『「もったいない」という日本人の美徳』について述べたら、日本人がいかに「もったいない」という気持ちを大切にしているかを具体例などで示すのだ。また、対策を述べたら、その対策を詳しく具体的に説明するのだ。オリジナルの文章のように、「少なくとも手つかずで捨てる食品を減らすような消費行動を、一人一人が心がけたい。」の1文で終わってはいけない。

 情報量とトピックの重要性とのバランスも考慮する。重要なトピックはより詳しく、重要性の低いトピックは説明が少なくても良い。たとえば、日本人の美徳と経済的なロスでは、前者を重要としているので説明量に差がある。これはあくまで目安に過ぎない。しかし、重要性を無視した、極端な情報量の差は、論理性を疑われかねない。

 他にもいろいろなことに注意しながら書くのだが、今回はここまで。

食品ロス書き直し

読売新聞社説の解析(4)
 食品ロスに関する、読売新聞の社説(2018.01.09)の分析、4回目。前回検討した論理構成で書き直しをする。

 前回検討した論理構成を、1構成ユニットを1パラグラフに展開する。そこに、総括する総論を最初に、まとめを最後につけると、以下のようになる。細かい解説は次回に。

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 本来食べられる商品が廃棄される「食品ロス」は、日本人の美徳に反するし、社会全体の損失ともなる。無駄の削減には、消費者の「もったいない」という意識と、食品製造業・小売店の商習慣の改革が必要だ。

 家庭や食品製造業・小売店、飲食店での「食品ロス」が問題視されている。食べ忘れ、売れ残り、返品、食べ残しなどによって、多くの食品が破棄されている。国内の食品ロスは、年間約592万トンと推計される(平成26年 農林水産省の調べ)。毎日1人あたり茶わん1杯分の食品が捨てられている計算だ。

 食品ロスは、「もったいない」という日本人の美徳に反する。日本人は昔から、食べ物に対する感謝の意から、無駄にすることを「もったいない」と嫌ってきた。この感謝は、命を捧げてくれた動植物に対してはもちろん、料理になるまでに関わったすべての人の労働に対してだ。いくら裕福だからといって、食べ物を粗末に扱うのは、下品な行為と感じる人は多いはずだ。

 また、食品ロスは、経済的な損失でもある。無駄な廃棄はコストを上昇させるので、企業の経営を圧迫する。あるいは小売価格の上昇を招く。無駄な食品加工、輸送、販売でエネルギーの浪費にもつながってしまう。

 食品ロスの最大の要因は、消費者の食べ残しや食べ忘れだ。家庭内での食べ残しや食べ忘れによる廃棄だけでも、食品ロス全体の48%にもなる。おいしく食べられる期間の賞味期限を、安全に食べられる期間の消費期限と混同しての廃棄も多い。さらに飲食店での食品ロス(全体の20%)の多くは、消費者の食べ残しだ。宴会での食べ残しは、よく見る光景となってしまった。

 次に大きな要因となるのが、食品製造業・小売店での「3分の1ルール」による返品や廃棄だ。「3分の1ルール」とは、製造から賞味期限までの期間の3分の1を過ぎると、食品製造会社や卸売業者は小売店に納品できないという、加工食品での商習慣だ。まだ食べられる商品が、廃棄を余儀なくされる。売り場でも、賞味期限まで一定期間を切った商品は撤去される。

 そこで、消費者による食品ロスを減らすために、「もったいない」という美徳をもっとアピールすべきだ。たとえば、公共広告機構のCMを使うのも一つだ。一粒も残さずに食べきったご飯茶碗や、骨だけ残してきれいに食べた魚などを放映するだけでも効果は高いだろう。こういった食べ方を見て「意地汚い」と思ったりはしない。むしろ「自分もそうありたい」と思う人が多いはずだ。

 また、食品製造業・小売店でによる食品ロスを減らすために、業界に残る「3分の1ルール」を見直すべきだ。ここ数年、一部の大手小売りチェーンなどでは、3分の1ルールの見直しが始まっている。保存性の高い菓子や飲料について、納品期限を「賞味期限までの期間の2分の1」に延ばすものだ。農林水産、経済産業両省も昨年5月、海外に比べても厳しい3分の1ルールの緩和を業界に要請した。対象品目の拡大を含めて取り組みを加速してほしい。

 手つかずで捨てる食品を減らすよう、消費者と食品製造業・小売店の両方で努力したい。豊かになっても、「もったいない」という美徳は捨てたくはない。
読売新聞社説の解析(3)
 食品ロスに関する、読売新聞の社説(2018.01.09)の分析、3回目。書き直しを考える。そのために、まずは論理構成を整理する。

 論理構成を考える上で大事なのは、論理構成単位を7ぐらいまでに抑えることだ。論理構成単位が10もあったら、人間は頭で把握しきれない。人間の短期メモリーは7±2しかないのだ。論理構成単位が7を超え始めたら、階層構造化すべきだ。だから、階層のない文章を、社説のように細切れで説明してはいけない。

 また、論理構成単位は、縦か横でつながっていなければならない。縦でも横でもないなら無関係だ。無関係な話が突然登場すれば論理性が下がる。論理構成単位が縦か横でつながっていれば、論理構成はブロック図のようになる。

 論理構成単位を7つまで、縦か横でつなぐのだから、縦も横も3-4が限界だ。つまり、大きな論理の流れ(縦)を3前後で作る。その一部を3前後の横に展開する。全部で7つ程度に納める。

 以上のようなことを考えながら論理構成すると、例えば以下のようになる。大きくは「現状-問題ー原因-対策」という4つが縦につながっている。そのうち、「問題」、「原因」、「対策」は、それぞれ横に2つ展開している。合計で7つだ。

 ここで気をつけるべきは、「問題」と「対策」の対応だ。離れているから忘れてしまいがちだ。その結果、「問題」と関係の無い「対策」を述べてしまう。今回の読売新聞の社説では、食品ロスを経済的な観点から述べていたのに、最後に「宴会での食べ残しを減らす」という対応しないことを述べてしまっている。

 さて、そんなことを考えながら、書き直した結果は次回に。
食品ロス論理構成

読売新聞社説の解析(2)
 昨日に続き、読売新聞の社説(2018.01.09)を分析する。昨日は主にライティング的な視点だったので、今日は論理的な視点から。

 この記事で、私が最も違和感を感じたのは、「食品ロスの半分近くは、家庭から出ている実態がある」という文だ。食品を最もロスしているのは家庭であることが最後になって述べられている。なお、食品ロスの比率は、下のグラフ(農林水産省のH26のデータを参考に作成)を参考にしてほしい。

 なぜ、家庭に対する対策はほぼ述べず、製造元や卸に対する対策を詳しく述べる?食品ロスを減らすなら、まず、家庭でのロスを減らさなければならないだろう。食品ロスの比率の少ない製造元や卸に対する対策は意味があるのか?製造元や卸における食品ロスの比率を示していないのは、意図的なようにも感じる。

 家庭ではなく製造元や卸に対する対策を述べたのは、最も簡単に効果が上がるからだろう。家庭で食品ロスを減らすよう、家庭外から強制するのは難しい。確実で現実的な解決策は、私には思いつかない。家庭に較べて製造元や卸なら、政府などから通達は可能だ。まずは、簡単で効果の上がる対策からということかと思う。

 であるなら、そう述べておくべきだ。前半では、あたかも「3分の1ルール」を見直すことが、とても有効な手法であるように述べいる。しかし、最後になって、最も大きな食品ロスには手つかず。これでは、読み手を馬鹿にしているようだ。

 「賞味期限の表示を「年月」に切り替える動き」は話がそれている。それまでは、「3分の1ルール」の話をしていたのだ。「3分の1ルール」が、消費者の「鮮度志向」を元にしていることから、「鮮度志向」つながりで、別の話を持ち出している。「3分の1ルールの見直しとともに、賞味期限の表示を…」のように、第2の対策として述べるべきだろう。

 「宴会の最初の30分、最後の10分は着席して食べよう」は意味があるのか?確かに、食品ロスは減る。しかし、積極的に食べたいわけではない料理を、無駄にしないために食べることに意味はあるのか?この行為は、最初に述べた「貴重な資源の浪費」、「企業の経営を圧迫」、「小売価格の上昇」のどれにも対応しない。あえて言えば、「もったいない」という価値観だ。論理ではない。

 食品ロスを論じるとき、「もったいない」という価値観を避けては通れまい。経済だけで論じるのは難しく感じる。特に家庭や飲食産業における顧客(=個人)に対して、「貴重な資源の浪費」、「企業の経営を圧迫」、「小売価格の上昇」を訴えても、食品ロスが減るとは思えない。個人に訴えるには、「もったいない」という価値観の美徳ではなかろうか。


食品ロス

読売新聞社説の解析(1)
 久しぶりに、ロジカルライティングの観点で、文章を分析しよう。対象は、本日(2018.01.09)の読売新聞社説(最後に掲載)。数回にわたる分析の1回目。

 第3段落で、食品ロスによる「資源の浪費」、「経営の圧迫」、「小売価格の上昇」を指摘している。
--- 引用開始 ---
「貴重な資源の浪費であり、企業の経営を圧迫する側面もある。コストがかさむ分、小売価格の上昇を招きかねない。」
--- 引用終了 ---

 この3つが並列なら、なぜ、「資源の浪費」と「経営の圧迫」を1文でつなげ、「小売価格の上昇」は独立した1文なのか?並列なら一般に重要な順だ。重要な2つの文をつなげれば、ともにボケる。最も重要性の低い「小売価格の上昇」は1文なので強調される。「資源の浪費」が1文で、「経営の圧迫」と「小売価格の上昇」がつながって1文なら理解できる。

 この3つは並列ではなく、「経営の圧迫」の理由が「小売価格の上昇」と読むなら、さらにおかしなことになる。「小売価格の上昇」を理由としたいなら、誤解を生まぬよう、「なぜなら」のような接続詞が必要だ。さらに、なぜ、重要性の高い「資源の浪費」は理由を述べず、重要性の低い「経営の圧迫」についてだけ、次の文で補足するのか?

 1文目が、「貴重な資源の浪費であることは言うまでも無く、企業の経営を圧迫する」ならライティング的には理解できる。この場合、「資源の浪費」と「経営の圧迫」は並立ではなくなる。書き手が「経営の圧迫」にフォーカスを置いていることが伝わる。

 しかし、「貴重な資源の浪費であることは言うまでも無く」としても、私は論理的に納得できない。私には、食品ロスが、深刻な「資源の浪費」には思えないからだ。まず、食品ロスを減らしても、その食品が飢えた人々に回るわけではない。となると、この「資源の浪費」とは、食品の原材料を作ったり、食品に加工したり、輸送したりするときの「資源の浪費」だろう。確かに、「資源の浪費」には違いないが、社説で取り上げるほどの膨大な浪費だろうか。

 そこで、わたしなら「もったいないという気持ちは言うまでも無く」とする。この表現なら、「経営の圧迫」にフォーカスを置きつつ、「もったいない」を論証する必要もなくなる。多くの人が、食品ロスを「もったいない」と感じているはずだ。皆が「そう言える」と思っていることは論証する必要が無い。さらに、「もったいない」は価値観なので、論証には向かない。

 論理的な文章を書くときは、1文たりとも油断してはいけない。この文章のように、何気なく「り、」で文をつなげば、ろくに考えずに文章を書いたことがすぐにばれてしまう。

------ 原文 -------
食品ロス削減 過度な「鮮度志向」見直したい

読売新聞 2018年1月9日6時0分

 本来食べられる商品が廃棄される「食品ロス」は、社会全体の損失となる。無駄の削減には、企業と消費者の双方で意識改革が欠かせない。

 売れ残りや返品、食べ残しなどによる国内の食品ロスは、年間約620万トンと推計される。毎日1人あたり茶わん1杯分の食品が捨てられている計算だ。

 貴重な資源の浪費であり、企業の経営を圧迫する側面もある。コストがかさむ分、小売価格の上昇を招きかねない。

 大きな要因とされるのが、加工食品の商慣習である「3分の1ルール」が存続していることだ。

 製造から賞味期限までの期間の3分の1を過ぎると、メーカーや卸売業者は小売店に納品できない。まだ食べられる商品が、廃棄を余儀なくされる仕組みだ。売り場でも、賞味期限まで一定期間を切った商品は撤去される。

 小売業者は消費者の「鮮度志向」を理由に挙げる。しかし、適切な商品知識を普及させることこそ、業界には求められよう。

 賞味期限は、傷みやすい食品に表示される消費期限とは異なる。おいしく食べられる期間のことであり、直ちに捨てなければならない日付というわけではない。

 ここ数年、一部の大手小売りチェーンなどでは、3分の1ルールの見直しが始まっている。保存性の高い菓子や飲料について、納品期限を「賞味期限までの期間の2分の1」に延ばすものだ。

 卸からメーカーへの返品や廃棄が減る成果が報告されている。

 農林水産、経済産業両省も昨年5月、海外に比べても厳しい3分の1ルールの緩和を業界に要請した。まだまだ全体には浸透していない。対象品目の拡大を含めて取り組みを加速してほしい。

 メーカー側の努力も要る。需給を見極めた的確な生産計画や、容器の高機能化などによる賞味期限の延長が課題となっている。

 日付単位の賞味期限の表示を「年月」に切り替える動きがみられる。1日でも新しい商品を求めがちな業界や消費者の意識を改める契機になるのではないか。

 外食は大量の食べ残しが問題だ。各地の自治体で「宴会の最初の30分、最後の10分は着席して食べよう」といった呼びかけが始まっている。ゴミ量削減に少なからぬ効果があるという。

 食品ロスの半分近くは、家庭から出ている実態がある。

 少なくとも手つかずで捨てる食品を減らすような消費行動を、一人一人が心がけたい。
印象の良い表現に直す
 technical writingとは別に、business writingという分野がある。technical writingとは、論理的でわかりやすい説明をするための書き方だ。一方、business writingとは、ビジネスをスムーズに遂行しやすくするための書き方だ。

 business writingでは、印象の良い表現に直すということを学ぶ。印象の悪い情報も、表現次第で、中立になったり、良い情報にすり替わったりもする。たとえば、督促状やクレームレターを、悪い印象を与えずに、どう書けばよいかとかだ。

 簡単な例を紹介しよう。

悪い例:コストを押し上げ、ビジネスをロストしています。
良い例:定価を押し上げ、お客様にご迷惑をおかけしています

悪い例:6/10までにお支払いいただかないと、支払い信用に傷が付きます
良い例:6/10までにお支払いいただければ、高い支払い信用を維持できます

悪い例:あなたの経験では、このポジションには不十分です
良い例:あなたの経験に見合う適切なポジションがありません

悪い例:もう連絡しないでください
良い例:必要があれば、こちらからご連絡します

悪い例:コスト削減のため、使い捨てをやめて、再利用可能なものにしました
良い例:地球環境保護のため、使い捨てをやめて、再利用可能なものにしました
日本語は、英語と比べて、情報の流れが作りにくい
 日本語と英語を比べた場合、英語の方が情報の流れが作りやすい言語です。そのため、英語ではスッと流れる文章が、日本語ではややわかりにくくなることがあります。

 たとえば、次の文を考えてみましょう。
「当社は、業界で20年間トップに君臨し、世界的名声のあるA社を、ついに追い抜いた。」

 この文は、途中まで、当社が「業界で20年間トップに君臨し、世界的名声のある」かのように読めてしまいます、「A社を、」を読んで、はじめて、「業界で20年間トップに君臨し、世界的名声のある」がA社の説明とわかります。ちなみに、「当社は、業界で20年間トップに君臨してきた」とは読めません。なぜなら、「A社を、ついに追い抜いた」と矛盾するからです。

 英語なら、「当社は、ついにA社を追い抜いた。」と書いてから、関係代名詞を使ってA社を後ろから説明すればよいのです。読んでいくはしから理解できて、日本語のように、読み進んではじめて構造がわかるということはありません。

 しかし、だからといって、オリジナルの文を2つの文にしてはいけません。なぜなら、2つの文にすると、一方はA社が主語の文章になるからです。この文は、当社の説明ですから、主語は当社でなければならないのです。
英語の婉曲表現
英語にも婉曲表現はあります。ただ、日本語とは異なるので、婉曲と理解できない人が多いのです。

 たとえば、以下の英文を考えてみましょう。
If the articles are delivered later than the end of February, we may have to refuse them.
(訳:記事が3月以降に届いたときは、拝受できません)

 日本人が英語を書くと、後半が以下のようになる場合が多いです。実際に、そういう意味ですから。
we will refuse them.

 この"may have to"が婉曲表現です。

 まず、助動詞"may"が婉曲的な意味を持ちます。"may"は、50%以下の確率を表す助動詞です。一方、"will"なら99%を意味します。"may"という確率の低い助動詞を使うことで、ほぼ言い切りの"will"より当たりが柔らかくなります。(だからといって、残りの50%に賭けてみようなどと思ってはいけません)

 つぎに、"have to"も婉曲的な意味を持ちます。正しく日本語訳すれば、「~せざるを得ません」です。"have to"には「他人の都合により」というニュアンスがあります。つまり、「私は受け取っても良いのですが、他の人に迷惑が掛かるので、お断りせざるを得ません」という意味になります。

 このように、英語においても、教養ある人間なら、NOを言うときには配慮するものです。

文章を書くとき、日本語と英語で差はない
 文章を書くうえで、日本語と英語で大きな差を感じることはありません。時々、おかしな説明を聞くことがあるので、誤解を解いておきましょう。

誤解:「英語は文頭に主語と動詞がある。だから、文章も結論から述べる」

 根拠が根拠になっていません。「文」の構成と、「文章」の構成は別物です。英語圏で結論を先頭に置く文章をよく見るのは、そう教育されているからです。英語圏でも、意識しなければ、結論が最後に登場します。実際、結論が最後に来る説明をよく見ます。

誤解:「英語は論理的な説明に向いている」

 論理的であるかは言語と関係ありません。英語だと論理的に説明できる根拠がわかりません。英語を使うから論理的考え、説明できるのではありません。論理的に説明する教育が熱心なのが英語圏なのです。通常、欧米では大学一年生の時に、論理的に書くことを一年かけて学びます。日本に、同様のシステムのある大学は数える程度です。

誤解:「英語だとYES/NOなど、意見を明確に言える」

 これも言語と関係ありません。日本語でも明確に言えます。単に、日本人は婉曲的な表現を好むというだけのことです。

 ちなみに、「英語圏ではYES/NOをはっきり言う」は誤解です。YESは、はっきり言いますが、NOは、はっきり言いません。NOをはっきり言えば、敵対したり、ビジネスをロストしたりするからです。
 I disagree with you.
なんて、教養なある人は言いません。
 I have another opinion.
と言ったりします。
クリスマスの挨拶
Happy Holidays!

ビジネスでの挨拶状では、"Merry Christmas"は使わなくなりました。キリスト教徒ばかりではないので。

よくある間違い1
誤:X'mas
正:Xmas

よくある間違い2
誤:I wish your Merry Christmas.
正:I wish you a Merry Christmas.
〇と×の意味
 新幹線のトイレで見た注意表示。複数の言語で書かれていた。でも、〇が正しいことを示し、Xが間違いを示すのは日本の文化だ。

 ちなみにアメリカなら、XはNGを示すが、〇はGoodを示さない。〇はoffやemptyの意味だ。だから電源スイッチのoffに〇の表示がある。Goodを示すのは✓マークだ。
 まして△や◎は国際的には意味がない。

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最初に概略を述べない人
 昨日、「多くの本で、章や節の最初で概略が述べていない」という趣旨のことを述べた。最初に概略を述べない人の主張は、だいたい以下の二つだ。
 1.後ろを読めばわかることを先に述べる必要はない
 2.先に概略を述べれば、読み手が興味を失う
しかし、違う!

 後ろを読めばわかることを先に述べる必要はある。先に述べてあれば分かりやすいからだ。概略を知ってから詳細を読んだ方が分かりやすい。このことは、道順を説明する際、以下の説明のどちらが分かりやすいかを考えればよい。
 1.市役所までの道順を説明します。市役所はあっちの方向に歩いて10分です。角を3回曲がります。まず、この道をまっすぐ行って、…
 2.市役所までの道順を説明します。まず、この道をまっすぐ行って、…

 後ろを読めばわかることを先に述べる必要は、もう一つある。先に述べてあれば、先を読む価値があるかがわかるからだ。読む価値がない内容であることを、後ろを読めばわかるのでは困るのだ。後ろ読んでから、読む価値がないことがわかる本は、時間泥棒だ。

 先に概略を述べれば、読み手が興味を持つのだ。概略を読んで価値が高いと判断できれば、詳しい内容を知りたくなる。興味深い内容を、概略だけで満足することはない。この代表例が論文だ。論文は最初のアブストラクトで重要な情報を示す。「先に概略を述べれば、読み手が興味を失う」のは、文学のような読んで楽しむ文章だ。
章だけではなく節でも総論で始める
 海保博之著「こうすればわかりやすい表現になる」では、「各章の最初に、章内の節、小見出しの目次を入れ、さらに概要を入れた」と述べている。著者自ら、概略から詳細へと述べた方が分かりやすいと、この本でも述べているからだ。

 しかし、多くの本は、その章の最初で、概略を述べていない。自ら、「概略から詳細へと述べた方が分かりやすい」と述べていても。これでは、自分の主張を、自ら否定しているのに近い。

 章では概略を述べていても、節では述べていないことも多い。海保氏の本もそうだ。章では述べて、節では述べなくてよい理由は書かれていない。主張に一貫性がない。

 節でも概略が書いてある数少ない本の一つが、三島浩著「技術者・学生のためのテクニカルライティング」である。ほぼすべての章と節で、概略から始まっている。

 概略から始まっていても、私から見れば不十分な概略が多い。多くの場合、その章や節のテーマを述べている。読み手が知りたいのはテーマではない。その章や節のポイントだ。なぜ、ポイントを出し惜しみするのか?結局無駄な情報を読まねばならなくなるので、時間の浪費となる。
小論文の分析
 小論文は、論理的な文章を書く練習に効果的だという話の続き。市販されている小論文の書き方の本を見れば、非論理的な文章のサンプルを簡単にみつけられる。

 最後に引用した文章は、小論文の書き方の本に掲載されている模範解答例だ。ちなみに、著者は「小論文の神様」と崇められる、業界では有名人だ。

 4つのパラグラフでできた文章だが、各論である第2、3パラグラフを注目すると、ロジックができていない。2つのパラグラフの先頭文(本来、トピックセンテンス)では、ロジックがわからない。
 「確かに、日本ほど独自の文化が保持されている国は多くない。」
 「文化というものは、ほとんどが混合によってできている。」

 パラグラフの中まで丁寧に読んでもロジックがわかりにくい。最大の問題は、「独自」と「特殊」という言葉を、筆者の中で使い分けているが、読み手に正確に伝わっていないことだ。おそらく、筆者は「特殊」=他に類例を見ない「独自」性と考えているのだろう。しかし、説明がないのでわからない。ちなみに、広辞苑によると、「独自」と「特殊」の定義は以下のようで、大差はない。
「独自」:他と異なり、そのものだけに特有であること
「特殊」:普通と異なること。特別であること。

 さらに、1つのパラグラフで2つのことが述べられているのも分かりにくくしている。
第2パラグラフ
「日本ほど独自の文化が保持されている国は多くない」
「日本だけが特殊とは言えないはずである」
第3パラグラフ
「文化というものは、ほとんどが混合によってできている」
「自分たちは特殊だと決めつけていたのでは、国際社会で孤立するばかりである」

 特に第3パラグラフは、話がずれたようにも読める。この文章は、最初、「他に類例を見ない特殊で独特の文化である」かどうかという事実認定だった。しかし、後半は、「他に類例を見ない特殊で独特の文化である」と考えることが良いか悪いかに変わっている。一つのパラグラフで変わってしまったので、話がそれた印象を与える。

 結局、筆者のロジックは以下のような構成なのか?(私の読み取り)
「日本文化は「独特」といえるだろう」
「しかし、日本文化が「独特」だとしても、「他に類例を見ない特殊で独特」とは言えまい」
「仮に日本文化が、「他に類例を見ない特殊で独特」であったとしても、そのような考え方を持つべきではない。」



「新『型』書き小論文」 (樋口裕一) の模範解答例より引用-------------------------------------

「日本文化は世界の中でも他に類例を見ない特殊で独特の文化である」という考え方に、あなたは賛成ですか、反対ですか。①賛成か、反対かを記した上で、②あなたがそう考える理由を、具体的な事例をあげながら八00字程度の文章にまとめて述べなさい。

 私は「日本文化は世界の中でも他に類例を見ない特殊で独特の文化である」という考え方に反対である。

 確かに、日本ほど独自の文化が保持されている国は多くない。歌舞伎や相撲、神社、そして、着物や日本家屋や日本庭園などは独自の文化だと言っていいだろう。とりわけ、私が日本人の独自性を感じるのは、俳句や和歌や寺院などに見られる日本人特有のわびさびの美学である。このような日本人の感性が、茶道や武士道などを生み出したのである。だが、そのような独自の文化は日本だけでなく、多くの国にあるのではなかろうか。どの国もそれぞれ独自の文化を持っている。日本だけが特殊とは言えないはずである。

 文化というものは、ほとんどが混合によってできている。日本は、縄文、弥生の時代から、米作を、そしてその後は漢字や仏教までも、外国から取り入れてきた。また、日本はシルクロードの東の終着点であり、ペルシャの文物も多く日本に入ってきているという。日本独自と思われるみこしなどの祭りの道具立ても、ほとんどがペルシャや中国に起源を持つものだと聞いたことがある。それなのに、自分たちは特殊だと決めつけていたのでは、国際社会で孤立するばかりである。しかも、不必要に優越感や劣等感を持つことにつながる。どの国にも、特殊な面と、他の国と共通する面がある。それは特殊なことではない。それをふまえた上で、外国との共通点を求めて話し合い、時には自分たちの文化を守るために対等の立場で議論するべきなのだ。

 以上述べたとおり、私は、「日本文化は世界の中でも他に類例を見ない特殊で独特の文化である」という考え方に反対である。この考え方は、孤立を深め、無意味な優越感を持たせる危険な考え方である。
小論文の書き方
 小論文が論理的な文章を書くトレーニングに適していることを述べた。先に紹介した小論文を引き合いに説明してみよう。

 小論文を書くには、最初に、論理構成単位を縦と横につないでロジックを組む。先に紹介した小論文なら、以下のような構成をまず考える。下記の3から4と5は横に展開されているが、それ以外はすべて縦につながっている。
1.財政破綻の危機
2.最大の金食い虫は社会保障費
3.歳入と歳出の両方で改革
4.歳入は、消費税を増税
5.増税のインパクトは小さいはず
6.歳出は、給付を制限
7.高齢者に泣いてもらうしかない

 このように、まず、論理構成単位を縦と横につないでロジックを組むことから考える。いきなり文章を書き出してはいけない。考えるに当たっては、アウトラインプロセッサーというソフトウェアを使うのもいいだろう。専用ソフトでなくても、MS-Wordでも似た機能はある。

 次に、この論理構成単位を。パラグラフのトピックセンテンスに落とし込む。先に紹介した小論文では、以下のようなトピックセンテンスにした。
1.現在、日本の財政は破綻の危機に直面している。
2.財政を圧迫しているのは社会保障費だ。
3.膨れあがる社会保障費を捻出するには、歳入と歳出の両方で改革が必要だ。
4.社会保障費向けの歳入を増やすには、消費税を増税するしかない。
5.消費税を増税すると、消費が冷え込むという恐れもあるが、影響は比較的小さく済むだろう。
6.一方、社会保障費向けの歳出を減らすには、給付を制限するしかない。
7.社会保障費の給付を制限すると、高齢者に負担を強いることになるが、致し方ないだろう。

 トピックセンテンスに落とし込む時の注意は、短く書くことだ。トピックセンテンスは、ロジックを伝えるための文だ。そのトピックを説明する文ではない。短く書くと、記憶に残るので、ロジックが伝わりやすい。細かい説明は、パラグラフの2文目以降(サポートセンテンス)で述べれば良い。

 もう一つ、トピックセンテンスに落とし込む時の注意は、縦と横を文章表現することだ。縦につながっているパラグラフなら、トピックセンテンスに「A-B、B-C、C-D」という流れができる。一方、横なら、「AとB、A、B」という流れができる。

 もし、縦と横の関係が文章表現として見えないなら、ロジックが不十分な可能性が高い。論理的な接続の弱い論理構成単位をつなぐと、「A-B、B-C、C-D」や「AとB、A、B」と表現できない。ロジックの見直しが必要だ。

 トピックセンテンスができたら、各パラグラフにサポートセンテンスを加える。トピックセンテンスで述べた論点(=論理構成単位)を、データや具体例、詳細説明で論証するのだ。原則すべてのパラグラフで、そのパラグラフのトピックを論証しなければならない。サポートセンテンスまで読めば、読み手が全員、そのトピックセンテンスに同意するように書く。

 サポートセンテンスは、それなりの量(3-7文ぐらい)の文章やグラフや表、図解が必要だ。サポートセンテンスを1-2文だけで終わってはいけない。論点を論証するには、どうしてもそれなりの量の情報量がいる。1-2文で終わるパラグラフは、論点を論証できていない。つまり、その文章は論理的ではない。

 ただし、下のパラグラフを導く導入のパラグラフにサポートセンテンスは不要だ。たとえば、先に紹介した小論文なら、「膨れあがる社会保障費を捻出するには、歳入と歳出の両方で改革が必要だ」と述べたパラグラフだ。詳細説明は、その下のパラグラフでするのだから、ここでは簡単に述べるだけで良い。

 こうやって考えながら文章を作成するので書く力が付く。また、先に説明した以下の点をチェックすれば、自分の文章が正しく書けたか確認できる。
「トピックセンテンスは短く」
「トピックセンテンスで縦と横を文章表現する」
「サポートセンテンスは、3-7文ぐらいの文章やグラフや表、図解が必要」
社会人の文章力向上に小論文が効果的
 私は、社会人の文章力向上には、ビジネスレポートを書くより、小論文を書くトレーニングの方が効果的だと思っている。小論文のほうが、応用力が付くからだ。

 ビジネスレポートの場合、論理構成も論証すべき論点もほぼ決まっている。たとえば、トラブル解析のレポートの論理展開は、問題-原因-対策-効果確認だ。各論点をグラフや図解で論証したり説明する。提案書なら、現状-問題-提案-メリット-デメリットへの反論などだ。

 論理構成も論証すべき論点もほぼ決まってしまうと、考えずに習慣のように書いてしまう。考えなくても、論理構成は決まっているから簡単にできてしまう。論点の論証も、「ここにはこういうデータを付けるものだ」とばかりに、グラフや表を付ける。それでビジネス文章としては合格だ。

 しかし、考えずに習慣のように書くと応用が利かない。ちょっと新しいテーマになると、もう論理構成はできない。どう書いて良いかが分からなくなる。考えられなくなると、何でもかんでも箇条書きする。論証すべき論点には、データも具体例も付けない。貧弱な文章ができあがる。

 一方、小論文を書くには、まず、しっかりとして論理構成が必要だ(下図)。どんな論理思考単位を、どうつないでロジックを組むかは、そのテーマごとに考えるしかない。論理展開をテーマごとに考えることが、書き慣れないビジネスレポートを書くときにも有効だ。

 また、小論文を書くには、各論理思考単位を論証しなければならない。論証にはデータや具体例が必要だ。どんなデータや具体例があれば、自分の主張が成立するのかを考えることが、書き慣れないビジネスレポートを書くときにも有効だ。

 しかし、ライティングのトレーニングでは、小論文ではなくビジネスレポートを使う。ビジネスレポートの方が、受講者や研修担当に受けが良いからだ。ちょっと残念。
小論文の論理構成
先日の小論文のロジックと文章表現を図解すると、以下のようになる。ロジックは、必ず縦と横で構成される。縦と横は、文章表現にも現れる。
小論文の論理構成

小論文の模範解答
 研修向けに小論文の課題と模範解答を作った。

 その小論文問題は、複数のグラフから、自己の考えを論理的に説明してもらうという内容だ。グラフは全部で7種。グラフの読み取りは、回答者の自由。内容も自由だ。問うのは書き方。論理的で分かりやすいか。

 この問題の模範解答を作成する上で注意したのは以下の点(各論のパラグラフだけ、総論のパラグラフは別)。
1.1パラグラフ/1トピックで書く
2.そのトピックは、パラグラフの先頭文(トピックセンテンス)に書く
3.トピックセンテンスは短く書く
4.トピックセンテンスだけで文章として成立する(ロジックが読み取れる)ように書く
5.ロジックが縦なら、トピックセンテンスは<AーB>、<BーC>のようにつながり、横なら、トピックセンテンスは<A,B>、<A>、<B>のように並ぶように書く

 私の作った解答例が以下。

-------------------------------------------
 国の借金が増え続け、財政破綻が心配されている。財政破綻を避けるには、社会保障費への対策が必要だ。財政を再建するには、消費税を増税して社会保障費に回すべきだ。また、社会保障の給付も制限すべきである。

 現在、日本の財政は破綻の危機に直面している。国の借金である国債残高は、平成29年度末で、約865兆円にも昇る(図4参照)。この額は、一般会計税収の15年分にも相当する。つまり、年間所得が580万円なのに、8,650万円の借金をしている計算だ。しかも、国債残高は年間30兆円ずつ増えている。つまり、8,650万円の借金をしているのに、借金を返済するどころか、さらに年間で300万円ずつ借金を増やしているのだ。このままでは早晩破綻する。

 財政を圧迫しているのは社会保障費だ。社会保障費は、国家予算の33.3%を占め、32兆円を超えている(図2参照)。この額は、一般会計税収(図3参照)の56%に匹敵する。しかも、この社会保障費は、毎年1兆円以上増え続けている(図1参照)。税金の無駄使いとして、よくやり玉に挙げられる公共投資は6兆円程度に過ぎない。つまり、公共投資の無駄遣いを無くしても、社会保障費の負担に対しては焼け石に水だ。

 膨れあがる社会保障費を捻出するには、歳入と歳出の両方で改革が必要だ。つまり、歳入を増やすために増税し、歳出を減らすために社会保障費の給付を削減するのだ。

 社会保障費向けの歳入を増やすには、消費税を増税するしかない。歳入である税収は主に、所得税、法人税、消費税で構成される。このうち、所得税と法人税は、先進各国と較べても妥当なレベルだ。この所得税と法人税を大幅に挙げるわけにはいかない。一方、消費税は、先進各国の20%前後と較べてるとかなり低い。仮に、消費税率を8%から10%に上げたとすれば、25%増だから、単純計算で4兆円の税収増加が見込める(図3参照)。社会保障費がピークを迎えるであろう10-20年後までに、段階的に消費税を増税すれば、社会保障費増加分のほとんどは、消費税で捻出できるだろう。

 消費税を増税すると、消費が冷え込むという恐れもあるが、影響は比較的小さく済むだろう。なぜなら、過去の消費税導入と2回の増税(3%→5%と5%→8%)で、景気が下落して所得税が減ったのは、3%から5%に増税した時だけだからだ(図6参照)。しかも、この時はバブル崩壊の後で、所得税が自然減少方向にあったのだ。現在の経済状況は、5%から8%に増税した時により近い。あるいは前回の増税時より、良い経済状況だ。消費税を増税しても影響は小さいだろう。

 一方、社会保障費向けの歳出を減らすには、給付を制限するしかない。社会保障費とは主に、年金、医療、介護にかかる費用だ。いずれも高齢化社会では避けようがない。年金向けの歳出を減らすために、国民年金の納付率を上げたり、医療向けの歳出を減らすために、喫煙率を下げる取り組みをしたりはしている。しかし、全体の額から見れば焼け石に水だ。目に見える歳出削減には給付を減らすしかないだろう。一部の高齢者に対しては、最低限の文化的な生活ができる程度まで、給付を下げざるを得なくなるかも知れない。

 社会保障費の給付を制限すると、高齢者に負担を強いることになるが、致し方ないだろう。確かに、現在高齢である方々が、今の豊かな日本を作ったのは疑いようがない。しかし、一方で、借金をしまくって、身の丈以上の生活をしてきたのも事実だ。日本を豊かにしたのだから、後は野となれ山となれでは、現役世代がたまったものではない。高齢者に負担を強いることで、高齢者の生活水準が下がるのは、仕方がないと言えるだろう。

 豊かな日本を、次の世代に引き継ぐためにも、財政破綻はなんとしても避けなければならない。早急に消費税を増税し、社会保障の給付を制限すべきである。

相関関係=因果関係 ではない
ある講座で、女性の就業率が高いと、一人あたりのGDPが高くなるというデータが示された。講師は、「女性が活躍することが社会の生産性を上げる」ことを匂わせていた。しかし、相関関係すなわち因果関係ではない。

 このケースで、私が疑ったのは因果の逆転だ。一人あたりのGDPが高いから、女性が働ける職場も生まれるのではないか。あるいは、子供を預けて働ける環境も構築できるのではないだろうか。分かりやすい例を挙げよう。例えば貧困国。仕事は少なく、あってもきつい。働くのは男性ばかりで、女性が入る余地は少ない。貧しい国では、子供を預けて働ける環境もない。

 データをより細かく見ると、一人あたりのGDPが高い国は、北欧に多い。北欧の国々の生産性が高いのは、比較的恵まれた国土(地下資源や平野が多い)を少数の国民で維持しているからだ。ネットで検索しても、女性が活躍しているからという論調は見ない。

 そもそも、女性の就業率が高いことが、一人あたりのGDPを高めるなら、男性より女性のほうが生産性が高いことになる。これが、総GDPが高いなら、労働数が多いほど高くなるので、女性の就業率が高いことが有利に働く。しかし、このデータは一人あたりのGDPだ。男性より女性のほうが、明らかに生産性が高いとなると、多くの人の実感とは、ずれるのではないだろうか。

 断わっておくが、私は、「女性は生産性が低い」とか、「女性の就業率を上げることは意味がない」とかを言っているのではない。このデータから、「女性が活躍することが社会の生産性を上げる」とは言えないと言っているのだ。「女性が活躍することが社会の生産性を上げる」と言いたいなら、別のデータを持ってこいと言っているのだ。学者が、いい加減なデータで、証明できないことを匂わせるのはいかがなものかと言っているのだ。

女性の就業率とGDP

議論につながる質問
「グレーター東大塾」に参加している。この塾では、「双方向で活発な議論を期待する」ために、70分の講演後、60分という長いQ&A時間を設けてある。しかし、これがどうもうまく機能しない。

 日本人は、議論する文化がないので、議論につながる質問ができないのだ。議論につながる質問とは、受講者の質問に対して、講演者が回答したら、その回答に対して、さらに受講者が掘り下げた質問をし、また講演者が回答し、となっていく質問だ。例えば以下のようなイメージだ。
 受講者:「Uターン就職希望率が富山県で高いのはなぜですか?」
 講演者:「県がUターン就職支援をしていることと、比較的産産業が発達しているからでしょう」
 受講者:「では、なぜ、富山県と産業規模が同じ程度の他の県は、同じような支援をしないのですか?」
 講演者:「似たような支援を他の県もやっているのですが、富山県ほど効果が無いようです」
 受講者:「ということは、Uターン就職希望率が富山県で高い最大の理由は、就職支援ではないですね。他の要素は考えられませんか?」

 受講者のする質問のすべてが、議論につながらない。いや、質問者は、議論につなげる気が無い。つなげる気が無いので、平気で2つも3つも質問する。議論につなげるなら、質問は1つだ。複数の論点を同時並行で議論するのは、よほど議論慣れしていないと無理だ。議論につなげる気が無いので、講演者が回答したら、それでその話は終わりになる。深まりはしない。

 この講演が、一般的なプレゼンなら、一往復で終わるQ&Aでよい。だから、聞き逃したことや直感的に疑問に感じたことを聴けばよい。一往復だから、すぐに終わる。5分程度しかQ&A時間が無いときには適切なアプローチだ。

 議論につながる質問をするには、質問する側もかなり頭を使わなければならない。たとえば、以下のようなことを事前に考えてから質問することになる。
 ・こう質問したら、こういうことを説明するはずだから、さらにこう質問しよう
 ・もし、講演者が回答を持っていなかったら、自分はこう考えているといって、その考えへの意見を聞こう
 ・自分は、講演者とは異なり、こういう根拠でこう考えている。講演者は、自分の根拠に対して、どういう根拠でどう判断するだろうか。(議論の世界でいう論証型反論の準備)

 60分という長いQ&A時間を設けている意図を考えてほしい。
鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さでノートを取る
『一見、よくまとまっていると見える要約、まとめ、スローガンは要らない。そんなものはノートに書かなくてもいい。帰宅してノートを整理する時に書きこめば十分だ。具体的で面白い事実、目を低く(視線を低く) するとはじめて見えるような細かい事実、飾らないくだけた言葉……そういう類いの非インテリ的な事柄をノートするのだ。
 そういう目の低い「低級」なことを書くのだから、相当な量を書くことになる。相当な速度でノートをとる。鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さだ。ボールペンの場合は、インクが油性で引火するおそれがある。教室には消火器を置く。…… といった速さだ。』(「大学の授業」宇佐美寛)

 「鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さ」でノートを取った。今週から参加している「グレーター東大塾」だ。そういうノートを取ったのは久しぶりなので、ペンが上手く動かなかった。まあ、そのうち慣れるだろう。ちなみに、「インクが油性で引火するおそれがある」のは困るので、万年筆を使った。(笑)

『自分でノートをとるのは、緊張するためにとるのだ。ノートをとるためには、どうしても話の内容を頭の中で整理しなければならない。内容の構造を考え、どこが大事かを判断しないわけにはいかない。この過程が頭のためになる。考えながら聞く…… これで受身のテープレコーダーのような頭にならずにすむ。』(「大学の授業」宇佐美寛)

 「鉛筆の先から摩擦熱で煙が出る速さ」でノートを取るには、無茶苦茶集中する。頭の中はフル回転だ。疑問もたくさん出てくるので、それもノートに書く。1時間も続けると、頭が痛くなる。勉強して頭が痛くなるのも久しぶりだ。
マツダCX-5の電子取扱説明書(6)
 マツダCX-5の電子取扱説明書が、マニュアルコンテストで優秀賞を受賞したらしい。マニュアル作成の専門家(自動車業界の方ではない)から、「どう思いますか?」と聞かれたので、チェックしてみた。その第六弾。引き続き、自動巡航機能の説明の部分から。

 自動巡航機能(MRCC)の起動と設定は、下図のように説明されている。

 速度の設定までの説明は分かる。最初の「ONする」の説明で、MODEスイッチでONとなる。これで、速度や車間の設定ができるようになる。次の「速度を設定する」の説明で、指定速度で定速走行になることも分かる。

 しかし、ここで示されている表に、なぜ「追従走行時」のディスプレイ表示が示されているのか?まだ、「追従走行時」の説明はされていない。だから、追従走行の設定の仕方も分からない。それなのに、「追従走行時」のディスプレイ表示を示されても困る。

 さらに、どうすれば追従走行になるのか、探しても載っていない。取扱説明書は、次に「追従走行時の車間距離を設定する」となっている。つまり、「追従走行時」の車間の設定だ。そもそもの「追従走行時」への移行が載っていない。

 なんと、「知識を開く」をクリックすると、「追従走行時」に移行する説明(下記引用)が表示される。クリックしないと隠れたままだ。
---引用---
定速走行中に前方車を検知すると、ディスプレイに前方車表示が表示され、追従走行を行います。また、前方車を検知しなくなったときは、ディスプレイの前方車表示が消灯し、定速走行に切り替わります。
---引用---

 なぜ、こんな大事な情報が目立つところに書かれていない。
cx5_MRCC_on.jpg

マツダCX-5の電子取扱説明書(5)
 マツダCX-5の電子取扱説明書が、マニュアルコンテストで優秀賞を受賞したらしい。マニュアル作成の専門家(自動車業界の方ではない)から、「どう思いますか?」と聞かれたので、チェックしてみた。その第五弾。引き続き、自動巡航機能の説明の部分から。

 今日は注意表示。自動巡航機能の説明は、下図のような注意表示が、説明部分の最初のほうに記載されている。

 取扱説明する場合、注意表示には3種類ある。その差は明確に決められている。
危険:指示を守らないと死亡するか重傷負う可能性が極めて高い
警告:指示を守らないと死亡するか重傷負う可能性がある
注意:指示を守らないと軽傷を負うか、製品が壊れることがある

 この取扱説明書では、警告と注意の差を意識していないのではないだろうか?次の3つ(注意表示部分から引用)は、なぜ1つは警告で、残り2つは注意なのか?
警告:マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール (全車速追従機能付) (MRCC (全車速追従機能付)) を使用しないときは、安全のためマツダ・レーダー・クルーズ・コントロール (全車速追従機能付) (MRCC (全車速追従機能付)) をOFFにする
注意:けん引されるとき、または、他の車をけん引するときは誤って作動しないようにシステムをOFFにしてください。
注意:シャシーローラーを使用するときは、シャシーローラー上を走行中に誤って作動させないよう、システムをOFFにしてください。

 そもそも、上記の警告は、その下2つの注意を含むのではないだろうか?注意表示は、たくさん書けばよいのではない。たくさん書けば、大事な注意が、どうでもよい注意に埋もれる。また、文章量が増えると、読み手が読まなくなる。このケースは、「MRCC を使わないときは、OFFに設定してください」の1つで十分だろう。

 言葉の使い方に一貫性がない。警告では「マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール (全車速追従機能付) (MRCC (全車速追従機能付)) 」という長いバカげた表記を使っているが、注意では同じ機能を「システム」と呼んでいる。すべて、「MRCC」あるいは「MRCCシステム」でよいだろう。長い文は、ユーザーが読まなくなるので論外。言葉を不用意に変えるのも、混乱を招く可能性があるので避けるべきだ。

 さらに、自動巡航機能の説明の部分を読み進むと、最初に記載された注意とは、別の注意が記載されている。しかも、警告だ。なぜ、最初に書かない。ユーザーがマニュアルを、端から端まで読むと思っているのだろうか?大事なことは最初に書くのだ。
---引用---
警告
安全運転に心がける
定速走行機能使用中は追従走行を行わないため、警報やブレーキ制御が作動しません。周囲の状況に応じてブレーキペダルを踏んで減速するなど、前方車との車間距離を十分に確保し、安全運転を心がけてください。
---引用---

cx5_warning.jpg

マツダCX-5の電子取扱説明書(4)
 マツダCX-5の電子取扱説明書が、マニュアルコンテストで優秀賞を受賞したらしい。マニュアル作成の専門家(自動車業界の方ではない)から、「どう思いますか?」と聞かれたので、チェックしてみた。その第四弾。引き続き、自動巡航機能の説明の部分から。

 この自動巡航機能をONにする説明は、下図のように説明されている。

 操作の説明では、すべき操作と操作後の状況は分けるべきだ。一緒に述べれば文が長くなって分かりにくい。

---オリジナル引用---
MODEスイッチを1回押すと、マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール (全車速追従機能付) (MRCC (全車速追従機能付)) がONになり、マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール (全車速追従機能付) (MRCC (全車速追従機能付)) メイン表示 (白) が点灯し、速度の設定や追従走行時の車間距離の設定ができる状態になります。
また同時に、マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール (全車速追従機能付) (MRCC (全車速追従機能付)) ディスプレイ表示がマルチインフォメーションディスプレイ、およびアクティブ・ドライビング・ディスプレイに表示されます。
---オリジナル引用---

---改善案---
MRCCをONにするには、MODEスイッチを1回押します。
 ・MRCCメイン表示(〇〇参照)が、マルチインフォメーションディスプレイ、およびアクティブ・ドライビング・ディスプレイに白く点灯します。
 ・速度の設定や追従走行時の車間距離の設定ができる状態になります。設定方法は、下記の〇〇を参照してください。
---改善案---

 添えられている図もダメだ。MODEスイッチは図で分かので、これはOK。MRCCメイン表示が分からない。スイッチを示した図の下にある図がMRCCメイン表示なのだが、説明がないので分からない。まして、「メイン表示 (白) が点灯」とあるのに、図は黒で表示されている。マルチインフォメーションディスプレイとアクティブ・ドライビング・ディスプレイが何かは、読み手が知っているとしても、そのディスプレイにMRCCメイン表示がどう表示されるのかが分からない。なぜ、マルチインフォメーションディスプレイとアクティブ・ドライビング・ディスプレイにMRCCメイン表示が表示される図を載せないのだろう。(実は、その図は、この説明のずっと前に載っている。アホか)

CX5_manual4

マツダCX-5の電子取扱説明書(3)
 マツダCX-5の電子取扱説明書が、マニュアルコンテストで優秀賞を受賞したらしい。マニュアル作成の専門家(自動車業界の方ではない)から、「どう思いますか?」と聞かれたので、チェックしてみた。その第三弾。引き続き、自動巡航機能の説明の部分から。

 この自動巡航機能の説明は、以下のような見出しで構成されている。
・マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール (全車速追従機能付) (MRCC (全車速追従機能付)) ディスプレイ表示
・接近警報
・設定するとき
  ONする
  速度を設定する
  追従走行時の車間距離を設定する
  設定速度を変更する
  一時的に解除されるとき
  OFFする
  再発進するとき
  発進報知
・マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール (全車速追従機能付) (MRCC (全車速追従機能付)) 警報
・定速走行機能
  定速走行機能に切り替えるとき
  速度を設定するとき
  設定速度を上げるとき
  設定速度を下げるとき
  解除するとき

 この見出しを見ても無茶苦茶。ロジックが縦にも横にもなっていない。ただ、思いついたことを思いついた順に書いたような印象。あまりに並列感に乏しい。

 この見出しから考えられる疑問を、思いついた順に書きましょう。
・「接近警報」と「マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール (全車速追従機能付) (MRCC (全車速追従機能付)) 警報」は違うのか?
・前半にある「速度を設定する」と後半の「速度を設定するとき」は違うのか?
・前半にある「追従走行時の車間距離を設定する」と後半の「定速走行機能に切り替えるとき」は違うのか?
・「設定速度を変更する」と「設定速度を上げるとき」、「設定速度を下げるとき」は違うのか?
・「定速走行機能」という項目があるのに、「追従走行」という項目はなぜないのか?

 例えば、以下のような見出しなら分かります。
・MRCCを設定する
  定速走行
  追従走行
・走行中に設定を変更する
  速度の変更
  車間距離の変更
・MRCC設定中の警告
・MRCCの自動解除
・MRCCを解除する
・MRCCを再稼働する
マツダCX-5の電子取扱説明書(2)
マツダCX-5の電子取扱説明書が、マニュアルコンテストで優秀賞を受賞したらしい。マニュアル作成の専門家(自動車業界の方ではない)から、「どう思いますか?」と聞かれたので、チェックしてみた。その第二弾。引き続き、自動巡航機能の説明の部分から。

 自動巡航機能の説明は、総論に相当する記述から始まる。

 まず、定義を述べた最初の文が長すぎる。見ただけで、読む気が無くなる。説明も不十分。
---引用---
マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール (全車速追従機能付) (MRCC (全車速追従機能付)) は、レーダーセンサー (フロント) が前方車を検知することで、運転者がアクセルペダルやブレーキペダルを踏まなくても、設定した速度での定速走行や、前方車との車間距離を車速に応じて一定に保つ追従走行ができるシステムです。
---引用---

 最初の文は、可能な限り短く述べる。最初の文とは、パラグラフのトピックセンテンスや結論の文だ。このような大事な文は、大事な情報だけで短く述べる。短い文だから、大事な内容がすっと頭に入る。長い文は、人間の短期メモリーの容量を超えるので理解できない。人間の短期メモリーの容量は、7±2といわれている。7±2単語までで1文を終えるのだ。

 だから、この部分は、例えば以下のように述べる。
---修正案---
MRCCは、 設定速度での定速走行や、車間距離を一定に保つ追従走行ができるシステムです。MRCCが、レーダーセンサーで前方車を検知するので、運転者はアクセルペダルやブレーキペダルを踏む必要はありません。前方に車がないときは、速度が設定値に保たれます。前方に車があるときは、車間距離が車速に応じて一定に保たれます。
---修正案---

 上記の定義の文の下にある説明のムービーは、本文で参照すべき。ムービー以外のグラフや表、図解も、必ず本文で参照する。
---修正案---
 MRCCの正確なイメージを理解したい方は、下のムービーをご覧ください(再生するには、ムービー中央の▷をクリックします)。
---修正案---

 定義文とムービーの下に載っている説明(下の引用)も、次の点で不十分だ。
 1.1文が長い
 2.パラグラフのレイアウトを守っていない(1文ごとに改行してある)
 3.各論を十分に反映していない(総論で述べていないことが、各論で長々述べられている)
 
---引用---
また、追従走行時に前方車が急ブレーキをかけたときなど、前方車に接近したときは、警報音と同時にディスプレイに警告を表示し、車間距離を十分確保するようお知らせします。
前方車に追従して停車したときは、自動で停車状態を保持 (停車保持制御) し、運転者がRESスイッチを押すなどの発進操作を行うと、追従走行を再開します。
マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール (全車速追従機能付) (MRCC (全車速追従機能付)) を使用するときは、使用前に次の記載もあわせてお読みください。
---引用---

 各論を十分に反映していないのは、各論の構成が無茶苦茶だからだ。それはまた次回。


プロフィール

ロジカルスキル研究所代表

Author:ロジカルスキル研究所代表
ロジカルスキルを企業研修で指導しています。主な講座は、ロジカルライティング、ロジカルネゴシエーション、ディベート、ロジカルプレゼンテーション、英文テクニカルライティングです。

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